稲川淳二の『つぶやき怪談』(2023.05.26)

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稲川淳二 @Junji_Inagawa

八人用と四人用のテント。 四人用に食料だとかを入れて、 八人用に自分らが入ったんです。

2023-05-26 20:18:20
稲川淳二 @Junji_Inagawa

男、四人で行きましてねえ。 で、断崖があるんですよ。

2023-05-26 20:18:33
稲川淳二 @Junji_Inagawa

火を焚いて、我々がチロチロあたっていると、 それがちょうど影絵のように、 崖に巨大な自分の影が映るんですよ。

2023-05-26 20:18:57
稲川淳二 @Junji_Inagawa

これは、不思議でしたねえ。

2023-05-26 20:19:03
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そこに波がですね、陸の上にまで上がり込んできて、 “ズズーッ”と、ずって行くんですよ。

2023-05-26 20:19:23
稲川淳二 @Junji_Inagawa

驚いたのはですね、 そこには、なんと直径がですね、

2023-05-26 20:19:42
稲川淳二 @Junji_Inagawa

二メーターから三メーターもあろうかという、 真ン丸の泥饅頭があるんですよ。

2023-05-26 20:19:48
稲川淳二 @Junji_Inagawa

(なんてあんなに、真ン丸なんだぁ)

2023-05-26 20:19:56
稲川淳二 @Junji_Inagawa

と思うくらいに、真ン丸で、 まるで誰かがですねえ、 故意にこさえたように、真ン丸なんですよ。

2023-05-26 20:20:27
稲川淳二 @Junji_Inagawa

その、泥饅頭がたくさんあるんですねえ。

2023-05-26 20:20:37
稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、その下をですね、夜光虫がチラチラ翔びながら、 波が入ってくるわけですよ。

2023-05-26 20:20:55
稲川淳二 @Junji_Inagawa

奥は、というとUの字に引っ込んだ、 入り江になってましてね。

2023-05-26 20:21:29
稲川淳二 @Junji_Inagawa

で、木々が鬱そうとしてるんですよ。

2023-05-26 20:21:39
稲川淳二 @Junji_Inagawa

これは尋常じゃなく、恐いですよ、昼間でも。

2023-05-26 20:21:43
稲川淳二 @Junji_Inagawa

たまたま、遊びにきた連中たちが、 民宿に帰れないって言うんで、 私、民宿まで送っていったことがあるんですよ。

2023-05-26 20:22:00
稲川淳二 @Junji_Inagawa

私だって、恐いんですけどね。

2023-05-26 20:22:08
稲川淳二 @Junji_Inagawa

泥饅頭の下を歩いていると、 まるで上からですね、

2023-05-26 20:22:29
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「あいよ」 て、顔がのぞくような気がするから、 上は見れないんですよ。

2023-05-26 20:22:44
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そしてね、泥饅頭と泥饅頭の間から、 空が見えるんです。

2023-05-26 20:22:57
稲川淳二 @Junji_Inagawa

実はですね、歩いて行くと、二時間かかるところが、 崖を通って行くと三十分ですむんですよ。

2023-05-26 20:23:26
稲川淳二 @Junji_Inagawa

崖ですね。 その崖に、道が削りこんであるんです。

2023-05-26 20:23:40
稲川淳二 @Junji_Inagawa

それを、ジグザグ、ジグザグして、 上に上がるわけですよ。

2023-05-26 20:23:55
稲川淳二 @Junji_Inagawa

私が先頭を切って、上がりましたよ。 みんな恐がってるから。

2023-05-26 20:24:07
稲川淳二 @Junji_Inagawa

私、結構こういうの強いですからね。

2023-05-26 20:24:20
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