アニメ版『キャンディ・キャンディ』原作改変問題をめぐる美しい決着と、その後の地獄

momordica @momordica130

『キャンディキャンディ』のアニメーションについて、私は話す資格などないと思う。作品によるが、私はテレビのアニメーションは大好きである。けれど、自分が原作を書いた『キャンディ』に関しては、ほとんどといっていいほどみていない。 #水木杏子

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放送が始まる前のツッパリ大戦争で、もうすっかりアニメのキャンディに興味を失ってしまったのだ。アニメ化が決まった時は、私も(ウソッ?)(ホントォ?)と女子大生のようにはしゃいでいたが、第回目のシナリオが届いた時、その気分は凍りついた。二回、三回、と読むうちに、もういけない。#水木杏子

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ショックでレモン色の台本をほうりなげたほどだ。アニメ化される以上、物語が原作通り運ばれないことぐらい知っている。だけど、キャンディ本人のイメージが、私と違うと困るのだ。「キャンディは、こんな考え方しません、こんなしやべり方もしません!」#キャンディキャンディ

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と、鼻息荒くシナリオライターにくってかかかった。「これだとまるでガラッパチのいじめっ子です。オテンバだけどナイーブな女の子なんです。キャンディは!そこんとこはっきり描いてくれなきゃ、まるでイヤな子になるじゃありませんか!」口調もだんだん激しくなってくる。『児童文芸』1984-09より

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@narai84711 @ccakaigoro 1984年のエッセイで水木杏子先生はこのように書いておられます "怒ったり喜んだり大騒ぎしたが、今は、アニメ化されたことを感謝している。キャンディが終了してから数年、アニメの方のキャンディは何回か再放送され、そのたびに"新しいキャンディのお友達"を連れてきてくれる。#キャンディキャンディ

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@narai84711 @ccakaigoro "動くことによって私の非力なペンでは描ききれない力強さ、親しみをアニメのキャンディにその子達は感じてくれるようだ。先日もキャンディの読者だった少女、、今は結婚して団地住いをしている女性から手紙が届いた。" #キャンディキャンディ

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@narai84711 @ccakaigoro "「団地の階段を三つくらいの女の子がキャンディの歌をうたいながらお母さんに手を引かれて登ってきたのです。あの子が生まれた頃キャンディは終わっていたのに、と不思議な気持ちになりました」 私も不思議な気分になり、キャンディたちは少しも年をとってないのだ、と瞬間、胸が熱くなった。"

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十五年余り前、テレビ化の時は最初から怒り狂い、(キャンディはこのような言葉づかいはしない！)(クリンなどというあらいぐまはペットにした覚えはない！)と、かわいい動物がくっついていた方が子供が喜ぶ――というより、それを商品化しようともくろむメーカーが喜ぶ―― #キャンディキャンディ

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そういうアニメ側と対立し、(テレビ化してくれとたのんだ覚えはない！)などとの暴言を吐き、シナリオライターのY氏とケンカしたりして、編集者やコンビのマンガ家、いがらしゆみこ氏の気をもませたからだ。 『児童文芸』1992-10より #キャンディキャンディ #水木杏子

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自分たちの作品がアニメ化されることは確かにうれしい。だからといって、手放しで喜んでばかりはいられないのだ。最低限、主人公、キャンディの気質を理解し、好きになってくれないと事が運ばない気がした。 #キャンディキャンディ

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「テレビ化されるってことは、作品を嫁に出したも同じ、どう変えられようと文句はいえんのがこのギョーカイです」品のない顔でそういったテレビ局の太ったオエライサンは今頃、どうしておられるだろう。 『児童文芸』1992-10より #キャンディキャンディ #水木杏子

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とにもかくにも、その頃、私はキャンディを"食い物"にしようとする人々に、かなり腹を立てていたので、テレビでアニメ化されたキャンディを見たのは、二回きり。劇場用のキャンディのアニメも、テレビ化されている間に何作か作られたはずだが、試写会はもちろん、 #キャンディキャンディ

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招待券をいただいても、映画館まで出かけて行く気にはとうていなれなかった。 そして、キャンディの物語も最終回をむかえ、いつのまにやらテレビの方も終わった。それきり私はテレビ化されたキャンディに関して忘れてしまうはずだった。 『児童文芸』1992-10より #キャンディキャンディ #水木杏子

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その私が、十数年後の今、子供たちを引率して、劇場用の"キャンディ"を見に行こうとしている。私も年をとって、丸くなったもんだわ――と電車のガラス窓にシワなんかうつして、ため息一つ。けれど、そのため息は決して"嘆きの"ではなくて、思い深い"感謝"のため息なのだ。#キャンディキャンディ

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キャンディが再映画化されるという話しを聞いてから、何度、――長生きはするもんだ、と思ったことか。それはもちろん、私たちの物語に再びライトがあたる、という喜びもあるが、それに関わった人々への私の見方の変化も大きい。 『児童文芸』1992-10より #キャンディキャンディ #水木杏子

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そのきっかけは、娘が生まれてからだ。数年前のある日、娘がまだ開けていないキャンディのビデオを捜し出してきた。ビデオは、アニメの会社から送られてきたまま棚におしこまれ、忘れていた。「これ、みたい」 #キャンディキャンディ

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娘にそういわれた時、私の中でわき上ったのは、切ない感動に似た気持ちだった。私の娘が、キャンディを見たがっている――たいへんテレくさかったけれど、私は初めてキャンディのビデオの封を開けた。 『児童文芸』1992-10より #キャンディキャンディ #水木杏子

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しらない間に私はビデオに見入っていた。私が荒っぽい、と感じたキャンディの動作、言葉づかいも今、それほど気にならなかった。 娘にねだられ、つづけて何本かキャンディを見る。ロマンス色が濃くなって、 娘があきてからも私は一人で見つづけた。 #キャンディキャンディ