スクールガール・アサシン・サイバー・マッドネス #6

公式note https://diehardtales.com/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤッ!イヤッ!イヤーッ!」側転しながら四肢で襲いかかるドクカマキリヘルホイールクルマを容赦なく繰り出しながら、ヴェノモスは笑っていた。それはただ残虐な殺戮欲から来る感情ではない。ニンジャスレイヤーが己のカラテの真髄を遺憾なく用いるに足る相手であった事への望外の喜びだ! 18

2024-03-23 22:43:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは絶え間ない連続攻撃を当初は捌きにかかった。だが縦回転の中から順に繰り出される蹴りとチョップの連撃は終わりなきもの!彼は早々に防御の選択肢を捨て、切り裂くようなカラテを受けながらヴェノモスに踏み込んだ!掴む!その襟首を!「……イヤーッ!」 19

2024-03-23 22:49:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「グワーッ!?」ヴェノモスは怯んだ。ドクカマキリヘルホイール・クルマの速度は倍に加速!ニンジャスレイヤーが取り付き、共に回転しているのだ!状況判断によって相手の攻撃を利用する回転投げ……奇しくもそれはジュドー高段奥義の投げ技!ヘルホイール・クルマの動きであった! 20

2024-03-23 22:55:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イイイイイヤアアアーッ!」ヴェノモスの回転ベクトルにニンジャスレイヤーの回転ベクトルが乗算されれば、もはやその速度は6倍超、カラテの凄まじさは100倍ともなろう!「此奴……毒に侵されながら!」ヴェノモスは目を見開く。ニンジャスレイヤーは黒く燃えていた!内なる炎が溢れる! 21

2024-03-23 23:03:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ナムサン!それはまさにヘルホイール(ジゴクの車輪)!体内の毒を焼く黒炎はニンジャスレイヤーの背中の裂傷から噴き出し、その炎の勢いは回転速度を更に乗算せしめた!ヴェノモスは抗おうとする!この勢いの全てを被るのはどちらか一方なのだ!「「イイイイヤアアアーッ!」」KRAAAAASH! 22

2024-03-23 23:06:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

……「アア、ア……」モニコはヤクザ庭園を走り抜けた二人のニンジャが土塊を破砕するさまを目の当たりにし、意識を失った。トジカタはがくがくと膝を震わせ、見守った。陽炎の中から、ニンジャが立ち上がった。ヴェノモスであった。「……!」ヴェノモスはひどく傷ついていた。 23

2024-03-23 23:11:35
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「これが……貴様のカラテか……」ヴェノモスはたたらを踏んだ。濁った毒血が滴り落ちる。「アッパレだ」彼はバチバチと燃える黒炎の泉を凝視していた。泉が膨れ上がり、持ち上がった。ニンジャスレイヤーが手をつき、起き上がったのだ。黒炎となかば一体化したような赤黒の装束。 24

2024-03-23 23:13:37
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

よろめくヴェノモスの四肢に、亀裂が走った。「ヘイ・ジウが敗れることは決して無い」血を吐きながら、ヴェノモスは言った。ニンジャスレイヤーは斜め後方に右腕を突き出す。血飛沫の黒炎が飛び出し、それは燃えるフックロープとなった。ヴェノモスは下肢のバネを最大限に凝縮した。 25

2024-03-23 23:19:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」ヴェノモスはバネを解き放った。キリモミ回転しながら、両手でニンジャスレイヤーの脳天を貫きにかかる!「イヤーッ!」ニンジャスレイヤーはフックロープを放つ!「……グワーッ!」燃える鉤がヘイ・ジウのセンシを捉え、手繰り寄せる!「イヤーッ!」「グワーッ!」蹴りが、貫く! 26

2024-03-23 23:21:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ヴェノモスの胴体をニンジャスレイヤーの蹴りが貫通するや、撒き散らされた毒血は空中で発火し、センコ花火の最後の閃きめいた。「サヨナラ!」ヴェノモスは爆発四散した。ニンジャスレイヤーはザンシンの姿勢を取った。やがて、四散痕に落下した蛇革のマキモノ筒を、彼は拾い上げた。 27

2024-03-23 23:24:21
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何が……何が起きやがったんだ。ありゃ何だ……何のニンジャ……」トジカタは遠く、炎に照らされる赤黒の背中を見ていた。そして我に返った。彼はモニコを見て、苦々しい顔になった。「この……ガキが……!」やり場のない感情が老ヤクザの形相に満ち、無骨なサイバネボディが唸った。 28

2024-03-23 23:27:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ガギン。一瞬後、金属音。しかしその音はトジカタが発した音ではない。彼は反射的に音の方向を見る。井戸。井戸の縁に、手がかかった。這い上がってきたサイバネアームが。黒いセーラー服の女子高生が、自身を引きずりあげて、降り立った。「バカな」掠れた声が届くことはない。「ありえねえ」 29

2024-03-23 23:32:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

俯いたまま、リンホは一歩、二歩、踏み出した。左手にはカタナ。ヴェノモスが折ったのとは別のカタナを持っている。それを右手に持ち替え、リンホは顔をあげた。サイバネアームが軋み、顔の右半分に黒い模様を刻んだ。リンホはトジカタを睨み、笑った。「ケリつけンぞ……!」 30

2024-03-23 23:37:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ア……アアアアア!」トジカタは両腕を突き出した。手首が脱落し、機銃が飛び出した!弾の嵐!BRRRRTTTT!BRATATATATATA!TATATATATATA……「アバーッ!」トジカタの首が真上に刎ね飛んだ。カタナを振り抜いたリンホは、グラつき、もはや振り返らず、モニコに歩み寄る。トジカタの身体が倒れる。31

2024-03-23 23:46:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

(イヤーッ!)(イヤーッ!)遠く、庭の端、リンホは燻る炎を見た。炎に照らされ、赤黒のニンジャは、飛び来たった新たなニンジャと対峙し、アイサツしている。彼らはオジギを終えると共に戦いを始めた。リンホは気絶したモニコに向かって屈み、抱え上げた。カタナは足元に転がった。 32

2024-03-23 23:51:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「モニコ……モニコ」リンホはモニコに語りかけた。「起きてッか?」「……う……」モニコは呻いた。リンホは微笑した。「仕方ねえな」リンホはモニコを抱えたまま、歩き出す。「ケリ、つけたぞ」走り出す。 33

2024-03-23 23:55:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

規則的な震動が、モニコの眠りを妨げた。モニコは見上げた。リンホの髪は、風を受けてなびいていた。黒くて、ストライプのメッシュ。大好きな髪だった。「なんだよ。起きたら言えよ」前を見ていたリンホは、モニコに顔を向けた。二人がいるのは、環状線をはしる電車の背の上だった。 35

2024-03-24 00:07:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「生きてた……!リンホ、生きて……生きてた……」モニコは声を詰まらせた。鼻の奥が痛くなった。「何泣いてンだお前」リンホはモニコの金髪を押さえた。サイバネアームだった。腕を伝って、黒い鋭角線が身体を侵食していた。「リンホ、腕、身体、そんなふうに」「便利だろ?」 36

2024-03-24 00:11:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そんなの……だって……」「だってじゃねえし。クソヤクザ、ヤッてやったよ。アタシの勝ちだ。せいせいした。多分もう、学校に戻れないけどな」「ねえ。どうやって助けに来たの。ねえ、ギリに何か……」「あのヤクザか?そうそう、殺ッてやンよ。何でも来いだろ。アタシは無敵だから」 37

2024-03-24 00:16:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「だけど」モニコは言いかけ、飲み込んだ。「…うん」そしてリンホに抱きついた。「うん……」「な?だろ」リンホはモニコの頭を撫でた。「休憩終わり。行くか」そして大義そうに立ち上がった。速度によろめきながら、モニコの手を取り、抱きかかえる。モニコはリンホの不規則な心音を聞いていた。 38

2024-03-24 00:24:10
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

この後どうする?そんな事をリンホに訊く必要はなかった。答えなど、あるわけがない。訊く勇気もなかった。訊けば現実になる。現実にならなくていい。モニコはそう思った。「行く」モニコは言った。「一緒に行く……」「はははっ!」リンホは声をあげて笑った。そして、モニコを抱え、跳んだ。 39

2024-03-24 00:29:22
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

カーブする環状線の電車から、雑居ビルの屋上をめがけ、二人は空を斜めに落ちる。陶酔、高揚、そして無視できぬ未来への疑念。不確かさ。不確かさ。整理できぬまま、整理せぬまま、モニコはリンホに、強くしがみついた。 40

2024-03-24 00:33:05
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【スクールガール・アサシン・サイバー・マッドネス】終

2024-03-24 00:33:28