茂木健一郎氏 @kenichiromogi 【『東京物語』の名言】連ツイまとめ

2011年12月17日の連続ツイート 【本人が意識していないのが、名言】 ……『東京物語』の一番の名言といえば、老母が亡くなった朝、原節子が迎えにいくと、ひとり庭に立っていた老父が、「ああ、きれいない夜明けだった。ああ、今日も暑うなるぞ」とつぶやくシーンであろう……
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茂木健一郎 @kenichiromogi

「連続ツイート」をお届けします。文章は、その場で組み立てながら即興的に書いています! 本日は、昨日の朝日カルチャーセンター講演にちなんで。

2011-12-17 07:24:57
茂木健一郎 @kenichiromogi

ほめ(1)『心と脳に効く名言』(PHP研究所)の発刊を記念して行われた昨日の朝日カルチャーセンター講演。構成をいろいろ考えたが、結局、練り上げられた言葉でごくありきたりの人生を描く小津安二郎の名作『東京物語』を丹念に見ることから始めた。

2011-12-17 07:25:59

内容紹介
「明日世界が滅びるとしても、今日君は林檎の樹を植える」(開高健)
「感傷を怖れる所に、誠実真摯はない」(立原道造)
「喜びを新たにするには悲しみが要り、信を新たにするには疑いが要る」(小林秀雄)
「人間は、自分の置かれた、その中で最善を尽くすほかないでしょう」(小津安二郎)
「僕が僕であるために、勝ち続けなきゃならない」(尾崎豊)
「プリンシプルを持って生きれば、人生に迷うことはない」(白洲次郎)
「さよならだけが人生だ」(井伏鱒二)
本書は、ままならない人生を支え、励ましてくれる言葉を取り上げ、そこにどんな“気づき”があるのかを、気鋭の脳科学者が綴ったエッセイ集。インターネットや携帯電話等、メディアの発達が言葉を氾濫させている昨今、時代も年齢も立場もさまざまな人たちが残した18の珠玉の言葉を通して、本来言葉が持っている“力”を再発見できる一冊。
あなたの人生を変える「ひとこと」が、きっと見つかるはず!
「amazon」より

小津安二郎監督、笠智衆主演の1953年制作の日本映画。昭和28年度文化庁芸術祭参加作品。世界の映画批評家が集まって映画のベスト10を選出する『SIGHT AND SOUND』2002年版 CRITICS' TOP TEN POLL は、年老いた夫婦が成長した子供たちに会うために上京する旅を通して、小津の神秘的かつ細やかな叙述法により家族の繫がりと、その喪失という主題を見る者の心に訴えかける作品、と寸評を出している。 http://p.tl/k-OT 「ウィキペディア」より

茂木健一郎 @kenichiromogi

ほめ(2)『心と脳に効く名言』でとりあげた名言には、例えば井伏鱒二の「花に嵐のたとえもあるぞ さよならだけが人生だ」がある。何とも言えない、わっと泣き出したくなるような味わいのある素晴らしい言葉。しかし、才能にあふれた著名人だけが名言を吐けるのかといえば、そうではない。

2011-12-17 07:27:29
茂木健一郎 @kenichiromogi

ほめ(3)『東京物語』では、東京にいる子どもたちを訪ねる老夫婦が、数々の名言をつぶやく。人生も終わりを迎え、楽しみにしていた子どもたちとの再会も、思ったようにはいかない。それでもすべてをあるがままに受け入れ、微笑み続ける。そんな生きる姿勢が、深い言葉を生むのだ。

2011-12-17 07:29:02
茂木健一郎 @kenichiromogi

ほめ(4)河川敷で、幼い子どもと遊ぶ老母。花摘みをする子どもに向かって、「大きくなったらなんになるん? お父さんといっしょでお医者さんか。あんたがのう、お医者さんになるころには、おばあちゃんおるかのう。」子どもは花摘みに夢中できいていない。愛おしそうにながめる老母。

2011-12-17 07:30:51
茂木健一郎 @kenichiromogi

ほめ (5)美容院をやっている次女の家が寄り合いでいそがしいというので、老夫婦は追い出されてしまう。家を出る支度をしながら、老父が「ははは。ついに、宿無しになってしもうた」とつぶやく。冷たい仕打ちをうけながらも、それを諦念の下に受け入れ、ただ淡々と笑っている。

2011-12-17 07:32:10
茂木健一郎 @kenichiromogi

ほめ(6)『東京物語』の一番の名言といえば、老母が亡くなった朝、原節子が迎えにいくと、ひとり庭に立っていた老父が、「ああ、きれいない夜明けだった。ああ、今日も暑うなるぞ」とつぶやくシーンであろう。すべてをありのままに受け入れる老父の生き方が表れているからこそ、感銘がある。

2011-12-17 07:34:09
茂木健一郎 @kenichiromogi

ほめ(7)変人は大切だが、「私は変人です」と言う人はニセモノである。本当の変人は、自分がやっていることが、ごく自然の、当たり前のことだと思っている。同様に、名言も、本人には意識がないことが多い。その人のごく当たり前の生き方がにじみ出て、聴く者に感銘を与えるのだ。

2011-12-17 07:36:00
茂木健一郎 @kenichiromogi

ほめ(8)誰かが何かを言う。すばらしい言葉だと、深い感銘を受ける。何年か経って、「あの時こんなことを言われて」とお礼を言っても、本人は覚えていないことがしばしばある。話者にとってはあまりにも自然な、生き方のにじみ出る言葉。それこそが、本当の意味での「名言」である。

2011-12-17 07:37:13
茂木健一郎 @kenichiromogi

ほめ(9)『脳と心に効く名言』で取り上げた言葉。「人間は、自分の置かれた、その中で最善を尽くすほかないでしょう」(小津安二郎)。確かに、小津監督はそんな生き方をした人だった。『東京物語』の老父は、小津自身の投影。諦念と微笑みの思想が、世界じゅうの人に感動を 与え続けている。

2011-12-17 07:39:48
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、「本人が意識していないのが、名言」の連続ツイートでした。

2011-12-17 07:40:20

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2011-12-17 09:37:24