環くんの心臓の音が聞こえるし、いつもより低く感じる体温が心地いい。気付いたら眠りについていて、おでこにはひんやりとした感覚があった。環くんが冷えピタを張ってくれたんだろう。 「起きた?食欲ある?」 見計らったかのように部屋の扉が開いて、不安そうな顔で覗き込んでくる。
2023-06-26 23:53:14私よりもしんどそうな表情をする環くんに小さく「ある」と答えれば、「お粥持ってくる!」と慌ててキッチンへと消える。すぐ戻ってくるのはわかってるのに、扉から目を離せずにいた。 「お待たせ」 「…うん」 「一人にしてごめん。食べれる?」 私の気持ちを感じ取ったのか、申し訳なさそうに謝る
2023-06-26 23:53:15環くんは全然悪くないと口にしたいのに、不安定な精神状態で訂正する気力はなかった。左右に顔を動かせば体を起こしてくれて、フーフーとお粥を冷まして口元まで運んでくれる。子供のようにおとなしく受け入れて咀嚼する。 「ちゃんと食べてえらいね」 「うん」 「鍋、片してきていい?」 「…うん」
2023-06-26 23:53:15聞かなくてもいいのに離れてもいいか許可を求めてくる環くんが愛しい。モジモジと好意を口にしてくれる時もそうだけど、愛されてるなと実感する。小走りで戻ってきた環くんから受け取った薬を飲み、また横になる。 「手握る?」 「…さっきのがいい」 「さっきの?」と首を傾げる環くん。
2023-06-26 23:53:16少し考えていたけど、閃いたのかモゾモゾと布団の中に入ってくる。 「寝よっか」 「…うん」 風邪うつっちゃうかも…ってわかっているのに口にした要望。それ以降会話はないけど、規則正しく背中を叩いてくれていた。 “安心して眠ってね。側にいるよ” そう言われている気がした。
2023-06-26 23:53:17そんな優しい環くんが… 「…大好き」 心の中でつぶやいたはずの言葉が音となって消えていく。既に眠りの世界へと片足を踏み入れていた私は、そのことに気づかず落ちていく。 「…俺もだよ」 頬に触れた感触は、きっと夢じゃない。
2023-06-26 23:53:17風邪を引いたら精神的にも弱るって知っているから、慌てながらもとことん甘やかしてくれる☀️ 熱下がった頃に謝ると「お家デートだね。ずっと一緒にいれたの嬉しい」とか耳赤くして照れながら言うんでしょ?風邪ひいてなかったら犯してんぞ…って思っちゃうね。
2023-06-26 23:53:18#hrakプラス ☀️ 勉強道具を手に、私は図書室へ向かっていた。普段はいいけどテスト勉強の時は自室だと寝転がっちゃうし、共スペや教室だと集中しきれなくて毎回図書室に篭っている。ページを捲る音、文字を書く音、消しゴムと紙が擦れる音。それが心地よくて私は集中できる。 (…あ、今日もいる)
2023-07-02 21:52:09中へ入っていつも座っている席へ目を向けると、同じテーブルに天喰先輩の姿が見えた。 「…こんにちは」 周りの迷惑にならない声量で挨拶をし、ペコリと頭を下げてから座る。「こんにちは」と返ってきたことに小さな喜びを感じながら教科書を開く。難しい問題に頭を悩ませながらもペンを走らせる。
2023-07-02 21:52:09「あの」 解けたー!と内心喜んでいると声をかけられた。声の主は同じテーブルで勉強していた天喰先輩で、面と向かって話をするのは初めてかもしれない。 「外、もう暗いよ?」 窓の外を見れば日が落ちかけていて、スマホを見れば七時前で校舎を出なければいけない時間。つい集中しすぎてしまった。
2023-07-02 21:52:10「本当だ!声かけてくださってありがとうございます」 慌てて準備をして鞄を肩にかけると、「寮まで送ってく」と歩き出してしまう。敷地内だし、すぐなので大丈夫です!と断ることもできるのに「ありがとうございます」と口にしてしまう。猫背だけど私よりも広い背中。ニヤけてしまわないように努めた
2023-07-02 21:52:10一歩後ろを歩いていると天喰先輩が振り返る。 「なんで後ろなの?」 最初に“歩くのが速いのかな?”と思ったのかペースを落としてくれたけど、後ろ姿を見ていたい私はそれに合わせて歩く。だから気になって声をかけてきたんだろうけど、ワケを話すのは恥ずかしくて口を紡ぐ。
2023-07-02 21:52:10「えっと…嫌だった?送られるの」 「ちっ、違います!」 「そうなの?」 「はい!寧ろ嬉しいというか!」 「え?」 「あっ」 自分の感情とは反対の言葉を聞いて思わず口を開いてしまったけど、天喰先輩の驚いた顔を見てやってしまった…と気づく。理由を知られるのと同じぐらい恥ずかしい。
2023-07-02 21:52:11図書室で勉強しているとき、一息つくときは天喰先輩の綺麗な横顔を覗き見ていた。私の密かな楽しみで、テスト勉強の糧だった。それさえもバレたんじゃないかと被害妄想しそうになる。 「そっか。それならよかった」 心底安心したような顔で微笑む。見たことのない表情に胸が鷲掴みにされた。
2023-07-02 21:52:11歩き出す天喰先輩を追いかけるようにして歩く。また後ろ姿を眺めようと思っていたのに、「後ろだと落ち着かないから、こっちね」と制服の裾を掴まれて隣に並ばされてしまった。 ねぇ、天喰先輩。耳がとっても赤いです。
2023-07-02 21:52:12「…期待しちゃいます」 「…してもいいんじゃない?」 そっぽを向いているけど赤い耳は隠せてなくて、“好きだ”とすぐにでも口にしたくなる。 「明日も送ってくれますか?」 「…俺でよければ」 でも、まだこの曖昧な関係を味わっていたい。そう思ってしまうんだ。
2023-07-02 21:52:12#hrakプラス ☀️(同棲設定) 「明日職場の飲み会あるから夜遅くなる」 夕食の準備をしていると申し訳なさそうに言ってきた。 「わかった。楽しんでね」 そう言えば後ろから抱きついてきて首筋に頬や鼻先を擦り付けてくる。くすぐったくて身じろぎするけど離してくれなくて、寧ろ強く抱き寄せられる
2023-07-11 21:33:55「怒ってる?」 「職場の飲み会でしょ?怒らないよ」 「女の人もいるのに?」 「信頼してるもん。楽しんできて」 本心から言っているのに、環は納得いかないのか「う〜…」と唸っている。真横にある頭を撫でながら、私の事大好きなの丸わかりだから心配する必要ないんだよなーと心の中で呟く。
2023-07-11 21:33:55〜〜♪〜〜♪ 夜ご飯を済ませ一人のんびりとテレビを観ていた時、スマホから電話の通知があった。名前を見ると環で、終わるにはちょっと早くないかな?と思いながら応答ボタンを押す。 「もしもし?どうしたの?早くない?」 「🌸ちゃーん。あのさ〜…えっと、なんだっけ?」
2023-07-11 21:33:56いつもとは違う間延びした喋り方。明らかに酔っ払っていて、さらに首を傾げる。お酒強いはずなのにたくさん飲まされたのだろうか? 「あーもう!サンイーター!スマホかせ!」 「何で?🌸ちゃんと何話す気?許さないよ?」 「酔っ払いめんどくせー!お前、ちょっと抑えてて」 「あ!俺のスマホ!」
2023-07-11 21:33:56笑い声も聞こえるけど、環と誰かが何やら揉めているようで、ガサガサとかガンっとか物音が耳元で聞こえる。 「あ、もしもし。🌸さん?うるさくてごめんね」 「とんでもないです。なんか迷惑かけてるみたいでこちらこそすみません」
2023-07-11 21:33:57環くんからスマホをもぎ取ったらしく、何度か話したことがあるサイドキックから謝られる。 「なんか🌸さんに“飲み会行かないで”って言ってもらえないって拗ねてて、もの凄いペースで焼酎煽ってたら酔ったんだよね。今も隣でスマホ返せーって叫んでる」 「あー…はい。聞こえてます」 「だよねー」
2023-07-11 21:33:58あはははって笑っているけど腕に環が乗っかってきてるみたいで「重ぇ!」と時折叫んでる。今朝怒ってる?とか聞いてきたり、楽しんでって行った後に唸っていたのはそういうことか。 「申し訳ないんだけど迎えに…あっ!こら!」 「🌸ちゃーん!何で他の男と話してんの!」 「え、ごめん」
2023-07-11 21:33:58思わず謝ってしまうけど、私は何も悪くないような。 「何で嫉妬してくれないの」 「する必要がないというか」 「なんで!」 駄々をこねるように騒ぐ。確かにこれは面倒だ。そんな所も好きだけど。電話でいくら信頼してるとか言っても酔っ払ってる環は“なんで!”と返してきそうだ。
2023-07-11 21:33:59「お迎え行くから、もうお酒飲んじゃダメだよ?お水にしてね」 「…来てくれるの?」 「うん」 「…待ってる」 ようやく落ち着いたみたいで電話を切る。最後の甘えるような声を思い出して顔が綻ぶ。愛しの彼氏にどうわからせようか。そんなことを考えながら、車のキーを持って家を後にしたのだった。
2023-07-11 21:33:59