【妖怪】牛鬼について

主に西日本、近畿地方~九州にかけて語られる妖怪・牛鬼について文献を基にして、おおよそ各地域ごとにまとめたリスト。 妖怪・牛鬼は伝承ごとに姿形や性質などが著しく異なるため、整理整頓の参考になれば幸いです。 ※デコレーションについて 赤…パターンの大別   青…パターン大別の中の小分け 続きを読む
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山陰地方~北九州(主に島根)(女性が赤ん坊を託し、その後に本性を表して襲ってくるタイプ)

アルム=バンド @Bredtn_1et

[パターン2]次に紹介するのは主に山陰地方から北九州に伝わるタイプ。例えば(1)島根県江津市浅利では、昔、地元の神官・森山玄蔵が釣りをしていると、海の上に赤ん坊を抱いた女性が現れ玄蔵の釣った魚を次々と所望した。この女は牛鬼が化けたものだと気付いた玄蔵は魚を与えながら自宅へ走った。

2012-01-01 01:17:21
アルム=バンド @Bredtn_1et

が、途中で追いつかれて赤ん坊を託されてしまう。赤ん坊は異常に重く、しかも玄蔵にしがみついて離れない。そこへ女が牛鬼の姿になって襲ってきた。ここで玄蔵の守り刀が鞘から抜けて飛んできて牛鬼の額に刺さり、事なきことを得たという

2012-01-01 01:17:31
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(『日本伝奇伝説大事典』、『妖怪事典』、『図説 地図とあらすじで読む 日本の妖怪伝説』)。

2012-01-01 01:17:33
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こうした「まず赤ん坊を抱いた女性の姿で現れて赤ん坊を託す。赤ん坊は異常に重く、身動きが取れなくなったところを牛鬼が襲う」というパターンでは、最初に現れた女性を「磯女」ないし「濡れ女」として語ることもあり、その場合では妖怪同士がタッグを組む、という共闘状態になっているため面白い。

2012-01-01 01:17:43
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先の江津市の説話も、場合によっては女性は「濡女」だといわれることがあるようだ(http://t.co/ZrxRyV5U Wikipedia - 濡女)。 ※江津市は石見地方に当たる

2012-01-01 01:17:51
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また、(2)島根県大田市の伝承では牛鬼から逃げ切ったら、牛鬼が「残念だ、残念だ」と言ったといい、その声は女の声であったという(Wikipedia, 濡女、『妖怪事典』)。

2012-01-01 01:17:58
アルム=バンド @Bredtn_1et

ちなみに、女性に化けているものの、水に映る姿は牛鬼のままなので、牛鬼を見破るには水面を見ると良い、といわれることもあるようだ。

2012-01-01 01:18:08
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(なお、磯女は単体では美女の上半身にぼやけた下半身、濡れ女は単体では人面蛇身の妖怪とされる。 http://t.co/3GpWRFDO Wikipedia - 磯女 / http://t.co/ZrxRyV5U Wikipedia - 濡女)

2012-01-01 01:18:48
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この他、(3)島根県大浜村波路浦では、温泉津(ゆのつ)湾から外一里ばかり、岸から一町のところで釣りをしていたら岸から「行こうか」という声が聞こえ、漁師が「おう、来たけりゃ来い」と答えたところ何かが水中に飛び込んだ。

2012-01-01 01:19:01
アルム=バンド @Bredtn_1et

牛鬼だと分かった漁師は必死に舟を漕いで家に戻ると、牛鬼が押し入ろうとして怒号をあげた。気丈な妻が焼火箸で目を突くと、出雲大社のお札の力もあって、牛鬼は咆哮を挙げながら退散した、という伝説もある(『日本民俗文化資料集成 8 妖怪』、『図説 日本未確認生物事典』)。

2012-01-01 01:19:05

『異説まちまち』、島根県ほか(青白い火の玉。蓑火・怪火のタイプ)

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[パターン3]次は牛でも鬼でもないバリエーション。『異説まちまち』巻四には、出雲国(現島根県北東部)のある場所の小さな橋では、雨が降り続いて湿気の多い夜に牛鬼が出るという。遭った人によればそれは白く光り、ひらひらと舞い蝶のようであるという。

2012-01-01 01:21:19
アルム=バンド @Bredtn_1et

いざ橋を渡ろうとすると光が全身にまとわりついて、手で払っても落ちない。近くの人家で囲炉裏に火をくべて服をあぶると、その光は消えてしまった、という話が載せられている(『随筆辞典 4奇談異聞編』、『妖怪事典』、『日本民俗文化資料集成 8 妖怪』)。

2012-01-01 01:21:21
アルム=バンド @Bredtn_1et

同様の怪火は鳥取県鳥取市や同県気高郡気高町地方でも伝えられるという(『妖怪事典』)。また、このタイプは滋賀県や新潟県でいう「蓑火」に類するものだといわれる(『妖怪事典』)。

2012-01-01 01:21:28
アルム=バンド @Bredtn_1et

『日本民俗文化資料集成 8 妖怪』に拠れば、新潟県の「ミノムシ」は小雨の降る夜などに火が」現れ、蓑の端っこにくっ付くという。払えば払うほど全身にまとわり付くが熱くはないという。信濃川流域ではこの話が多く、「ミノボシ」と呼ばれる、などとされる。

2012-01-01 01:21:33
アルム=バンド @Bredtn_1et

秋田県では晴れた寒い日の早天に蓑や被り物の端っこにくっ付いて光るものをミノムシと呼び、いくら払っても尽きないという(『日本民俗文化資料集成 8 妖怪』)。これらのミノムシも、先の牛鬼(というよりは蓑火)に近いと思われるので紹介。

2012-01-01 01:21:45

和歌山県(影を舐める、見ると病気になる、人を助けた、神として祀られた、などなど)

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[パターン4]続いては和歌山県周辺のパターン。和歌山県の牛鬼だけでも幾つかバリエーションがあり、その特徴を大別すると(1)「人の影を舐める」といわれる(2)その姿を見ると病気になる(3)人を助けたという伝承を持つ(4)その他、といった感じになるであろうか?

2012-01-01 01:29:03
アルム=バンド @Bredtn_1et

まず(1-1)和歌山県西牟婁(にしむろ)郡すざみ町の琴の滝に住む牛鬼は人の影を食べ、食べられた人は必ず死ぬ、という伝説がある。ただし、牛鬼は酒が大好物なので正月にお酒を供えると村人の影は食べなかった、といわれたりもする(『日本伝奇伝説大事典』)。

2012-01-01 01:29:10
アルム=バンド @Bredtn_1et

(1-2)西牟婁郡日置川(ひきがわ)町の日置川上流にある牛鬼滝では、昔釣りをしていた人が牛鬼に影を食べられたところ、真っ黒焦げになって死んだため、今でも人はそこで魚を獲らないという(『日本伝奇伝説大事典』)。

2012-01-01 01:29:16
アルム=バンド @Bredtn_1et

(2)に関する話としては、和歌山県熊野地方では一種の有蹄類といわれる牛鬼が伝えられ、山中でこれを見ると牛鬼は人を見つめて去らない。そのため、ついには人間の方が疲弊して死んでしまう、といわれる。これを「陰に飲まれる」といい、

2012-01-01 01:29:28
アルム=バンド @Bredtn_1et

こうなったときは「石は流れる、木の葉は沈む、牛は嘶き馬は吼ゆる」という逆さ事(実際とは逆のことを言う)を唱えると良いとされる(『日本民俗文化資料集成 8 妖怪』)。

2012-01-01 01:29:49
アルム=バンド @Bredtn_1et

あ、「陰に飲まれる」ではなくて「影に飲まれる」でした、誤字った。

2012-01-01 01:31:13
アルム=バンド @Bredtn_1et

(3)和歌山県西牟婁郡古座川町の三尾川谷の牛鬼淵では、昔、上田又之助という青年が淵の近くまで来たところ、美少女が現れて食べ物を所望したため弁当を分けた。それから二ヵ月後、又之助は濁流に飲まれ牛鬼淵まで流されると、例の少女が現れ牛鬼の姿になって彼を助けた。

2012-01-01 01:30:01