- rouillewrite
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一歩踏み出すと、雨の感覚が全身を包んだ。 夢の中では散々傘をさしているのに、未だに現実の世界では……そう思うけれど。それで歩み続けられるならいい。 ゴロゴロとなり続ける空に無意識のうちに縮こまる肩を意識して、市夏は目の前赤色に視線を戻した。
2023-06-18 21:25:06雨にいい思い出がないのは、彼の恋人だって同じことをあの夢で見た。 なら優先すべきは俺じゃなくて…と口に出すことはしないが。 その市夏の声に、太陽は首を横に振る。
2023-06-18 21:27:41「ううん。焔楽今日は春馬と勉強するからって先帰ったから、今日はイッチャンといる。 ……なぁ、なんであれ断らなかったんだ?」
2023-06-18 21:28:25「あれって、さっきのこと? …なんでっていつものことなくらい太陽なら知ってるでしょ?誰かが困ってて、それを俺がなんとかできるなら助けないと。でしょ?」
2023-06-18 21:29:27足を止めて振り返った太陽につられて、足が止まる。 傘と雷と自分の前に立って振り返っているその姿が、右目に焼き付いた姿と被って胸がざわついた。
2023-06-18 21:32:01「……そ…う、だった?ごめん、気づいてなかった。でも顔色悪いくらいで断って困らせちゃったんなら…申し訳なかったな」 「違うぞ。たいちょー悪いなら、断っていいんだ。早く帰りたいとかしんどい時は、休んでいいってイッチャンいつもオレに言うだろ?」
2023-06-18 21:32:45「確かに、ちょっとは誰かを優先したりするかもしれないけど、自分がしんどくなってまで優先することなんてない」 「でも、そうしなきゃ。 そうじゃなきゃ……」
2023-06-18 21:34:43太陽の言葉は、自分の耳元を通り過ぎていくようで。 先程よりも大きくなってきた音。 忘れるなと言っているようなあの、音。
2023-06-18 21:35:22「俺は、そうしなきゃ駄目なんだよ。そんなこと、俺には許されない」 「…許されないんじゃないだろ。 市夏が、自分自身を許してないだけだ。 オレにはオレを大事にしろって言うのに、自分はしないのか?」
2023-06-18 21:36:33「……! そんなの、分かってるよ。 俺は、あの日の俺を絶対に許さない。 だから俺のこれは、今の俺を大事にしてのことなんだよ。 …分かってくれないかな…?」
2023-06-18 21:37:25市夏がそう零すと、太陽は傘を苛立ったように傘を放り投げる。 雨が強くなって、その瞳が濡れて強い怒りを露わにしていた。
2023-06-18 21:37:59「……っ、わかんないよ!全然わかんない!! お前はずっとここにいない、ずっと後ろ向きで進んでる!しんどい時に周りばっか優先して、自分大事にしないとこのどこが、今の自分を大事にしてるんだ!? 誰かを優先してるように見えて、自分のことばっかりなの気づいてないのか!?」
2023-06-18 21:39:39雷鳴に。 雨音に。 自分の心臓の音。 その全部が、耳障りで。 イラつきを抑えられないまま、目の前の親友を睨んだ。
2023-06-18 21:42:02「───ッいくらタイヨウだからって俺の今までを否定するようなこと言わないでよ!!タイヨウに会う前からずっとずっと、自分で決めてやってきたんだ!!今までそれで問題なかったんだからそれでいいでしょ!?」 pic.twitter.com/oPZaIs678k
2023-06-18 21:44:00「問題なかった!?本当に!? 自分がしんどいって分からなくなるくらいになっちゃったのが、本当に問題ないのか!? オレがそうなってたらお前は口出すんだろ!!なんでそれが自分にも出来ないんだよ!!」
2023-06-18 21:45:05応援団でも出さないような。 きっと空彦に怒られるような。 大きな声。喉を傷める叫びだった。
2023-06-18 21:46:49