苫野一徳さん 大阪教育基本条例案への提案

大阪の教育基本条例案(職員基本条例案)に対し、こうすればよりよい評価ができるというアドバイスです。
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苫野一徳 @ittokutomano

大阪の教育基本条例案についての私の考えに、多くのご意見いただきありがとうございました。ツイッターの議論は、論点が拡散してテーマの本質からどんどん離れていってしまう傾向がありますので、ひとまず少し整理してツイートいたしますね。

2011-11-28 10:11:06
苫野一徳 @ittokutomano

まず言いたいことは、私は決して対立点を強調しているのでもないし、したくもないということです。そうではなくて、「ここまでなら納得合意できるのではないか」という点を提示したい。そうすれば、じゃあその納得合意に基づいて、よりよい方法・アイデアはないかと共に考えていけるので。

2011-11-28 10:14:33
苫野一徳 @ittokutomano

まず教員評価について。教師も、評価とアカウンタビリティを免れることは当然できません。とすれば、重要な論点は、どうすれば教育効果・パフォーマンスを最大化できる評価方法を導入できるかということになります。

2011-11-28 10:19:50
苫野一徳 @ittokutomano

そこで、まず「実証」レベルのお話から。これは「事実」レベルの話なので、「いい・悪い」の問題ではなく、まず共有しておく必要のある前提だと思います。

2011-11-28 10:20:14
苫野一徳 @ittokutomano

(承前)繰り返し書いてきましたが、教師を序列化・ランクづけする評価方法は、教師間の連帯を妨げ足を引っ張り合う明らかな傾向があり、全体のパフォーマンスを著しく下げてしまうことが、事実レベルで「実証」されています。

2011-11-28 10:23:54
苫野一徳 @ittokutomano

他方、チェック方式で自らの長所と弱点を把握し、長所をのばし弱点を克服するため教員間で協力し合いまた行政もそれを支援する体制は、教師個々人のパフォーマンスだけでなく、学校全体のやる気が活性化されることも「実証」されています。

2011-11-28 10:26:47
苫野一徳 @ittokutomano

次に「事実認識の仕方」についてです。教員評価は、企業的な成果主義的評価とは異なった方法で行う必要があります。それは、教育の効果が、売り上げや利潤のように、短期間で目に見えて明らかになるものではないからです。この「事実認識」は、まず共有できるのではないかと思います。

2011-11-28 10:32:40
苫野一徳 @ittokutomano

(承前)短期間の到達・成果目標を立て、これを達成できたかどうかで教員評価を行うことは、かえって問題を悪化させることもまた、「事実」として分かっています。たとえば短期間でのクラスの学力向上を命ぜられた教師が、学力テスト当日に、低学力の子を欠席させたりカンニングさせたりという(続く)

2011-11-28 10:37:20
苫野一徳 @ittokutomano

(続く)例もありました。これは極端な例ですが、教育は常に長い目で見る必要があります。決められた期間までに成果を上げなければならない成果主義を根本にしてしまうと、子どもたちの成長を長い目で見られない短絡的な教育行為が増発します。これも「事実」としてすでに知られていることです。

2011-11-28 10:40:48
苫野一徳 @ittokutomano

そこで対案をもう一度書いておきます。教員評価は、序列化ではなくチェック方式で(チェック項目には、生徒の意見や保護者の意見も入れる)。教員同士が牽制し合う競争主義的評価ではなく、協同・連帯・モチベーションをいかに高め、子どもたちに還元できるか。これが教員評価の肝だと思います。

2011-11-28 10:50:50
苫野一徳 @ittokutomano

昨日の会見で、橋下さんは、教育基本条例案について、細部はもちろん議論して見直す余地があると言われていました。私は、この教員評価の方法を変えるだけでも、ずいぶんと教育パフォーマンスは変わってくると思っています。

2011-11-28 10:53:59
苫野一徳 @ittokutomano

他にも書きたいことはあったのですが、仕事に戻りますのでできればまた改めて。一応論じるべきテーマだけ列挙しておきます。「改革」のためには現代の教育の何が「問題」かという現状認識が重要ですが、条例案におけるその認識の妥当性の吟味。教育の「目的」は何か。教育行政の「正当性」は何か。

2011-11-28 11:17:55
苫野一徳 @ittokutomano

最後に1点。昨日も書きましたが、教育学には教育のパフォーマンスを上げるための「実証研究」が豊富に蓄積されています。教育政策は、「思い」や「思い入れ」や「思い込み」ではなく、そうした「実証」をぜひふんだんに参照にしていただきたいと思います。

2011-11-28 11:21:21
苫野一徳 @ittokutomano

そうした豊富な実証データを蓄積されてきた教育学者として、苅谷剛彦さんと広田照幸さんの御研究を、最低限おさえておいていただきたいものとして挙げておきます。

2011-11-28 11:25:05
苫野一徳 @ittokutomano

もちろん、「データ」はその解釈の仕方によって意味が変わってきます。なので「解釈」部分には議論の余地がふんだんにある。でも、何が事実レベルで明らかにされているかをおさえておくことは、教育議論の際の最重要の基本だと思います。

2011-11-28 11:27:08