スワローズ妄想劇場【３番 ショート兼探偵 川端慎吾】その4

トゥ・レイン・スワロー @to_rain_swallow

スワローズ妄想劇場【3番 ショート兼探偵 川端慎吾】その4 #swamou #swallows ※このお話は実在の人物・団体・施設とは全く関係のないものです。あしからずどすからす。へでで。感想や、この選手を出せ！やチョイ役で出させろ等はDM頂ければ実現するかも知れません

スワローズ妄想劇場 @swa_mou

スワローズ妄想劇場【３番ショート兼探偵 川端慎吾】その4 流石に平日だと渋滞に巻き込まれることもなく午前中に長野に着いた。最初は不満をぶつけていた友紀も道中に事情を聞いてすっかり「その気」になっていた。(昼御飯に『信州牛』を奢らされる羽目になったが) #swamou

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その施設は市街を見下ろせる場所にあった。中に入ると思いの外明るく、沢山の人がいた。ホテルのような内装の中を進み、受付にいるエプロン姿の人に声をかけた。「あの、木下さんの事でお伺いしたいと電話した者ですか・・・」「はい。ああ、川端さんですか？少々お待ちください。」 #swamou

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対応した女性は応接室へと案内した。通された部屋では施設長と書いてある名札をつけた初老の女性が座っていた。「遠いところをようこそおいで下さいました！」川端は、家族でもないものが突然押し掛けて何か聞くなんて警戒されるかな？と思っていたので、歓迎ぶりに少し面食らった。 #swamou

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施設長は続けた。「この度は入居していた木下さんの件で御迷惑をおかけしました。」深々と頭を下げられ、「いえいえ、とんでもないです。・・で、その時にこんなものを渡されたのですが・・」川端は恐縮しながら木下老人から渡されたスコアブックを手渡した。 #swamou

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施設長は一目見て「ああ、これは。」と言うと二人を木下老人の個室へと案内した。1Rマンションの様なその部屋には、生活に使われる一式が揃っていた。戸田寮より豪華かもしれない。その中に一見して異質の空間があった。古いユニホームやグローブが掛けてあり、写真が並んでいた。 #swamou

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施設長が川端に声をかけた。「木下さんは大学野球の選手だったみたいですよ？」川端は古いが良く手入れされた道具を触れながらなるほどと思った。「学生のころ、教員養成課程だったので学徒動員を免れて、戦後この地元に戻られた後は、家業をお継ぎになられて大きくされました。 #swamou

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今では引退されて、事業も他人に譲って。・・あ、それです。」施設長は古い野球の道具に混じって置いてある大きめの封筒を指差した。その真新しい封筒には「外務省」と書いてあった。この部屋にひどく不釣り合いな封筒を手に取り、中を開けると古びた封筒が出てきた。 #swamou

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宛名は木下老人。差出人は・・良く読めない。施設長が「南方で戦死された方の遺品だそうです。何でも最近見つかったらしいですよ？」と、説明してくれた。中を見るとあのスコアブックの原本が出てきた。他には何も入ってなかった。 #swamou

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手掛かりは増えなかったか・・と、スコアブックが一部違う事に気付く。色が付いている。(そうか、白黒コピーだからわからなかったのか。)改めて見てみると色が付いているのは二ヶ所。例の「マルに11」の横、5番打者に付いているホームランの記号。（マス一杯に大きく菱形） #swamou

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あと、その２イニング後の2番打者に付いている得点(ホームを踏んだ選手)の記号(マスの中心に太い点を書く)だった。本来、安打は全て赤字で書かれると思うんだけど、なぜ２打席の記録だけなんだろう？川端は施設長にカラーコピーをお願いして、施設を立ち去った。 #swamou

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昼御飯に向かう車内で友紀がカラーコピーのスコアブックをまじまじと見ている。「ふーん、昔も今も、そんなに変わらないんだね。」川端が「そうだろうね。」と気のない返事をする。「でも、これはきっと慣れない人が書いたんじゃないかのな？」「なんで？」川端が聞き返す。 #swamou

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「だって、点数が間違ってる。ほら、この2番打者の得点、前の打者に残塁のマークが付いてる。次の3番が三振してるから。この回に2番だけがホームに帰れる訳ないのよ。本来なら残塁のマークなはずよ。」不鮮明な白黒コピーの時には気づかなかったが確かにそう読める。 #swamou

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しかも、その2番打者の名前はその回に交代した「木下」だった。でも、わざわざ練習書きを戦地で・・・？友紀がせかすように言った。「まあ、こんなの落書きよ落書き！スコアブックなんて呼べないわ！さ、お肉食べに行きましょ！」その言葉を聞いて、川端が急ブレーキをかける。 #swamou

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「友紀、今なんて言った？」兄の急変に戸惑いながら「お肉・・・あ、そんなに嫌なら魚でも・・」「その前！」「こんなの落書き、スコアブックじゃない。・・・怒った？」友紀の言葉を頭の中で繰り返す。(スコアブックじゃない。そう、スコアブックだと思うから分からないんだ。 #swamou

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もし、あれがスコアブックじゃないとするなら・・・)頭の中に一つの答えが見つかった。川端が叫ぶ。「友紀、答えが分かった！東京に帰るぞ！」急発進した車に揺さぶられながら友紀が抵抗する。「ちょっと、信州牛は？もう、謎解きなんかランチの後でいいじゃない！」(続く) #swamou