ナイト・オブ・ヘクセンナハト ＃２

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

だが彼女の奥ゆかしい態度は、村人たちには刺激が足りぬとみえた。ウィッチファインダーは小さく舌打ちすると、彼女の耳元で囁いた。「……やけにしおらしいが、まさか本当にニンジャなのかね？違うだろう？ならばもう少し抵抗するなり、命乞いをするなりして貰わねば……張り合いがないのだよ」　21

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「ンンッ……？」フェリシアが顔を上げた。「賢そうな目をしているな。他の連中とは大違いだ。そら、これが何かわかるかね……？筒状の、無慈悲な、爆発を引き起こすもの……ダイナマイトだよ」ウィッチファインダーは、後ろに縛られた彼女の両手首の辺りに、起爆装置付ダイナマイトを押し込んだ。　22

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それから自らのコートの胸元を開くと、彼女にだけ分かるように、その遠隔起爆スイッチを取り出して見せた。「これで解ったかね？君に恨みは無いが、死んでもらう。この村はニンジャの犠牲を求めているからだ」おお……ナムサン！これこそがウィッチファインダー一味の神秘の御技の正体であった！　23

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仮に処刑された者がニンジャならば、自ずと爆発四散する。そして仮にニンジャでなかったならば……ウィッチファインダーが密かに起爆ボタンを押す！この完璧なる二段構えの理論構築により、ニンジャ狩りの犠牲者は必ずや爆発四散の運命を遂げていたのだ。ほぼ全ての場合において、後者の方法で！　24

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「君の華々しき爆発四散が、さながら花火めいて、この村に渦巻く数々のネガティブエネルギーを浄化してくれるであろう……。そして我々の懐には、莫大なニンジャ狩りの報奨金がおさまるという寸法……！」「ンンンンーーーーッ？！」聡きフェリシアは、いまや全てを理解していた！　25

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これは爆発四散というニンジャの性質を利用した、卑劣なトリックなのだ。だが異常熱狂と暗闇の中、この狡猾な論理トリックを見破れる村人など皆無であった。それどころか村人らは、自らの暴虐性を獣めいて曝け出し、もはやニンジャの爆発四散を見ねば暴動を起こしかねぬほどの興奮すら見せていた！　26

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「ンーーーッ！ンンーーーーッ！」フェリシアは口惜しさで涙を浮かべ、身を捩った。『私はニンジャではない。あなた方は騙されています、このペテン師に金を騙し取られようとしているだけなのです！』と、村人らに訴えるべく。だが猿轡を噛まされたフェリシアの声は、村人らには届かぬ！　27

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「アハハハハ……そうそう、それでいいのよ……！」女奴隷ニンジャが、フェリシアの体を荒縄で締め上げた。フェリシアのバストは豊満だ。女奴隷ニンジャは彼女の頬の涙をぺろりと舐めてから、ウィッチファインダーの側へと向かった。爆発に備え、処刑台の周囲には誰一人もいない状態となった。　28

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「「「コ！ロ！セ！！　コ！ロ！セ！！」」」村人たちは苦しむフェリシアを見て嗜虐心を煽られ、さらに興奮していった。中には衝動を抑えきれず、石や松明を投げつける村人もいたが、ウィッチファインダーはこれを強い口調で諫めた。「やめたまえ諸君！ニンジャの呪いを受けて死にたいのかね！？」　29

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「ニンジャの処刑は大変危険だ！それゆえニンジャが行うべきなのだ！」そう言うと、ウィッチファインダーはもう一人の助手である男奴隷ニンジャに呼びかけた。そのニンジャはマントを脱ぎ、鍛えられた赤褐色の上半身をあらわにする。そして両手に何本ものクナイ・ダートを持ち、村人らに誇示した。　30

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「ハイ！ハイ！ハイヤアアーーーーッ！」男奴隷ニンジャはカラテシャウトを発し、ジャグリングを始めた。神秘のジツか、あるいは燃料の着火か、クナイは真っ赤な炎を纏い始めた。群衆の興奮はいまや最高潮に達していた。中には恐ろしさに震え上がり、子供らと家に帰って鍵を閉める村人もいた。　31

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「ンンンンーーッ！」フェリシアは死に物狂いで不正を訴え続けた。「トドメヲサセー！」ウィッチファインダーが命令を下した。奴隷ニンジャが、燃え盛るクナイを投じた。まさにその時であった。踏み躙られた花摘みのバスケットから、一枚のスリケンが猛回転とともに飛び出し、クナイを弾いたのは。　32

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表面に美しい植物文様を篆刻されたそのスリケンは、いまや怒れる鬼火か小妖精の如く、薄緑色のオーラを放ち、ブンブンと唸りながら閃いてフェリシアの周囲を飛び回った。そして彼女を護るように、次のクナイを、さらに次のクナイをも弾き落としたのだ！　33

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「ムウッ！？」ウィッチファインダーは異常を察した。そして過たず、ダイナマイトの遠隔起爆ボタンを押した。だが遅かった。空飛ぶスリケンはすでに、フェリシアを縛る縄を切り裂いて、彼女を自由にしていたのだ。いまやフェリシアの手には、爆発寸前のダイナマイトと怒りが握られていた。　34

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「死ねーーーーッ！」フェリシアは死に物狂いでダイナマイトを投擲した。ダイナマイトはウィッチファインダーには届かず、ニンジャ狩りに熱狂する村人たちの頭上で起爆し、昼の太陽のように眩しい爆発を遂げた。　35

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フェリシアの処刑を待ち望んでいた１ダース近い村人が、壊れた縫いぐるみの玩具めいてバラバラになり、その四肢や生首を飛び散らせた。水風船が弾けたように、真っ赤な血が辺りを染め上げた。凄まじい混乱がヘクセンナハト村を支配した。悲鳴と怒号とカラテシャウトが、ほうぼうでぶつかり合った。　36

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異常興奮した村人らが松明や農具を振り上げ、フェリシアを呪うように叫んだ。そして殺到した。フェリシアは絶叫した。空飛ぶスリケンが彼女を護り、襲い来る村人たちを切り裂いた。「アイエエエエエ！ニンジャだ！ニンジャが出たぞ！」村人がそう叫んだ。彼はフェリシアではなく、森を指差していた。37

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そこには、大鹿に跨がるニンジャがいた。カームであった。片手を突き出して念ずるカームの両眼は薄緑色に輝き、その閃くような手の動きは、フェリシアの周囲を飛び回るスリケンと完璧に同期していた。　38

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フェリシアと恋に落ち、また彼女の身を案じたカームは、自らのスリケンに強力なジツを籠め、魔除けとして彼女に渡していたのである。　39

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【ナイト・オブ・ヘクセンナハト】#2終わり　最終セクションである #3へ続く