- rouillewrite
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船の所々にカレンダーがあるため、探偵たちはそれを見て現在の日付を把握していた。 カレンダーを見て確認するだけの者、手日記を付けている者や、部屋のカレンダーにバツ印をつけて日付を数える者まで様々だ。
2024-03-24 21:06:14…昨晩の裁判から一夜明けて、翌日は雨であった。 甲板に出ることも出来ず、退屈そうな少女たちは全員がゲームルームに集まっていると聞いていた。 探偵の何人かは、少女たちを見守るためにそこにいるという。
2024-03-24 21:07:53そんな話を人伝で聞いたことを思い返しながら、アイディオは廊下を歩く。目的はそのゲームルームにいるある探偵だ。 「おい」と聞こえる声で呼びかけると、彼はすぐにこちらに近づいてきた。
2024-03-24 21:08:28明るい声でそう問いかけてくるのは、オースティン。今回の目的の人物だ。 アイディオはくいっと首を廊下の方にやり、「ちょっと来い」とジェスチャーをする。 オースティンはなにやら迷っているようだったが、エリクサーがほかの子供たちと遊んでいる様子を見て、素直に彼の言葉に従った。
2024-03-24 21:09:35まさか彼から呼び出されるとは思ってもいなかった。質問内容も突拍子もない……わけではないが、彼らしからぬものだったため驚いた。 しかしすぐに切り替え、「あ…あぁ、」と頷く。そしてベストの内ポケットから、常に持ち歩いている手帳を彼へと見せた。
2024-03-24 21:12:32ペラペラと手帳を捲るアイディオ。じっとそれを見る紫色の瞳が、いつもより忙しなく動くを見つめていた。 手帳の中は、10年前の新聞の切り抜きやら彼のメモ書きやらが記されていた。
2024-03-24 21:13:32「……大方知ってるもんと一緒だな。アンタがこの船に乗ったのは、想い人とやらの手がかりを探しにって話だったよな。スカーレット社とあの事件の繋がりがハッキリ分かりゃいいが……」
2024-03-24 21:14:10「アンタも真相が知りてぇだろ。俺に手ぇ貸せよ、生き残ったんだから役に立て」 「……分かった。なら…図書室にでも行ってみないか?夫人が言ってた新聞記事にまだ目を通せてないんだ」 「あぁ」
2024-03-24 21:15:00想い人、という言葉に些か眉を寄せたが、彼の言う通りである。オースティンが小さくそう提案すると、アイディオは短く返事して顔を逸した。 歩きだす方角は下。図書室は3階だ、ここから少し距離がある。
2024-03-24 21:15:41正直、オースティン自身は何を話したらよいのやらと言った心持ちだった。あの日のことも、裁判の日のこともあって、話しづらいというのが本音だ。 しかし協力を持ち掛けてくれた相手に黙ったままというのもどうなのだろう。
2024-03-24 21:18:15まさか、ここにきて自分の体調を心配されるとは思わなかった。 アイディオは思わず素の声が出て、眉間に皺を寄せる。しかしすぐに持ち直し、視線を前への方へと戻した。
2024-03-24 21:19:47「…、……アンタに心配されなくても平気だ。あの日より最悪な気分にはそうそうならねぇよ」 「そうか、そんならいいんだ。あの後ずっと気になってたから…良かったよ」
2024-03-24 21:20:08