翻訳家が『あの子もトランスジェンダーになった』の原著を読んでみた
- ケイトリン・ジェンナー (Caitlyn Marie Jenner) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ケイトリン・ジェンナー
大学生の40%がLGBTQだった!という数字が紹介されてるのもこの章ですね。いやそれって母集団がたまたまそうだったか調査が適当なだけでしょ?私だって大学で「あなたの性自認は?」とか聞かれたら絶対に適当答えますよ… pic.twitter.com/9RXi1KLNO2
2023-12-18 22:03:419章「変容」。二次性徴ブロックやホルモン治療、外科手術がいかに危険かって話ですね。そりゃ難しい問題でしょう。でも例によって、じゃあ何が適切なのか…という話にはならず、要するにすべて駄目だという印象付けに持っていくのがこの著者なので、なんだかなあと。 pic.twitter.com/Ms8hgeIjVm
2023-12-18 22:04:5710章「後悔」。治療を悔いてる人たちがいるよと。なのに体は元に戻せない。ここは本当に胸を打たれます。やっぱ慎重にねと(当事者でもないのに)思わされます。でも、じゃあ控えた方がいい子と治療した方がいい子の違いは…という話にはならない。全否定へと誘導される(これも本書のパターンですね) pic.twitter.com/DIfdHU7AY0
2023-12-18 22:07:22
11章「昔は」。トランスの有名な元ポルノスター、バック・エンジェルさんに会った話から始まります。すごく感じのいい人だったと。この取材が本書のこんな後ろに置かれてるのは、どうしても嫌いになれなかったという意味で手ごわい存在だったのかもしれません。やっぱこの著者さんも生身の人間に会うと pic.twitter.com/25YB50BUln
2023-12-18 22:09:49絆されるんやなあ…と思うじゃん? 序章の「友達になった」ってのはたぶんこの人ですね。ところが次の瞬間、でも今の子の大部分は違う!エンジェルさんみたいに苦労してない!エンジェルさんだって安易な治療に反対してる!ともってく。つよい。エンジェルさんだって本当に必要な人への支援は否定して
2023-12-18 22:12:29ないと思うよ?あとは「娘たちをどうするか」という結論風コーナーへ(もちろん親視点です)。スマホもたせるな、SNSさせるな、親の権威を保て、女性である素晴らしさを教えろ…とか7つ挙げてます。もしこのコーナーが冒頭にあったら、なに古臭いこと言ってんの、で終わりですが、何しろ第10章を読んだ pic.twitter.com/JqrIKaanGT
2023-12-18 22:13:42あとですから、そうだなあそういうこともちょっとは考えないといかんなあ、なんて思わされます。トランスジェンダーの本を読んでいたと思ったらいつの間にかゴリゴリ保守派の伝統的家族観に取り込まれていた…な、なにを言ってるのかわからねーと思うが俺も
2023-12-18 22:14:13でもこれ、娘がトランスだと言い出しても標準治療さえ受けさせるなと言うに等しいのでけっこう過激です。そりゃいい加減な医者に診せるのは嫌でしょう。でも娘が本当に医療的支援を必要としてるケースは全然考えなくていいのけ?そうですそこから全力で目を逸らすのがまさにこの本のポイントなのです…
2023-12-18 22:16:15- 標準治療 - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/標準治療
- 51.ガイドライン 〔診療指針,標準治療〕 guideline - 「病院の言葉」を分かりやすくする提案|国立国語研究所 https://www2.ninjal.ac.jp/byoin/teian/ruikeibetu/teiango/teiango-ruikei-c/guideline.html
- 標準治療 - 医療情報をわかりやすく発信するプロジェクト(医学系研究をわかりやすく伝えるための手引き) https://ez2understand.ifi.u-tokyo.ac.jp/terms/terms_09/
最後に文体について。著者はWSJ紙に書いてたくらい筆力がある。語彙豊富で密度とキレがある。ユーモアも皆無ではない。原書読んだ感想を上げてる人がほかにもいますが、そんなひどい本じゃなかった、いい論点もあったよという人もいますね。そりゃそうです、情報や論点がいっぱい詰めこまれてます
2023-12-18 22:19:11細かく読むとトンデモが多いですが、それだけでない強靭さがある。今のトランスはcrazeだとの自分の主張に不利な論点に平気で触れに行き、次の瞬間攻撃に転化する。極端な例を挙げてすぐ全否定へと誘導する。これはすごいな、私みたいなふにゃふにゃした人間には真似できねえなと思いました。おしまい
2023-12-18 22:21:26- ウォール・ストリート・ジャーナル (The Wall Street Journal, WSJ) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/ウォール・ストリート・ジャーナル
長い感想も書いた。 twitter.com/252coffee/stat…
2023-12-19 00:05:07じゃあKadokawaで出版中止になった本の原書の感想を。つっても専門的なことはわからんので読み物的な面だけね。アビゲイル・シュライアー『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』Abigail Shrier, Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters pic.twitter.com/xpbgaDKEyz
2023-12-18 21:35:48なかなかよい読書感想文を書けたと思うのだけどこんなに遅くなっちゃねえ。継続的に関心のある人へは届いても、ニュースとして消費した人はもう別の話題へ移ってる。まあ私の仕事じゃないからいいんだけど、英書をもっと速く読めない悔しさはあるなあ
2023-12-19 23:18:56するどい。本書の全重心は女に出産機能を失わせるなという家父長的信念にある。別にそう明言されてはないけど明らかに。それは結論コーナーの5「思い切って引き離せ」=娘がトランスだと言ったら大学やネットや都会から遮断しろ(明言は避けられてるけどジェンダー医療も物理的に奪えということ)という twitter.com/inthewall81/st…
2023-12-22 00:43:15KADOKAWAの件のトランス本、トランス男性がターゲットになってると知って、なるほど主眼は女性のリプロダクティブライツへの介入、中絶禁止運動の別展開なのか、と文脈が見えた感じがある。トランスジェンダーを認めると女性が出産機能を失うからそれを防ぐのが重要な目的な本なんじゃないか。
2023-12-21 22:55:46勧めに極まっている。娘が大学生(つまり成人)でさえそうしろと勧めているのだから、自己決定という近代的原理さえ振り切っている。 「偽物の(要するに犯罪者の)トランスが女性スペースに入ってくる」という点に主な恐怖が集約されているようにみえる日本の言説と比べるときわめて異質なものを感じる…
2023-12-22 00:43:15と言おうかと思ったけどちょっと田舎やちょっと保守的な家庭ではたぶんシュライアーの主張が全部通じるだろうから全然一緒だなこれはたぶん
2023-12-22 00:43:15
訂正
訂正!「親に取材したら本人には一人も取材してない」と書きましたがKyleという子の言葉が取り上げられてました。自分はネットのおかげでカムアウトの勇気が出たようなものだ、と。著者に都合のいい一言だけじゃーんとは思いますがともかく一箇所、子側からの発言を記してますtwitter.com/252coffee/stat… pic.twitter.com/eiNpOp3Crn
2023-12-23 17:53:17トランスジェンダーの子をもつ親から話を聞いたら、その子本人には一人たりとも取材してない。著者の肩書は「ジャーナリスト、文筆家」みたいだけどこりゃ変でしょ。当事者に取材しないで本書くとかさ。どう考えても、親と子の両面から話を聞いてみない理由がない。
2023-12-18 21:35:50言い訳だけど、kyleのお母さんのKatherineに著者が初めて会った場面でKatherineの具体的な発言がなぜかないままAngelaというお母さんの発言に移ってて、Angelaの子は名前不明だけどトランスだと途中で言わなくなった子だから、私はKyleはもうトランスじゃない子なんだと勘違いしちゃった…すみません
2023-12-23 18:03:07最初は辞書引きながら読み、二回目はAudibleで聴き、三回目は確認しながら読みと三周もしたのにこの体たらく… 読書力がよわい
2023-12-24 00:26:02
【資料リンク】
- 学芸ノンフィクション編集部よりお詫びとお知らせ〔2023年12月5日〕 | KADOKAWA https://web.archive.org/web/20231205111014/https://www.kadokawa.co.jp/topics/10952/
- 「あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇」アビゲイル・シュライアー [ノンフィクション(海外)] - KADOKAWA https://web.archive.org/web/20231203150451/https://www.kadokawa.co.jp/product/322307000250/
- 「あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇」アビゲイル・シュライアー [ノンフィクション(海外)] - KADOKAWA https://web.archive.org/web/20231203150451/https://www.kadokawa.co.jp/product/322307000250/
- (Amazon.co.jp: Kindle) Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters (English Edition) 電子書籍: Shrier, Abigail: 洋書 https://www.amazon.co.jp/Irreversible-Damage-Transgender-Seducing-Daughters-ebook/dp/B07YL6XK55/
- (Google Books)Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters - Abigail Shrier - Google ブックス https://books.google.co.jp/books/about/Irreversible_Damage.html?id=GO6yDwAAQBAJ
- あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇 (Irreversible Damage) - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/あの子もトランスジェンダーになった_SNSで伝染する性転換ブームの悲劇
- 『あの子もトランスジェンダーになった』発売中止騒動を考える:ロマン優光連載269〔2023.12.08〕| 実話BUNKAオンライン https://bunkaonline.jp/archives/3197/
(論評・書評・レビュー)
- (英語)New Book “Irreversible Damage” Is Full of Misinformation (by Jack Turban MD MHS)〔2020/12/06〕 | Psychology Today https://www.psychologytoday.com/us/blog/political-minds/202012/new-book-irreversible-damage-is-full-misinformation
- (翻訳)KADOKAWA出版予定だった本の6つの問題。専門家は『あの子もトランスジェンダーになった』は誤情報に溢れていると指摘 (by ジャック・ターバン)〔2023/12/25〕 | ハフポスト WORLD https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_65792b28e4b0fca7ad228fef
- (英語)A Review of "Irreversible Damage" by Abigail Shrier (by Christopher J. Ferguson)〔2021/01/19〕 | Psychology Today https://www.psychologytoday.com/intl/blog/checkpoints/202101/review-irreversible-damage-abigail-shrier
- (翻訳)『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』のレビュー (by Christopher J. Ferguson)〔2023/12/06〕|はてな匿名ダイアリー https://anond.hatelabo.jp/20231206174416
- (英語)The Science of Transgender Treatment (by Steven Novella & David Gorski)〔2021/01/30〕 | Science-Based Medicine https://sciencebasedmedicine.org/the-science-of-transgender-treatment/
- (翻訳)「トランスジェンダー治療の科学」全文和訳 (by Steven Novella & David Gorski)〔2022/01/07〕 - 鴉の爪 https://crowclaw-2.hatenadiary.org/entry/2022/01/07/040450
- (英語)How a theory about transgender contagion went viralk (by Ben Kesslen)〔2022/08/18〕 | MIT Technology Review https://www.technologyreview.com/2022/08/18/1057135/transgender-contagion-gender-dysphoria/
- (翻訳)波紋広げた研究論文、トランスジェンダー伝染説はいかにして利用されたか (by Ben Kesslen)〔2023/10/23〕|MIT Tech Review https://www.technologyreview.jp/s/285249/how-the-idea-of-a-transgender-contagion-went-viral-and-caused-untold-harm/
- (英語)The Constitutional Conflationists: On Abigail Shrier’s “Irreversible Damage” and the Dangerous Absurdity of Anti-Trans Trolls (by Sarah Fonseca)〔2021/01/17〕| Los Angeles Review of Books https://lareviewofbooks.org/article/the-constitutional-conflationists-on-abigail-shriers-irreversible-damage-and-the-dangerous-absurdity-of-anti-trans-trolls/
- (英語)Irreversible Damage to the Trans Community: A Critical Review of Abigail Shrier’s Irreversible Damage (Part One) (by AJ Eckert)〔2021/07/04〕| Science-Based Medicine https://sciencebasedmedicine.org/irreversible-damage-to-the-trans-community-a-critical-review-of-abigail-shriers-book-irreversible-damage-part-one/
- (英語)Irreversible Damage to the Trans Community: A Critical Review of Abigail Shrier’s Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters (Part Two) (by AJ Eckert)〔2021/07/18〕| Science-Based Medicine https://sciencebasedmedicine.org/irreversible-damage-to-the-trans-community-a-critical-review-of-abigail-shriers-book-irreversible-damage-the-transgender-craze-seducing-our-daughters-part-two/
- (英語) About those “19 errors,” part one (by Rose Lovell)〔2021/09/02〕| Science-Based Medicine https://sciencebasedmedicine.org/about-those-19-errors-part-one/
- (英語)About those “19 Errors,” Part Two (by AJ Eckert)〔2021/09/05〕| Science-Based Medicine https://sciencebasedmedicine.org/about-those-19-errors-part-two/
- (英語)The Controversial Research on 'Desistance' in Transgender Youth (by Jon Brooks)〔2018/05/23〕 | KQED https://www.kqed.org/futureofyou/441784/the-controversial-research-on-desistance-in-transgender-youth
- 『あの子もトランスジェンダーになった SNSで伝染する性転換ブームの悲劇』の内容について〔2023年12月6日〕|海法 紀光|note https://note.com/nkaiho/n/n4db3fa22a2f0
- 英語圏における「美少女アニメのせいでトランスジェンダーになる」言説の事例メモ〔2023-12-08〕|境界線の虹鱒 https://mtwrmtwr.hatenablog.com/entry/2023/12/08/211602