日本のアニメはもっと脱君主主義と脱白人主義をやるべきである!

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リンク シネマンドレイク:映画感想&レビュー アニメ『ティアムーン帝国物語』感想(ネタバレ)…良い植民地主義者になろう? 良い植民地主義者になる?…アニメシリーズ『ティアムーン帝国物語~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。 英題:Tearmoon Empire 製作国:日
シネマンドレイク @cinemandrake

【感想 書きました】マリーアントワネットが着想元になっているヒロインがギロチン処刑の運命を回避する転生物語。本作の政治的帰結はディズニーの『ウィッシュ』に近いものがある気もする。だからこそ問題も… アニメ『ティアムーン帝国物語』感想(詳細は以下)⬇️ cinemandrake.com/tearmoon-empire

2024-01-09 07:01:00
🕊️Yumei @wwisteria_yumei

うわーー、めちゃくちゃ見たい 絶対面白いじゃんこんなん… pic.twitter.com/Wj742UJHrD twitter.com/cinemandrake/s…

2024-01-13 22:20:14
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とは言え、子ども向けの『プリキュア』くらいの政治描写の浅さであるのは否めません。病院作りで疫病対策OKなのかとか、お友達価格取引や新種の小麦備蓄などで飢饉対策とするのはふじゅうぶんすぎるだろうとか、ツッコめるところはいくらでもあります。それでも大事な要点を掴んでいるなら、ディティールがデフォルメされようと浅かろうといいかなとは思います。

ただ、政治の方向性の着地点はやっぱり気になります。私は『ティアムーン帝国物語』について、同時期に劇場公開していたディズニーアニメーション映画『ウィッシュ』とかなり近い政治的帰結があるなと感じながら観てました。

リンク シネマンドレイク:映画感想&レビュー 『ウィッシュ』感想(ネタバレ)…ディズニーはいつになったら願いを叶えるの? まだ叶えていない願いがある…映画『ウィッシュ』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。 原題:Wish 製作国:アメリカ(2023年) 日本公開日:2023年12月15日 監督:クリス・バック、ファ 7

「悪い権力」の腐敗を正す「良い権力」というのは、都合のいい詭弁にもなり得るもので、下手したら「良い植民地主義者になろう」というプロパガンダになりかねません。

ただ、この『ティアムーン帝国物語』はなおさらスタンスとしてマズいのは、「革命を防ぐ」ことを前提にしている点です。つまり、王政は維持したまま「良い国」になれば革命は起きなくて平和だろうという考えに沿って物語は進行しています。ミーアは平和主義な権力者になろうとしていることになります。

さらに加えて、本作はミーアのキャラクター表象もなかなかに肯定しづらいです。というのも、今作のミーアはいわゆるポンコツ…アホの子としてデザインされています。これ自体、日本のアニメにありがちなキャラです。

しかし、政治に無能な女性が天然キャラのまま周りが察してくれることで愛されて、なんだか上手くいく…という流れは、ものすごく女性の政治能力を小馬鹿にしている感じがあると思います(作中で政治手腕を発揮する女性キャラもでてきますけどね)。政治が個人の性格の問題で弄ばれるという論点のすり替えも起きやすいですし…。

『ティアムーン帝国物語』がミーアというキャラクターを弄びつつ結局は甘やかし、王政に理想主義を抱いているのは、このプロットが「笑えて可愛いプリンセス・ストーリー」として消費できるものでないと困るからなのだろうとは察せます。アベルやシオンなど複数の王子様ポジション・キャラクターがでてきて、恋模様的な雰囲気をだすのもベタな流れです。

私は「笑えて可愛いプリンセス・ストーリー」でもいいので、例えば、自国の王や王子を殺す話とか、そういう古い王政打破の方向で持っていくといいんじゃないかなと思うのですけど。実写だとドラマ『THE GREAT エカチェリーナの時々真実の物語』みたいなアプローチもあるわけですしね。

リンク シネマンドレイク:映画感想&レビュー ドラマ『THE GREAT エカチェリーナの時々真実の物語』感想(ネタバレ)…私がグレイトになる エル・ファニングとニコラス・ホルトの演技合戦…ドラマシリーズ『THE GREAT エカチェリーナの時々真実の物語』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。 原題:The Great 製作国:アメリカ(20

作品のコンセプトに立ち返ると、ミーアの目的は「ギロチン処刑の回避」です。題材となった当時のヨーロッパは今と違って結構死刑になる範囲がざっくばらんで、魔術の罪でも死刑だったので、「自分は未来を知っていて…」なんて口走ったらその場で怪しい魔女扱いで処刑されることもあり得ます。かなりハード・モードです。無論、性格が良ければ処刑にならないわけでもないです(マリー・アントワネットのような政局変化の結果で裁判にかけられた者が死刑になる理由は、性格の問題ではなく、政治の問題なので)。

私も本作を観ながら結構真面目に考えてみたのですが、やっぱり「ギロチン処刑の回避」を達成するには、死刑制度廃止を実現するしかないんじゃないかな?

当時のフランスにも死刑制度廃止の思想はあったし、わりとこんな題材の作品もそうそうないだろうから、死刑制度廃止に奮闘するプリンセスなんて斬新じゃないですか? ギロチンは人道的だという当時の世相をさらに越え、(自分が死刑にされたくないという下心で)必死に人権運動に徹するヒロイン。滑稽でいいと思います。

悪役令嬢と白人至上主義

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現実で不平等な構造に実は苦しんでいた若い女性が“何かしらのファンタジーな存在や出来事”によって初めて対等な機会を会得するというのは、『デキる猫は今日も憂鬱』などでも見られた構図ですね。

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要するに、レイは現実の異性愛規範に浸ることですっかり消極的になっている当事者の典型です。日本という同性結婚が法制化されていない社会に生きる同性愛当事者の多くなら痛感できる苦しさです。

方向性としては『ウエストワールド』ですね。異世界転生で異性愛規範のシステムに抗うという仕掛けはアニメだと最近の『転生王女と天才令嬢の魔法革命』とも同じ。海外作だとアメコミの『グウェンプール』もメタな世界観の客観視の中でセクシュアリティへの向き合いかが描かれます(こちらはアセクシュアルだけど)。

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現状、貧富や階級の批評についてはかなり大雑把なところがあるのは否めないですが…。ふわふわした恋愛シミュレーションゲームかと思えば、実は殺伐とした格差社会をも映し出す本作ですが、このあたりのクレアの特権性自覚の物語はまだ道半ばです。