- takatou_sub
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立川アウラ
アウラとフリーレン、双方の魔力を秤にかけた服従の天秤《アゼリューゼ》は、果たしてフリーレンへと傾いた。 勝利を確信し敵に背を向けたフリーレンは薄氷の刃の如き声でアウラへ命ずる。 「アウラ、落語家になれ———」 敗北の色に染まる頭が言葉の意味を理解するより早く、アウラの体は戦場から駆け出していた。極東の島国を目指して。 いくつもの船を乗り継ぎ辿り着いたこの国で、土地勘もツテも無いはずのアウラは何かに導かれるまま(あるいはこれもアゼリューゼの力だったのかもしれない)とある落語家の門を叩く。 泣き落とし。癇癪。時には掴みかかるなどしながら七転八倒三日三晩。テコでも動かぬ座り込みの果て、ついに入門を許可される。 これで落語家になれた。やっと解放される。フリーレン許すまじ。様々な感情が湧き上がるも体が言う事をきかない。 ああそうか、自分はまだ入門したに過ぎず落語家になった訳ではないのだと理解した。 ここまできたなら成ってやろう。落語家に。真打に。そしてこの呪いが解けたならフリーレン。必ず貴様の首を掻き切ってくれる。 500年生きた大魔族としての矜持が再び燃え上がった。 ほどなくしてアウラは見習いから前座へ。 師匠宅での雑務はもちろん、寄席でめくりの出し入れ、太鼓の演奏、楽屋でお茶出しも、なんでもやった。はじめて担当した開口一番はさ無惨なものだった。 その屈辱がまたアウラを高みへと押し上げた。 しかしアゼリューゼの呪いは解けぬまま30年。 「師匠、アウラ師匠、起きてくださいもうじき出番ですよ」 去年はじめてとった弟子の少女が肩をゆする。 「ああ、もうそんな時間なのね」 「師匠、楽屋で居眠りなんて昨晩のお酒がまだ残ってるんじゃないですか?」 「少し酔ってるぐらいが私は丁度いいのよ」 真打・立川アウラ、年末最後の寄席には多くの客が詰めかけている。 弟子が奏でる出囃子の音。 ゆっくりと高座へあがる。 演目は芝浜。アウラの十八番だ。 少し茶で口を湿らせ客席に目をやる。 最前列中央。そこには1人のエルフがいた。 フリーレンだ。 腑の底から積年の憎悪と殺意が湧き上がる。と同時に奇妙な感情が鎌首をもたげてきた。 憎いこいつを、笑わせてみたい—— 憎い仇を。氷の様に冷たい表情をしたこのエルフの顔を。笑いで歪ませてみたいと思ったその瞬間、フッと体が軽くなる。 ついにアゼリューゼの呪いが解けたのだ。 アウラはいまこの瞬間、落語家として完成したのだ。 フリーレンの瞳を真っ直ぐ見つめたあと客席全体をゆっくり見渡し、自分の思いついたふざけた考えに思わずフッと鼻が鳴る。 「え〜〜......... 今日はちょいと予定を変更して奇妙な天秤にまつわる噺をひとつ———」 真打・立川アウラ。 伝説の60分がいま、はじまる。 ⠀
2023-11-16 17:36:32長文投稿機能を活かした名文
断頭台のアウラ、二次創作巨編 “フリーレンは薄氷の刃の如き声でアウラへ命ずる。 「アウラ、落語家になれ———」” twitter.com/052ysk/status/…
2023-11-16 20:59:08何を読まされとんだ、と思いつつ、傑作すぎて文句のつけどころがない twitter.com/052ysk/status/…
2023-11-16 19:39:03長いtwitterの歴史でも相当上位にくる名作 ガチおもろい twitter.com/052ysk/status/…
2023-11-16 20:50:17どうしてこの人はこの文学の才能をXなどというドブに捨て続けているのだろうか? twitter.com/052ysk/status/…
2023-11-16 20:36:47ヒトの心を持たない魔族であるアウラが「落語家に”成る ”」。こう、なんとも凄いモノを読まされてしまった>RT twitter.com/052ysk/status/…
2023-11-16 22:27:24このツイートもといポスト、初期表示状態でもオチがついているのに、「さらに表示」を押すことでもう一つの物語がはじまるのがうまい twitter.com/052ysk/status/…
2023-11-16 22:09:00めちゃくちゃ面白いじゃないですか!しかし芝浜に替えておそらくアドリブな「奇妙な天秤」の話、どんなサゲにするつもりなのか。なんとなく「夢になるといけねえ」に持って行って欲しい気がする。 twitter.com/052ysk/status/…
2023-11-16 21:50:10「言葉」を人間を騙す為の道具として表面的にしか学習していなかった魔族が、言葉を巧みに操る落語家として大成した時に人間と魔族の壁が崩れるという秀逸なストーリー。 twitter.com/052ysk/status/…
2023-11-16 21:28:38歴史上もう二度と現れるはずのない落語家の「家元」が帰ってきた。 twitter.com/052ysk/status/…
2023-11-17 00:24:10フリーレンはアウラに人情を知ってほしかったのかな 言わなきゃいいのに「談志はもういないじゃない」とか言って何回か昇進遅れたりしたんだろうなあ twitter.com/052ysk/status/…
2023-11-16 23:51:31噺家アウラが重ねたは齢500と余年に嘘八百と少し 魔族の真は一つ、口から出るのは人を欺く為の言葉、欺かれたいお客様方には丁度良い トントン拍子でカラカラ回る口車 切った張ったはございませんが、座席に限りはございます 奇妙奇天烈な噺に欺かれたければ、騙されたと思って一つ、乗った乗った! twitter.com/052ysk/status/…
2023-11-17 00:15:27待ってました! よ! 断頭町!!✨(*´∀`*)✨ twitter.com/052ysk/status/…
2023-11-16 23:51:16