- rouillewrite
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ぼんやりとしか見えないはずの右目に、いやでも焼き付いて離れない涼の姿。 湧き上がるのは、いつだって後悔と自分への憤り。
2023-06-25 23:05:47たとえ、自分の恐ろしいものが目の前にあっても、戦おう。 たとえ、自分がどうなってしまっても、些細なことでも、誰かを助けよう。守ろう。 自分の声など、臆病な自分など、一切無視して。
2023-06-25 23:06:38近衛市夏は廊下を走っていた。 クラスメイトに勉強を教えて欲しいとせがまれたが、「ごめん!俺、今日は行かなきゃいけないところがあるからまた明日にして?」と断りを入れて彼は先を急ぐ。
2023-06-25 23:09:56……その一方で、誰もいない3-Bの教室で累は随分とソワソワしていた。 というのも、朝から市夏直々にお呼び出しがあったのだ。指定場所が自分の教室だったので、昨晩のことを思い出しては、あらぬ出来事に期待を寄せている。
2023-06-25 23:11:17教室のあちらこちらを右往左往していると、市夏がワタワタと教室に入ってきた。 彼の後ろに何やら見慣れた着物と赤い髪が見えたが、とりあえず気にせず歩いてくる彼を見つめる。 自分の前まで来たところで、累はぎこちない笑みを浮かべた。
2023-06-25 23:12:39「え、と……昨日はまじその、お疲れ様……?」 「あ、ありがとうございます。……その、ルイ先輩が好きって言ってくれたのとは離れた姿、みせちゃいました…よね?」
2023-06-25 23:13:27市夏は不安げに、そう呟く。 累が好きだと言ってくれた自分はもっと強くて、芯の通った、あんなブレブレで情けなくて弱い自分じゃないはずなのに。 累の顔を見れなくて視線を下にずらしていると、上から優しい声が降ってきた。
2023-06-25 23:14:09「いや、全然。お前はかっこよかったよ。それにようやく"助けて"って言えたじゃん。 ……今までよく頑張ったな」
2023-06-25 23:14:45温かくて、嬉しくて。 勝手に溢れてきた涙が次から次へと頬をつたっていく。 おんなじくらい、気持ちも溢れた。
2023-06-25 23:16:40「好きです……ルイ先輩」 「────、」 pic.twitter.com/DOqgvdCXW4
2023-06-25 23:17:18その言葉を市夏が口にした途端、累の瞳が大きく開かれる。 お揃いの色の違う双眸が、どこか潤んだように揺れたのは、きっと気のせいではない。
2023-06-25 23:18:40告白された時と同じ言葉で、同じように市夏は深く頭を下げた。 そしてすぐに顔を上げ、まっすぐ、涙で滲む視界でもはっきりと累を見つめる。
2023-06-25 23:20:37「これからも俺は困っている人を助けられるような人になれるように生きていきたい。 ……でも、1番はちゃんと自分だって分かったから。自分の声を聞かないふりは、もうしません」
2023-06-25 23:21:08「ルイ先輩がいいんです。 ……ルイ先輩、俺をルイ先輩のものにしてくれますか…?」 「……っ、」
2023-06-25 23:21:46───その瞬間、累は市夏を力強く抱きしめた。 その肩に顔を埋めて、温かい体温が伝わってくるのがわかる。 いつもより少し熱いのは、きっと。
2023-06-25 23:22:16「…する、させてくれ。 ちゃんと大事にするから、ちゃんと言葉にするし、またいつか無茶しそうになっても俺が支えるし、ずっと、ずっと傍にいる、居させて、くれ、」
2023-06-25 23:22:57嬉しくて嬉しくて堪らないとでも言うように、累は力を込めて抱きしめる。 ずっと言いたかったことを紡ぐ声は、情けないくらい震えていた。
2023-06-25 23:23:26