#百 前編

陰斗景 @kimyou1818

#百 『先生』は難しい顔をして言った。 「あなたがお探しの方、厄介な場所にいますね…」 「なんとか見つかりませんか？」 「できる限りのことはします。 ただ、今回は、たくさんの、霊の声を、辿らなくては…」 『先生』はうつむいて動かなくなった。 『助手』が続ける。 「憑依されました。では」 pic.twitter.com/jxZG4xBBza

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#百 鏡を見ると、自分の死に顔が映るって噂を確かめたくて、彼氏と廃墟に行ったの。 で、その鏡を見たんだけど、とくに私の顔も彼氏の顔も変わんなくてさ。 でもね、彼氏が鏡に映る私を見て震えだして… 「おまえ！いつ子供ができたんだよぉ！」 そう叫んで、私を 鏡の中の、お腹、膨らんでたんだ

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#百 最初の出会いは、ゴミ捨て場。 ちょこんと置かれてたんです。 一目惚れ。 毎日毎日、可愛い可愛いと愛で続けてたんですがね。 こんな僕のことを好きだという人が現れてくれて。 途端にね、愛でていたはずのあの日本人形が、干涸びたムカデにしか見えなくなったんですよ。 そんなのイヤだから

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#百 俺は自分の仕事をしただけなんだよ。 壁の染みをキレイにしてほしいって。 行ったら、気味が悪いんだ。 その染み、首吊りした人間の形をしてるんだから。 拭きとったら、その場にいた奴ら、みんな安心した顔してたよ。そりゃあそうだろうな。 家に帰ったら、部屋の壁にそのシミがあるんだから

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#百 呪いとかは信じません。 全て、偶然なんですよ。 たまたま、小さなお社を蹴り壊してしまったのが私の右足だったんです。 以来、右足ばかり骨折を繰り返し、やがて切断する羽目になったのも偶然です。 姉も、父も、母も、みんな、右足を失ったのも偶然なんですよ。 許してはもらえませんかね

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#百 登山中にね、熊と鉢合わせたんだ。 あぁ、終わったって思った。 でも、熊の様子がおかしい。 身体を苦しそうに震わして、うめく様な音をしたかと思ったら、その熊の背中から突き破るように出てきたのがさ、血塗れの人間だよ。 俺が最期に見たのは、血に濡れた顔から見える、真っ白な眼二つ、だけ

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#百 一人旅でとある海岸沿いを歩いてたら、離小島に向かって手を合わせている男女数人に出会したんです。 何してるのかと思って声をかけたら、突然みんな泣き始めて。 何も答えてくれないし、僕も泣きたくなってきて、一緒に今も拝み続けてるんですよ。 あぁやって仲間を増やしてるんでしょうね

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#百 その空き地、「自決の名所」なんて呼ばれてるの。 その空き地の真ん中でね、みんな、自分の身体を包丁で切っちゃうの。 でもね、本当は自決じゃないの。 空き地にいる、あの人の為なの。 あの人が、血を見ると喜ぶから。 あの人はいつも無表情だけど、 血を見ると、くしゃって笑うの。 だから

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#百 この写真、子供の頃の僕が映ってるんですけど。 背後にね、明らかに女性の幽霊が写っているんですよ。 心霊写真ってやつ。 両親はずっと隠していたみたいで、遺品整理時に見つけたんですよ。 気味が悪いんでね、お焚き上げを近所のお寺にお願いしたんです。 その夜です。 全身爛れた女が私を

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#百 私に捨てられた男が自決した。 可哀想、というか、哀れ。 束の間の幸せを与えてあげたんだから、感謝してほしいわ。 なのになんで、 ずっと、私の前からいなくならないの？ 私の眼に、あの男の姿が張りついているような。 だから私は

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#百 前を歩く女性が、ハンカチを落としたので拾ってあげたんです。 声をかけたんですが、女性は走って行ってしまって。 で、ハンカチで何かが包まれてることに気づいたんです。 指輪でした。 それで気がつくと、 指輪をはめてるんですよ、僕。 背後から、荒い息遣いが聴こえてきて

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#百 「一旦、休憩をさせてください」 青年が、うつむく老人の背中を支える。 その腕はミイラのように痩せている。 彼は老人から「助手」と呼ばれていた。 助手は老人を「先生」と呼ぶ。 呼吸を整えながら、先生は私を見る。 「まだまだ、降ろす必要があります。 続けますか？」 「勿論」 愚問である。 pic.twitter.com/QDi1RJw0fU

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#百 憧れていたワルい先輩に誘われて、友達と心霊スポットに行ったんだ。 先輩の前でカッコつけようと、暴れてやったよ。 先輩はというと、何もしないんだよ。ただ、俺たちをけしかけるだけ。 多分、先輩は俺たちを身代わりにしようとしたんだ。 先輩も友達もみんな消えた。 次は、俺

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#百 おみくじを引いたら、見たことない文字しか書いてないから、神主さんに聞いてみたんだけど。 神主さん、おみくじをひとめ見るなり、腰を抜かすほど驚いちゃって。 そのまま俺、その神社出入り禁止になっちゃった。 むかつくからさ、 身体いらねーやって思って。 そうすりゃ、 あの神社、入れる

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#百 隣の家から伸びる木が邪魔。切ってくれとお願いするが、住人は生返事をするばかり。 我慢がならんので、庭に伸びてる分は全部切ってやった。 あとで、隣はもう長いこと誰も住んでないことを知った。木の根元から、住人の骨が見つかったことも。 以来ずっと、半分になった住人が、俺をみつめてくる

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#百 陰気な隣人が自決したんだけどさ。 見つけた大家さんが、ドアの内側に貼ってあった紙に気づいたんだって。 紙には、物や名前が箇条書きになっていて、いくつかに斜線が引かれてて。 「隣人」と「大家」「自分」の文字にも引かれてたんだってさ。 大家さん、次の日に亡くなったの

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#百 長年幽霊が視えると、もう生きてる人との区別がつきづらくなってきちゃってね。 この前も、飛び降りようとしてる人を寸前で助けたと思いきや、霊だったとか。 それからかな、 僕も生きてるのかどうか、わかんなくなったのは。 あの時、引きこまれたのかな

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#百 踏切の真ん中に女の人が佇んでいたんで、思わず、「危ないよ！」と声をかけました。 「じゃあ、代わって」 その人が、目の前にいきなり現れて、 線路の真ん中から、動けずにいます

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#百 「事故物件」と呼ばれる部屋で暮らし始めてから一ヶ月。 息子の様子がおかしい。やっぱり、引っ越したほうがいい… 突然、息子がてるてる坊主を一心不乱に作り始めた。気味が悪い。 「…雨がイヤなの？」 息子が振り返る。 「違うよ。 これみんな、あそこにぶら下がってるおじさん達だよ」

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#百 人形コレクターの友人宅へ。 一部の人形がロープでぐるぐる巻きにされている。 可哀想で仕方ない。 友人に頼んでも、解こうとしない。 曰く、アレらは勝手に動き出すらしい。 ならばなおさら。 私は友人をロープでぐるぐる巻きにして、人形を自由にしてやった。 人形達は瞬く間に、友人を肉塊へ

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#百 「家であなたの話をしたら、気に入っちゃったみたいなの」 友達にそう言われたの。 「だから、ごめんね。 会いにいくって聞かなくて」 言ってる意味がわからなかったの、でも。 「多分、今夜、枕元に立ってると思う」 そう言われた夜、実際に見てわかったの。 アレには逃げられないって

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#百 怪談が好きでね。 人からいろんな話を聴き集めるうちに、毎晩夢を見るようになったんだ。 その体験者の目線で、同じ怪異に遭う夢。 しかもどの夢も、結末が聴いた話と違う。 皆、怪異の果てに… 気になって体験者に連絡をとったらさ、 皆、亡くなってたんだよ。 夢の通りになっていくんだとしたら

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#百 「今の…！ 今の方をもう一度、降ろしてください」 先生はぐらりと身体を揺らし、こちらを眩しそうに見つめる。 「…わかりました」 先生はまた、項垂れたまま身体を震わした。 兄は、趣味で奇怪な話を集めていた。 だから、呪いを解くには兄が必要なのだ。 今はもういない兄が… pic.twitter.com/JymTM5x2qo

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#百 Dさんの話。 彼の近所に、木造の二階建てアパートがある。そこの前を通るたびに、中から口笛が聴こえる。 なんだかまるで、犬や猫を呼んでるかのような、口笛の音。 そのアパートが取り壊された時、床下からたくさんの動物と、行方不明の大家の遺体が混ざったモノが見つかった。

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#百 Eさんの話。 彼女は昔から「妖精」が見える。 妖精は暑いのが苦手らしく、よく冷凍庫に入りこむ。 そのまま妖精は凍ってしまうらしい。 夏は屋台のカキ氷屋の砕氷機にまぎれている姿を見かけて、思わず目を背けるのだそうだ。