衣服標本家:長谷川氏による、1830年代に流行った巨大な袖のペリス・ドレスについて

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衣服標本家:長谷川 @rrr00129

ガラスのない美術館【 半・分解展 】を主宰。 Xでは18世紀〜20世紀初頭の個人コレクションを詳しく紹介します。 仕事依頼はリンクから↓

rrr129annex.blogspot.com/p/r3.html

衣服標本家:長谷川 @rrr00129

なぜ女性たちは、袖を膨らましたのでしょうか? 1830年代、極限にまで達した巨大袖を持つ【ペリス・ドレス】を紹介します 見てください この胴体よりも大きく膨らんでしまった袖を このような袖が生まれた背景には、19世紀の「歪んだ女性像」が深く絡んでいます 巨大袖誕生の歴史に迫ります 続

2023-09-13 12:15:42
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衣服標本家:長谷川 @rrr00129

19世紀の初頭、女性たちは「寸胴なドレス」を身に纏いました(写真参照) まるで「古典建築の柱」のように真っ直ぐなドレスと共に、新世紀が始まったのです しかし徐々に流れが変わります 感情を前面に押し出した美術様式「ロマン主義」と共鳴するように、ドレスにも新たな女性象を投影したのです

2023-09-13 12:21:36
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衣服標本家:長谷川 @rrr00129

目指したのは「か弱く繊細な女性」です コルセットで締め上げた「極細のウエスト」は、まさに理想そのものでした そして、ウエストの細さを際立たせるために、対照的に袖とスカートが巨大化したのです このような袖は、ジゴスリーブ(羊の脚)の名称で広く知られています 羊の脚というのはつまり、

2023-09-13 12:27:21
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クロミドリィ @kuromidolee

@rrr00129 この肩の細かいタック(プリーツ)じーと見ていると…吐き気がしそうです。苦笑 袖の中には愛と希望じゃなさそうですね。

2023-09-13 12:28:55
衣服標本家:長谷川 @rrr00129

「羊の胴体から覗く細い脚」に例えているのです 袖を膨らますのは簡単なことじゃありません ただ布を増やしたって、重力に負けて垂れ落ちてしまいます そこで「スリーブ・サポーター」なるものをドレスの内部に仕込んでまで、袖を巨大化させていったのです (写真2はFIDM所蔵) pic.twitter.com/HkfbOHKAYX

2023-09-13 12:32:43
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衣服標本家:長谷川 @rrr00129

平置きにすると、改めてその大きさが際立ちます 私が所有するこのドレスは、カーキ色のシルク素材です 190年ほどの時間が経っているので、色が落ちてシャンパンゴールドのような色味に変化しています 生地自体はとてもかるくてうすいです ボリューミィな見た目に反して、かろやかなドレスです

2023-09-13 12:38:22
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衣服標本家:長谷川 @rrr00129

袖部分の超絶技巧をご覧ください 当たり前ですが「すべて手縫い」です ひとつひとつヒダを折ってステッチで留めて、巨大な袖を収縮し、胴体に縫い付けているのです 各縫い目には補強の為に、ヒモの入ったパイピングが施されます 嗚呼もう神の御業です

2023-09-13 12:43:10
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衣服標本家:長谷川 @rrr00129

胴体部にはいくつものギャザーが寄せられ、立体的な造形を描いています あえて袖のヒダとは違う技法を使い立体構築している点が、職人の技術の高さを伺わせます バストは豊満に、ウエストは細く締め上げられるので、肩と腰に大量のギャザーが寄せられているのが分かりますね pic.twitter.com/VOreTIwc8H

2023-09-13 12:46:54
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