空間の奥には座椅子がひとつ。 白く無機質な部屋の中で、必要以上の存在感を纏う赤と金の座椅子。そして当然、そこには黒幕である彼女が座っていた。
2023-08-27 20:33:56「ああ、いらっしゃいませ」 歓迎の台詞を退屈そうに読むその姿が「待ちくたびれた」と呟いた。なのら先輩は薄ら目を細め、座椅子の横に立っている。
2023-08-27 20:34:22「“見られてた”?当たり前です」 羊飼来夢は座椅子から立ち上がり、当然のようにそう答えた。 「僕らは君らを利用した。僕の私情じゃまだ通りにくい部分もあるし、実験室の力を使うには有益な心理実験と並行させないと流石に全ては頷かないから。それを証明するための練習台に過ぎない」
2023-08-27 20:36:32「まあとりあえず、この話はこれくらいで良いですか?そろそろ、僕は黒幕としてちゃーんとみんなのお願い事を聞かなくっちゃ。」
2023-08-27 20:38:29腕の近くを鋭い風が掠めた。的を失った弾丸が床に強く打ち付けられる。 あと1秒でも避けるのが遅かったら、それはあたしに直撃していた。つまりあの弾は、間違いなくあたしへ向けられていた。
2023-08-27 20:41:57「理由は情報漏洩防止、以上!念には念を、って言うじゃないですか。実験に深く関わった部外者は用済みになったら殺しとかないと......それに、」
2023-08-27 20:43:42再び目の前で、銃が構えられる。 「僕ね、実はまだ人を撃ったことが一回も無いんですよ。だから______ねえ、教えて欲しくって」
2023-08-27 20:44:38そんな1行の感想文を残して、銃を放り投げる。「自分の手で誰かを撃ち殺す」という事象が持つ特別感を、きっと過度に期待しただけなのかもしれない。
2023-08-27 20:50:11「...!?ッあ“、ぃッ...」 ナノラちゃんは止まった時間がふと動き出すように、そのまま倒れ込んだ。 小刻みに息を乱しながら、腹部をぐっと押さえ込む。表情を覆い隠すように丸まっていた。
2023-08-27 20:50:38自分で撃ち殺した人だしということで、わざわざ彼女のそばまで寄って顎を持ち上げてやる。手のひらに、ベッタリと何かがついた。 「あれ、ちゃんと痛いんだ」
2023-08-27 20:51:04