「私の観測範囲で語る話になりますが」から始まる”なろうの辺境伯議論の歴史”の読み応えがすごい

ハーメルンのルシエド太郎 @HamelnFilgaia

なろうの辺境伯議論の歴史、私の観測範囲で語る話になっちゃいますがこんな感じな気がしますね 2016年→「なろうは辺境伯が軽んじられてる」論がスコッパーサイトコメントとかで登場する。ただし無視されたり「作品によるだろ」と言われる事が多かった

ハーメルンのルシエド太郎 @HamelnFilgaia

2017年→月夜涙先生がおそらく作家としては初めて「なろうの悪役令嬢ものは辺境伯を身分が低いものと扱いがちだよね」と言及する（この時期はまだなろう全体の話とされてない）（この世代の悪役令嬢ものは今の世代の悪役令嬢ものとは微妙に離れている）

ハーメルンのルシエド太郎 @HamelnFilgaia

2018年→この話題が他読者の目に触れるようになり「なろうの辺境伯概念は間違ってる」という拡大がなされ「なろうで辺境伯概念間違ってる作品とかいくらもないだろ」という反論が発生するようになり、この話題は一旦沈静化する

ハーメルンのルシエド太郎 @HamelnFilgaia

2019年→2017年にパイオニアが登場した『追放もの』が2018年に続いて大流行し、「中央で追放された主人公が辺境で多大な功績と名声を得る」という文法と合致する『辺境の有力者』として辺境伯などが持ち上げられる事例が増加

ハーメルンのルシエド太郎 @HamelnFilgaia

2020年→悪役令嬢ブームが本格化。外部サイトでなろうの看板ジャンルのように扱われる、はめふらのアニメ化などで一気に加熱する。この時点で増えた新規は2013年から連載開始した大人気作品の謙虚堅実の影響を受けた悪役令嬢作品群とは断絶しているものも多く、

ハーメルンのルシエド太郎 @HamelnFilgaia

2017年に言及された悪役令嬢作品群とは離れたクラスタも多いことには注意が必要。これらの作品群が「実家を追放された（あるいは婚約破棄された）主人公を辺境伯の美麗貴族が拾う」「時には王族相手でもざまぁする」といった初手文法やその変形を多用していくことになる

ハーメルンのルシエド太郎 @HamelnFilgaia

2021年～2022年→なろうの異世界ファンタジー天下から異世界恋愛天下への移行が完了する。この頃には「田舎者辺境女がおもしれー女として中央貴族様に見初められる」「辺境伯はイケメンがデフォ」「辺境伯とは婚約で出会うもの」などのパターンがスタンダードイメージとして認知される

ハーメルンのルシエド太郎 @HamelnFilgaia

2023年→匿名掲示板で「役立たずと言われたので、わたしの家は独立します！」の辺境伯令嬢主人公婚約シーンが話題になり、一日に何度もスレが立つ日もあり、『なろう作者は知らんだろうけど辺境伯は大きな力を持っていて当たり前』というトークが流行る（外部サイトにもまとめられる） pic.twitter.com/aFX8ewGx7F

拡大

ハーメルンのルシエド太郎 @HamelnFilgaia

ただしこの作品はこのページの次のページから「王家が特権を与えてる国境の守護者になんでこんな仕打ちしてんだ…」「聖女もおかわいそうに」と貴族達は皆主人公側に同情的で、「この騒動の裏で誰が得をした？」「殿下はあなたを捨てて選んだあの女、殿下は嫌ってたはずですが」という話になり

ハーメルンのルシエド太郎 @HamelnFilgaia

その辺の謎をフックにして読者を引き込みつつポップで深く考えず読む系の軽めの話を展開してくタイプの作品なので、実際には辺境伯軽視作品ではないっていうのは留意しておきたいところ

ハーメルンのルシエド太郎 @HamelnFilgaia

こういう経緯があるので、「なろうでは辺境伯が軽視されてる」という話は、その発言者が「冒頭で辺境伯令嬢の主人公を婚約破棄した王子様が辺境伯を軽んじた発言をしていた」（その後ざまぁされる）を「なろうでは辺境伯が軽視されてる」と解釈しただけというパターンもあったりするので注意

ハーメルンのルシエド太郎 @HamelnFilgaia

あとまあ個人的な話なんですけど、今のなろうの話をしてるはずなのに辺境伯トークで史実ヨーロッパに触れてる人が多いのが少し気になったかも （男性向けでも女性向けでも）なろうの各作品で辺境伯が戦う想定の敵って隣国より野生の魔物の方が多いよね……って思うので

ハーメルンのルシエド太郎 @HamelnFilgaia

でもこういう話するとまず「あなたの脳内のヨーロッパイメージと違って異世界ファンタジーは昔から広大な土地にぽつんと国一つあったりするんですよ」「国と国の間に魔物が蔓延る広大な土地がある方が多いんですよ」「異世界ファンタジーでは国境＝辺境じゃないんですよ」って説明からしないといけない

ハーメルンのルシエド太郎 @HamelnFilgaia

どっちかというと（なろうに限らず）異世界ファンタジーってのは『辺境＝魔物の大量発生地』とかのが比較的多くて 貧乏なのもいれば、魔物の売買で儲かってる辺境もあって…… この文法だと辺境伯は害獣駆除によって存在感を示してるので、農協や猟友会の属性がやや強くなるんですよね

ハーメルンのルシエド太郎 @HamelnFilgaia

軽い気持ちで連ツイして「あっここに誤字あるけどまあいいか」と思った後にそのツイートがジワジワ伸びて「ぐえええええ」とゴロゴロしてるのが今の私だよ

三田誠＠Makoto Sanda @makoto_sanda

す、すっごくちゃんとしてる……ジャンル論は本来これぐらい読み込まないといけないのですが、僕もなかなかできていません。反省。 x.com/HamelnFilgaia/…

藤原祐 @fujiwarayu

こういうのちゃんとまとめてる人あんまりいない気がするのでたいへん興味深い。特にTwitterとかでは「なんとなく漠然と抱いてる『なろう小説』のイメージ」だけで語られちゃいがちだし……。 x.com/hamelnfilgaia/…

すけるとん @KAWAII_SixStaR

時系列、状況の変遷ともに私の観測範囲での話と一致しますね めちゃくちゃわかりやすくて実例(作品名)も交えた説得力のある立論で凄い x.com/HamelnFilgaia/…

シェアウォーター@薄味 @shinsaburouta

改めてこうしてまとめてもらうと、なろうの辺境伯って、それほど軽んじられてはいない気がしますね まあ、作品による差はあるでしょうけど、特筆すらほど軽んじてはいなそう x.com/HamelnFilgaia/…

たかのえ @takatakaya

このツリーはありがたい。 作品内の登場人物が軽視しているのは、作品として軽視している訳ではないのですが、そのあたりごっちゃになってますね。 x.com/HamelnFilgaia/…

バルーサビヨーネ@くま @moonhuntkuma1

論文書かれてて草 x.com/hamelnfilgaia/…