日比谷公会堂との「合築」ビル、東京市政会館。ゴシックをモダンに解釈した傑作近代建築を見学してきました。

タイル、テラコッタ、見所いっぱい。しかして、目当ての泰山製陶所製品はいずこ…?
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加藤郁美 @katoikumi

市政会館の見学をさせていただきました。1929年(昭和4)竣工、設計は大隈講堂・栃木県庁舎の佐藤功一。「ゴシック様式をモダンにアレンジした束ね柱」が建物の荘厳な垂直性を形作っていますが、黄色いテラコッタがつくる水平線が装飾性を付加して印象的。 pic.twitter.com/HhzYrYWSUY

2024-03-25 08:25:28
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加藤郁美 @katoikumi

…が!この黄色いテラコッタの水平線が窓台(窓枠の下部分)をそのまま延長したデザインであることに気が付いて感動。下面に溝を掘って水はけをよくする窓台テラコッタや役物タイルの実用的仕様を、佐藤功一は二重の水平線として装飾的に使っているんですね。ゴシック過ぎず、モダン過ぎずの均衡が見事 pic.twitter.com/sv2aP4PgfZ x.com/katoikumi/stat…

2024-03-25 08:44:09
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加藤郁美 @katoikumi

屋上では外装タイルやテラコッタを間近で見ることが出来ました。見学前申し込みの際、ご担当の中嶌さんに特にタイルに興味があることをお話ししていましたら、すばらしい資料を揃えてくださって大変有り難いです✨それらによりテラコッタは伊賀窯業、内外のタイルは知多武豊の日本陶業で焼かれたと判明 pic.twitter.com/VNVI8UHzPr

2024-03-25 14:06:47
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加藤郁美 @katoikumi

テラコッタ、意外と無造作にボコッとくっつけられてました😅近代建築の現役テラコッタをこんなに間近に見る機会はなかなか無いですね…いただいた資料に佐藤功一はこの時の伊賀窯業テラコッタに一部不満があったようで、大阪陶業に接触があり以後、日清生命、富山房など大阪陶業のテラコッタを使用の由 pic.twitter.com/XYMRaan8S3

2024-03-25 14:10:42
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加藤郁美 @katoikumi

内外装のタイル製造担当の日本陶業の深谷氏回想では、佐藤功一は色合いを決めるため武豊工場まで出向き、10数種の見本張りを角度を変え高さを変え検討、「そこで決まるのかと思っていますと、何とも言われずにその晩は静かにお寝になった。翌日再び工場へ来られて一日中同じ事を繰り返しておられる」と pic.twitter.com/uLbP7Yh6cf

2024-03-25 14:13:55
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加藤郁美 @katoikumi

佐藤功一は色合い決定で精根尽き果て、帰郷後2日寝込んじゃったとか😅市政会館1階エレベーターホールの明るく清明な水色の釉薬の布目タイルもすばらしいです。これが見たかったのでした! pic.twitter.com/8dlx8Ja3tY

2024-03-25 14:45:54
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加藤郁美 @katoikumi

泰山製陶所の作目に市政調査会館と記されており、内部の布目かと思っていたのですが、日本陶業が内外タイルを製造したと…実物を見ても土練機抽出っぽいうねり、ワイルドな釉薬がけで、泰山製陶所とはちょっと思えない…しかし昭和4年に知多武豊でこの釉掛けやったというのも常滑タイル史の常識覆す話 pic.twitter.com/1at3CXxqUE

2024-03-25 15:00:52
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加藤郁美 @katoikumi

写真で見てたときは、一部保存公開されている講堂のレリーフがもしかしてテラコッタで泰山製陶所だったりする?とも考えていたのですが、漆喰っぽいし、図柄がゆるいような…結局、泰山製陶所の製品とおぼしきものは見つからず、伊奈家系列の日本陶業がこんな施釉タイルを知多でS4に⁈という謎だけが😆 pic.twitter.com/wRptkSi6lE

2024-03-25 15:07:08
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加藤郁美 @katoikumi

文献まとめますと、仕様書で社名明記されているのはテラコッタの伊賀窯業のみ。INAX『日本のタイル工業史』に「茶褐色タイル(湿式無釉筋面二丁掛-日陶」貼りとす」。日本陶業社員エッセイに「内部および外部のタイル」を製造したとある。泰山製陶所作目に「市政調査会館」。 pic.twitter.com/F0nrEZpdCY

2024-03-25 15:16:15
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加藤郁美 @katoikumi

しかして見学レクチャーでいちばん衝撃的だったのは「建造時の正面階段は4段、現在は周囲地盤沈下により8段です」というお話😳日比谷公園の地盤が軟弱で、18mの松杭2200本を打ち込んで、その上に鉄筋コンクリートの筏組を行ったそうです。基礎工事すごいというか、日比谷公園周辺ダイジョブかというか pic.twitter.com/jn11CBQcME

2024-03-25 15:43:49
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加藤郁美 @katoikumi

市政会館のグループ見学お申し込みはこちらです😊 timr.or.jp/office/visit.h… 建物が素晴らしいのはもちろん、ゆきとどいたレクチャーや資料で迎えてくださいますので、ぜひお友達とお訪ねください!

2024-03-25 15:48:45
加藤郁美 @katoikumi

市政会館のエレベーターの水色タイル、いくら資料読み込んでも、やっぱり謎😮『建築雑誌』や『工事仕様書』に外装「茶褐色」タイルのことしか記述なく、唯一「内部及外部タイル」を受注したという日本陶業社長・深谷辰次郎随想にも、外装の素焼き茶褐色縦筋タイルの色目に苦労したことしか書いてない。 pic.twitter.com/IoNQIfdoem

2024-04-01 13:29:05
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加藤郁美 @katoikumi

常滑の日本陶業がこの市政会館(1929)の水色施釉タイルをやったなら、常滑タイル史がガラッと変わるというのがひっかかるポイントなんですが、1931年の日本陶業広告を見ても、やっぱり内装用の施釉タイル製造してた様子がない。素地が常滑土練機ぽくて、常滑では見かけぬ釉薬が掛かった謎タイル… pic.twitter.com/CycGMiF8aN x.com/katoikumi/stat…

2024-04-01 13:52:05
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加藤郁美 @katoikumi

常滑の日本陶業広告にある「タペストリー・タイル」、これはどんなタイルだろう、たしか杉江製陶所でも作っていた…と杉江製陶所カタログを見たら、湿式成形の無釉タイルでした。杉江製陶所ってほんと合理的に説明してくれる面白い会社だなあ、つくづく😅 pic.twitter.com/wwI0dKI4Ut

2024-04-01 13:56:52
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加藤郁美 @katoikumi

INAX『日本タイル工業史』を見ていたら、「日比谷の×会館」現場監督のタイル検品が厳しすぎることに対して「これらは○市あたりで出来る低火度のペラペラな化粧タイルと千何百度八番九番という窯の洗礼を受けたタイルを一緒クチャにしていた」とブチ切れてる昭和8年の記事があった😅常滑の窯焼きさん?

2024-03-26 18:59:02
加藤郁美 @katoikumi

市政会館のテラコッタを納品した伊賀窯業の社長、田中善助口演をまとめた『鉄城翁伝』なる本があることがわかり(ネットすごい😆)、挿図からヴォーリズ設計、京都・東華菜館(1926/T15)のテラコッタが伊賀窯業とわかりました(INAX『日本のタイル工業』でも確認出来)。 pic.twitter.com/4Ni4JE3LOw

2024-04-04 17:28:26
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加藤郁美 @katoikumi

こちらのブログさんによると、テラコッタの伊賀窯業社長・田中善助は「巌倉水電・伊賀鉄道・朝熊登山鉄道等の創始、さらには榊原温泉の復興など、様々な三重県の事業に携わった実業家」で、「伊賀の電気王」「三重の奇人」「鉄城翁」と様々な異名をもつ大人物であったようです bunka.pref.mie.lg.jp/rekishi/kenshi…

2024-04-04 17:36:36
加藤郁美 @katoikumi

伊賀窯業のテラコッタは、三重の「鉄道王」田中善助の数ある事業のひとつで、『鉄城翁伝』には「35万円損をした…これが私が手を染めた事業中唯一の失敗であります」とあり(トホホ)、昭和6、7年くらいまではテラコッタ製造をつづけたものの、その後、耐火煉瓦の製造に転業したとのことです。 x.com/katoikumi/stat…

2024-04-04 17:48:16
加藤郁美 @katoikumi

テラコッタが儲からない理由として伊賀窯業の田中善助が上げるのが①建築技師が陶器の妙味を理解せず、色が揃わぬと不合格を乱発②「芸術を誇りとする建築技術者は各々設計意匠を異にして他人の用いた型は使わず、いかほどに適当なストック品があっても絶対に用いませぬ」 x.com/katoikumi/stat…

2024-04-04 19:24:41
加藤郁美 @katoikumi

市政会館の設計者・佐藤功一は、外装の無釉筋面タイルを窯内温度差にによる色のゆらぎを許容したランダム貼りにしているし、テラコッタの水平線が窓台の延長になっているのも、型数を抑えて、テラコッタ代を抑えるという費用的理由もあったかも…それがデザイン的なシンプルさを生んだのかも… pic.twitter.com/JV1IajKuO1

2024-04-04 19:40:28
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加藤郁美 @katoikumi

とにかく、伊賀窯業テラコッタは創業3年目にして京都・東華菜館(1926/T15)ほどのレベルであったと。ライバル会社・大阪陶業社員にけなされてた東京市政会館(1929/S4)の頃は、もう儲からなくてやる気無い時期だったのかも。(ライバル会社の発言だけ読んで決めつけたら駄目ですね😅反省)。 x.com/katoikumi/stat…

2024-04-04 20:34:45
加藤郁美 @katoikumi

…ちょっとまって。伊賀窯業の「関西一手販売所/改正合資会社」の昭和6年広告見つけちゃったら、「大正9年より」「最近設備を拡張し斬新なる機械と技術を応用し…」。田中善助社長の本と年代ズレズレ😆タイル業界あるある…。 pic.twitter.com/8IU194ZuTb

2024-04-04 21:26:53
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