ジ・インターナショナル・ハンザイ・コンスピラシー #1

公式note https://diehardtales.com/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
0
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【このアカウントは】 ・サイバーパンクニンジャアクション小説「ニンジャスレイヤー」最新話が連載されています。ぜひフォローしてください! ・通し番号つきの投稿が連続している時は連載の最中です。このあと連載があります。

2024-04-18 21:33:04
拡大
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ニンジャスレイヤーの世界】 月が砕けてから10年。国家が崩壊し、暗黒メガコーポがしのぎを削る「力の時代」。市民は日夜、電子ネットワークに耽溺し、企業は血みどろの紛争を繰り返す。テックの中心は巨大都市「ネオサイタマ」。邪悪なる平安時代の支配者「ニンジャ」の暗躍する世界だ。

2024-04-18 21:37:57
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ニンジャとは】 平安時代をカラテで支配した半神的存在。彼らは謎のハラキリ儀式を行い、歴史から姿を消した。そして今。キンカク・テンプルに消えた彼らの魂は帰ってきた。降り注ぐニンジャソウルに憑依され、人間離れした力を得た者たち。彼らが、このマッポー時代における「ニンジャ」なのだ。

2024-04-18 21:42:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【ニンジャはどんな奴らなの?】 ・悪い。人智を越えた力を突然手に入れた者達は、精神のバランスを崩し、他者への共感性を失い、暴力を躊躇せず、欲望に忠実だ。(ただし何事にも例外は存在する) ・ニンジャを知る者はまだ少ない。急に彼らを目の当たりにした市民は激しい精神ショックを受ける。

2024-04-18 21:46:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【どんなテクノロジーがあるの?】 Y2Kの悲劇以降、いびつな歴史が形作られた。 電子ネットワークにアクセスする者達はしばしば首にLANソケットを増設し、UNIXに有線接続して速度の力を得る。 サイバネ(サイバネティクス)技術が発展しており、戦闘用義肢を用いる者達も数多い。

2024-04-18 21:49:50
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

【他に今おぼえておく事はある?】 特に無い。 今回も、登場するのはだいたい新規の人物ばかりです。 ……はじまります。

2024-04-18 21:52:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リロン・ケミカル社ヘッドオフィス、13階。通路は黒漆塗りで、等間隔に配置された鉢植えには蘭の花が植えられ、ゼンのアトモスフィアを生み出している。ゆるやかに湾曲した通路の形状すらも、そのゼンに寄与するべくデザインされたかのようだった。そのゼンを乱すように、彼女は全力疾走していた。 1

2024-04-18 21:57:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「クソが」カチグミ・サラリマンらしからぬ罵り声とともに、彼女は後方を見る。複数の足音。近づいてきている。前に向き直ると、再びのカーボン・フスマ・シャッターである。彼女は身を屈め、フスマの脇に設置された小さなパネルを覗き込んだ。『権限を確認ドスエ』電子音声。網膜認証が通った。 2

2024-04-18 22:00:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

殺人的速度で開いたフスマの奥へ、彼女は躊躇なく入り込む。まだ安心するには早過ぎる。再びの疾走を開始。既に「モノ」は得た。データは彼女の首で社員証と共に揺れている。後は生きて帰るだけ。いや、帰った後にはタフな交渉が待つわけだが……それは次に考える事だ。今はただ、生きて抜け出せ。 3

2024-04-18 22:04:29
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

通路が膨らみ、フスマは前方と左。右手には社内ドリンク自販機だ。『おいしいかな?疲れを吹き飛ばしませんか?』彼女の接近を感知し、無機質音声が発せられた。「イヤーッ!」KRASH!瞬間的怒りに駆られ、彼女は自販機を殴り壊した。前方フスマの奥に気配を感じる。ならば進路は左のフスマだ。 4

2024-04-18 22:06:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

再びの網膜認証。彼女は転がるようにオフィス・エリア「総務2課」へ入り込んだ。UNIXデッキが並び、一人作業していた残業サラリマンが彼女を見て仰天する。「アイエッ!?誰……」「あ、お気になさらず」彼女は愛想笑いをした。だが残業サラリマンは恐怖に顔を歪めていた。彼女は訝しんだ。 5

2024-04-18 22:11:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「何か……」答えを待つまでもなかった。彼女は残業サラリマンの網膜に映る鏡写しの自身を見た。モザイクめいた映像の乱れがコンマ数秒。そこには女性社員ではなく、黒い長髪、無精髭、黒い眼帯の男の姿がある。「チッ」彼女、否……彼は、舌打ちした。ジツの時間限界だ。 6

2024-04-18 22:14:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「アイエエエエ!」残業サラリマンが悲鳴をあげる。悲鳴が止まった。彼は残業サラリマンの首を掴み、力を込める。「アバババッ……」泡を吹き悶絶する残業サラリマンの網膜越し、彼は自身のジツが再び実を結ぶ事を確かめる。彼の姿は再び歪み、残業サラリマンと瓜二つになった。 7

2024-04-18 22:19:19
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ぐったりとなった哀れなサラリマンを床に捨てた1秒後、フスマが開き、銃を構えた武装社員が雪崩込んできた。「ムーブムーブムーブ!」「アイエエエ!」彼は残業サラリマンらしく、悲鳴を上げてホールドアップした。「一体何なんですか!やめてください!」 8

2024-04-18 22:21:45
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「産業スパイの侵入です」先頭の武装社員が銃を構えたまま言った。「IDを確認させてください。念の為、網膜認証……を……」武装社員は説明の途中で凍りついた。オフィス机の陰からはみ出す、倒れた社員の足が視界に入ったのだ。一瞬後、拳が武装社員の顔面を砕いていた。「アバーッ!」 9

2024-04-18 22:26:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ついてねえにも程があるぜ……」吹き飛ぶ血液と歯を避けながら、残業サラリマン姿の彼は毒づいた。もうおわかりだろう。この逃走者は、ニンジャである。ニンジャは象徴的な名を持つ。彼の場合、その名はペイルシーガルだ。「敵だ……アバーッ!」二人目にチョップ突きを打ち込み、絶命させる。 10

2024-04-18 22:29:04
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ムーブムーブ!」三人目、四人目!BLAMBLAMBLAM!発砲!マズルフラッシュが閃くなか、ペイルシーガルは上に飛び、天井を蹴った。空中回し蹴りが三人目の首を刎ね飛ばし、身を捻った二段蹴りが四人目を襲う!四人目は、「イヤーッ!」蹴りを受けた!そのまま、掴んだ!「何ッ……」「イヤーッ!」 11

2024-04-18 22:31:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

KRAAASH!ペイルシーガルはUNIXデスクに叩きつけられた。撒き散らされるオフィス用紙の吹雪のなか、ペイルシーガルは横に転がり、追撃の肘落としを回避した。そのままバック転を二度打ち、着地と同時にオジギした。「ドーモ。ペイルシーガルです」アイサツである。乱闘の最中に、何故? 12

2024-04-18 22:33:27
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

なぜなら……「ドーモ。ペイルシーガル=サン」見よ。対手もアイサツに応え、オジギを返した。「ノンリニアです」彼らはアイサツをかわした。なぜなら、この武装社員もまた、ニンジャだからだ。となれば、イクサにおいてもアイサツは絶対の礼儀作法。古事記にも書かれている。 13

2024-04-18 22:39:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「その目」ペイルシーガルは唸るように指摘した。ノンリニアの双眸は不可思議な色彩を帯びて脈打っている。「先程、俺のジツが見咎められたのが解せなかったが、合点がいった。お前が非ニンジャのクズに混じって警戒していたか。何らかの見破りのジツというわけだな」「然りだ。盗っ人めが」 14

2024-04-18 22:42:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「最悪の相性だな」ペイルシーガルは自嘲的に笑った。「思えば今日は朝からツイていなかった。TVをつければ最初に目にしたのはミチグラ・キトミの間抜け顔。デリバリーのスシにはワサビが忘れられていた」「それは不幸だったな」ノンリニアは応じた。「だが、ショーユ抜きよりはマシだろう」 15

2024-04-18 22:46:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ワサビだのショーユだのはどうでもいい」ペイルシーガルは後ずさった。「ツイていないのはな、ノンリニア=サン。白状すると、俺はカラテがさほど得意ではない……」「その真偽を今から確かめてやる」ノンリニアはカラテを構え……ペイルシーガルの歪んだ笑みに、拳が叩き込まれた。 16

2024-04-18 22:49:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「イヤーッ!」「グワーッ!」カラテシャウトと悲鳴がオフィスに反響し、ペイルシーガルは背中から壁に叩きつけられた。神棚に飾られた「定時退社」のショドーが落下し、粉々に砕けた。ノンリニアが地を蹴る。「イヤーッ!」「イヤーッ!」突進しながらの蹴りを、ペイルシーガルは横に転がり躱す。17

2024-04-18 22:52:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

起き上がると、彼はもはや残業サラリマンの姿を維持できておらず、眼帯姿の正体をあらわしていた。微妙な状況だ。これでフスマを網膜認証する事ができなくなった。いや、できたとて、敵対的なニンジャと争いながら、パネルに間抜けに顔を近づける暇などない……「何?」彼はノンリニアの横を見た。 18

2024-04-18 22:55:24