トランプそしてアメリカ国民が日本を守らないのは極めて合理的であり、今までの方が正気で無かった

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Shin Toyoda @shintoyo

この議論は、別に新しくない。代表制(選挙制)の黎明期から、無知な有権者に選挙権を与えるのは危険だと主張する人は広範な支持を集めてきた。この議論を突破し、制限選挙から普通選挙を実現するために長い時間を要したことは、周知の事実である。

2024-02-13 16:30:31
Shin Toyoda @shintoyo

ブレナンの提言に対して私から言えることは、政治知識や政治能力を「試験」することは不可能だということである。ここで詳細を述べることはできないが、例えばその筆記試験を誰が作成し、採点するのか、その試験が妥当であることをどうやって保証するかを少し考えてみれば、その問題点は明らかだろう。

2024-02-13 16:32:38
Shin Toyoda @shintoyo

だからこそ、有史以来、政治家を筆記試験で選ぶ制度が成立したためしはないのだろう。あるいは簡単な識字能力を試験することはできるが、現代のアメリカにおいても文盲者はほとんどいないだろうから、実際的に有権者の能力試験として機能するとは思われない。

2024-02-13 16:35:07
Shin Toyoda @shintoyo

さらに言えば、識字能力すら、政治的な能力や知識のプロクシになるとは立証されていない。従って、ブレナンの提案は却下される。

2024-02-13 16:36:16
Shin Toyoda @shintoyo

ではどうすべきか。先に述べたアメリカの問題は、①公教育の弱体と②健康保険へのアクセスの著しい不平等であろう。②については広く認識されていて、オバマはほとんど英雄的な努力を健康保険制度の整備に捧げた。しかし、党派対立に邪魔されて、十分な成果を挙げることはできなかったようである。

2024-02-13 16:39:57
Shin Toyoda @shintoyo

①の公教育の整備についても、連邦政府は長年、努力してきたようである。しかし、極度に分権的なアメリカ合衆国憲法の性質から、うまくいっていない。連邦レベルからのカリキュラムの統一や資金の拠出が不可能になっているからである。

2024-02-13 16:42:14
Shin Toyoda @shintoyo

とすると、問題は憲法改正マターであるということになる。連邦政府の権限を大幅に強化し、州権を制約するのが一つのありうる解決策となる。実現可能か。不可能であろう。州権主義はアメリカの基軸であるし、権限の委譲を州レベルの政治家が是認するという事態は、およそありそうにもない。

2024-02-13 16:47:31
Shin Toyoda @shintoyo

憲法改正が不可能であるとすれば、次善の策は民主・共和両党の政党組織を寡頭制に変える政党改革である。もし政党が寡頭制になれば、連邦レベルの政治家は、州レベルの政治家に対する政党規律を通じて、実質的に連邦政府の権限を強化できる。

2024-02-13 16:49:16
Shin Toyoda @shintoyo

アメリカの政党の寡頭制化を阻害しているのは、予備選挙制度である。候補者になるために政党上位者から指名されるのではなく、その都度、選挙しなければならない場合、政党組織の上位者は下位者に影響力を及ぼすための手段がなくなる。というか、政党内の政治家に上下関係そのものが成立しなくなる。

2024-02-13 16:51:31
Shin Toyoda @shintoyo

党内予備選挙を廃止し、政党を強化すべきであるという提案は、Rosenbluth and Shapiro (2018)"Responsible Parties: Saving Democracy from Itself"で、明白に述べられている。

2024-02-13 16:53:56
Shin Toyoda @shintoyo

なお、政党制を強化(責任政党とする)すべきだという提案についても、別に新しいものである。すでに1950年にアメリカ政治学会が報告を出している。amazon.co.jp/Toward-More-Re… 誠に、「日の下に新しきものなし」と言うべきであろう。

2024-02-13 16:56:32
Shin Toyoda @shintoyo

しかし、党内予備選挙を廃止するのも極度に難しい。アメリカの政党組織は、実はかつて寡頭制であった。オストロゴルスキーによる古典『デモクラシーと政党組織』(1902年)は、代議員大会で選ばれる候補者は、実質的に「後継指名」であったことを報告している。

2024-02-13 17:00:22
Shin Toyoda @shintoyo

しかし、政党組織のその寡頭支配には、非民主的であると批判され、19世紀末の「革新主義運動」の結果として、党内予備選挙制度が定着した。それから現在まで、党内予備選挙制度は、ほとんど伝統としてアメリカ政治に定着している。この制度を廃止するのもまた、ほとんど不可能に近いだろう。

2024-02-13 17:02:45
Shin Toyoda @shintoyo

せめて、連邦議会や州議員の法案採決を、公開から匿名に変更することはできないか。現状では、個々の議員はその一挙手一投足を利益団体と圧力団体に監視され、ほとんど身動きがとれなくなっている。政治においては、公開すれば事態が善くなるというのは、幻想である。

2024-02-13 17:06:55
Shin Toyoda @shintoyo

結局、「選挙すれば民主的」「分権すれば民主的」「公開すれば民主的」という発想には、根拠がない。アメリカの政治的伝統においては、これらの単純化されたイデオロギーが定着しており、そのイデオロギーが、一般人、エリート、そして政治学者の思考をさえ、致命的なまでに制約している。

2024-02-13 17:12:16
Shin Toyoda @shintoyo

とすれば、全ての前提として、まずイデオロギー暴露の作業が必要となってくる。ある政治制度が「民主主義」の実現(あるいはより民主的である)とする全ての思考を、物事の把握を不可能にするマジック・ワードを拒絶するしかない。可能か。これは政治学者の仕事であろう。

2024-02-13 17:16:48
Shin Toyoda @shintoyo

例えば、イギリスの政治思想史ジョン・ダンは、「等身大の民主主義観」という論文で、そうした民主主義という概念を再考するよう述べている(『アステイオン』newsweekjapan.jp/asteion/mook/3…。概念工学を主張する哲学者も同様の見解のようである(まだ読んでない。フリーアクセス)。global.oup.com/academic/produ…

2024-02-13 17:21:07
Shin Toyoda @shintoyo

とはいえ、学者がいくら良い仕事をしても、その内容が一般のアメリカ人に届かねば全く意味がない。そして、先の述べたように、アメリカでは、情報・書物にアクセスする基盤が全く欠けている。その事態を改善するためには、例えば公教育の整備が必要不可欠なのだが、それが制度に邪魔されてできない。

2024-02-13 18:03:55
Shin Toyoda @shintoyo

かくして、事態は完全な悪循環に陥る。(政治)学者がよい仕事をしなければならないのは当然として、マスメディアも本も新聞もコミュニティも機能しない中、学者が生産した情報をどうやって伝えるか。一つしかない。対面コミュニケーションである。

2024-02-13 18:07:13
Shin Toyoda @shintoyo

各地の見捨てられた地を訪れ、そこに住む人々の言うことがどれほど奇妙に聞こえようともそれに耳を傾け、握手し、ハグし、「また来る」と伝え、(ここが重要!)そしてまた実際に行くのである。「説得」「啓蒙」などする必要など、全くない。

2024-02-13 18:09:28
Shin Toyoda @shintoyo

現メキシコ大統領アンドレス・マヌエル=ロペス・オブラドールは、改善しない治安やコロナに由来する経済の悪化にもかかわらず、一般のメキシコ人から圧倒的な支持を集めている。

2024-02-13 18:39:10
Shin Toyoda @shintoyo

ロペス・オブラドールに対し、メキシコの一部野党支持者や、外国の新聞雑誌(例えば英国のthe Economist紙など)「ポピュリスト政治家」などの悪口を安易に浴びせる。『ウォール・ストリート・ジャーナル』の日本版たる『日本経済新聞』の記事で、そうした記事を目にした人もいるだろう。

2024-02-13 18:42:31
Shin Toyoda @shintoyo

ロペス・オブラドールは、貧しく、先住民が多いメキシコ南部で、何があっても衰えない圧倒的な人気を誇っている。どうやってそんなことが可能になったか。私見では、彼は政治家として頭角を現す以前から、それらの場所を、ずっと、数十年をかけて「歩いて」きたからだ。

2024-02-13 18:45:16
Shin Toyoda @shintoyo

そして、ロペス・オブラドールは今でも、とてもゆっくりと、口語のスペイン語を話す。スペイン語が第二外国語である先住民たちにとって、そのようなロペス・オブラドールの気遣いが、どのような効果を持つかは、言うまでもない。人気がない方がおかしい。

2024-02-13 18:48:51
Shin Toyoda @shintoyo

ロペス・オブラドールは、数十年をかけて、その信頼を勝ち得たのである。揺るがない。日本の自民党のかつての政治家たちが、「有権者と握手せよ」と口を酸っぱくして言ったのも、田中角栄がそのあらゆる問題点にもかかわらず人気であったのも、同じ理屈である。

2024-02-13 18:51:35