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【毎日創作小話を書きます】小説の者。植物が好き。創作ジャンルは怪談・SF・ファンタジーです。ノベルアップ+の第一回小説賞入賞者。/ ノベルアップ: novelup.plus/user/956675174…
知り合いがおにぎり屋をはじめると言い出したのでいつも通り勝手にしろと言ったら勝手にした。したんだから仕方ない。 その知り合いというのは、すこし前には唐揚げ屋をはじめていて、その前には変な名前の食パン屋をやっていた。その前にはタピオカ屋をやっていた。 仮にAとしよう。 (つづく)
2024-04-11 13:20:45その手の流行りの食い物屋というのは儲かるうちにわーっとやって撤退するのがうまいやり方らしい。じゃあAはそれができるかと言うとそうではない。 一方でまったく儲からず、太るのは大元のコンサルばかりというのもよくある話だ。身を持ち崩す人も多いらしい。じゃあAはそっちかと言うと違う。
2024-04-11 13:23:42Aのすごいところは、前述のとおり売り物をコロコロ変えて浮き沈みの激しいはずの商売をしているはずなのに、毎回、なんか儲かりも損もしないところで終わることだ。 そしてAについたあだ名が「両津」である。とにかく毎回あの漫画みたいに状況がリセットするんだからしょうがない。
2024-04-11 13:26:53そんなAはじゃあバカにされているかというと、あんがいそうでもない。どちらかというと尊敬されている。 というのは、Aの先ほどの性質から、Aが情報を耳に入れたあたりで初めて、Aがやめようか迷い始めるあたりで撤退するとめちゃくちゃ儲かるのだ。そんなわけで、Aのまわりは金持ちが増えていく。
2024-04-11 13:29:37まあ、ちょっとした福の神みたいな扱いだ。炭鉱のカナリア扱いだとも言えるが……。世の中にはそういう才能の持ち主がいるのだろう。 そういえば、福助人形のモデルになった人間も、彼が好む店はなぜか流行ったというのがいわれらしい。 さて、そんなわけで、俺たちはAの無自覚な先読みをけっこう
2024-04-11 13:34:19当てにしていたのだが、そんなAがあるとき、妙なパンフレットを持ってきた。おっ、また新情報か? と思いつつ話を聞くと、それは仏花を売るスタンドみたいなものだった。 「あのへんの地域でこれをはじめたら、すごく儲かるんじゃないかって思うんだけど、どうしようかなあ。うーん」 Aが持って
2024-04-11 13:36:54きたパンフレットは、要するに墓場とかの近くで仏花売り場みたいなものをやって、細かく稼ぐというような商売だった。儲かりそうに思えないし、これまでのAが好んだのは流行りの珍しい食い物ばかりだった。 そしてAは、なぜかある地域での出店にやたらとこだわった。よくわからないが、もしこれまで
2024-04-11 13:39:40のAの「予言」的なものが当てはまるとしたら、要するに近い将来、Aのこだわったエリアだけ、仏花がそれこそ飛ぶように売れるということになるはずだ。タピオカやら白い鯛焼きの全盛期ぐらいに。 その話を知った俺たちは、真剣に出店を検討している。でも、やらないかもしれない。 Aは少しづつ
2024-04-11 13:42:52この話に、前向きになっている。つまりそのXデーは少しずつ近づいている。仏花が飛ぶように売れる何かが、そこで起こるのだ。 (おわり)
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