工房径ついのべ集 2011年7月

7月はついのべが生まれた記念日がありました。 ついのべの日は頭文字赤、ついのべ記念日は頭文字黄にしています。計30作。
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工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 麦わら帽子のつば越しに見つめられると夢のよう。初めてのデート、僕は君と連れだって海へ。砂浜で手招きする君に首を振る。走れないんだ、バスケットに君の作ったランチが入っているから。君が大きな声で僕の名を呼び、途端感じるリアリティ。ああ、本当に海に来ているんだ、君と。

2011-07-01 05:55:16
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 夏の日の木陰で君を見つけた。無防備に居眠りしてたんだ、子供みたいに鼻の頭にうっすら汗かいて。そのうちにわか雨が降りその音で君は目を覚ました。見上げたその目が綺麗で。スコールみたいな雨は僕と君だけを樹の下に取り残した。神様の粋な相合い傘。僕は君に恋をした。

2011-07-02 16:17:45
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 日曜の朝。カフェで朝食を摂りながら「何処行こうか」そう訊くと君はえへへと笑う。珈琲カップ越しに見る君の瞳は朝の光に栗色に透けて。僕は右手にサンドイッチ、左手で君の右手を握る。自分がこんなことをする男になるとは思わなかった。ああ、決まらない。何処行こう。

2011-07-03 08:34:41
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 君が好き。突然荒唐無稽な事を言う君が好き。ハワイアンがかかるとゆらゆら踊り出す君が好き。休日「出掛けようか」と言うと、散歩を待ってた犬みたいにきらきら目を輝かせて。僕の車のオーディオから思い出の曲がかかるとそっと手を触ってくる、積極的ながら慎ましやかな君が好き。

2011-07-04 18:15:11
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 夏休みの図書館。よく一緒になる級友の彼からゲームの提案。指定の本に挟んだメモを見て声を出したら負け。昨日彼が書いた、犬をプールに入れた話はつい吹き出してしまった。今日こそは、とメモを開いて「えっ!」「はい、負け」背後の彼がにやり。「君が好きだ」と書いてあった。

2011-07-06 14:01:48
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「いい加減気付け、あほ」俺は赤い短冊に冗談めかして書き殴った。今日は雨の七夕。どうせ願いなんか届きはしない。意中の彼女の短冊は「今夜デートに誘われたい」。好きな奴いるんだ。ため息と共に裏返した文字にどきり。「赤い短冊の彼待ってますv」おい、不意打ちはやめろよな。

2011-07-07 14:44:46
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 会社帰りの本屋。時代小説コーナーによくいる憧れの先輩。長い指でなぞられる本の背表紙に嫉妬さえ覚えて。と、彼が目を上げる。「よく会うな」ば、ばれてた! 慌てて帰ろうとすれば「一緒に飯どう?」。あまりの幸運に倒れそうな私を支え「峰打ちじゃ、心配するな」と彼が笑った。

2011-07-09 07:43:53
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 夏の森。ひんやりとした気を吸いこめば幾つもの物語が甦る。迷い込んだ家の3つのスープ椀。小鳥に食べられた道標のパン屑。きっと深い森の静かに萌え立つ命が語りかけるのだ。私は躓いたのを言い訳にそっとあなたと手を繋ぐ。新しい物語を探しに、ふたりで森を彷徨いたいから。

2011-07-10 08:30:25
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel ことん、ことん。積み重ねていくんだ、モンドリアンのコンポジションみたいに。君の声、君の眼差し。木漏れ日や川のせせらぎを挟んで。手をとってどこかへ行ってしまいなよ、夏は僕らを唆す。君の言葉、君の笑顔。ことん、ことん。君の全てを組み込んで、僕の夏が今、始まる。

2011-07-12 08:01:44
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#twnovel 時に愛は苦しい。私はヤドリギのように寄生し奪うだけであなたに相応のものが返せない。胸の内を思わず吐露すれば、宥めるような口づけ。「ヤドリギの下でのキスは拒否できない、って言い伝え知ってる? 君がヤドリギなら僕には好都合だね」ああ、時に愛は苦しすぎる。

2011-07-13 06:20:03

7月14日ついのべの日 お題「たくあん」

工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday は鼻歌交じりにたくあんを刻んでる。実家から貰ったそれが余る頃出てくる僕の好物、たくあん炒飯。それは結婚前には知らなかった味で、色んな意味で君に慣らされていることを知る。なりふり構わず君にアタックしてたあの頃の僕に、これを食べさせ、じたばたさせてやりたいな。

2011-07-14 02:40:37
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvdayかあさん、これたくあん臭い」着ていたパジャマを差し出す息子。「どれ」とくんくんする私と夫。「うへ」「ほんとだ」3人でげらげら笑いながら、脱衣籠にそれを思い切り投げ入れる。「ナイスシュート!」また弾ける笑顔。蒸し暑い夜は明け、朝顔も笑う夏の日の朝。

2011-07-14 02:56:09
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday う、限界。人の気も知らず、のらりくらりとちょっかい出して。わざわざ皆の前で言う何度目かのデートの誘いにキレて叫んだ。「本気で誘わないなら、もう言うな!」突如彼は私の手を引いて空き会議室へ。泣き顔をシャツに押しつけられ「本気だって。ったく、あんたって女は!」 

2011-07-14 04:01:25
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday つも出し抜かれてる感じなんだよね。私がいらついてるとおいしい珈琲が淹れてあったり、小さくなった石鹸の脇に新しいのが置いてあったり。至れり尽くせりの恋人、でもなんか悔しくて。しかも「これでも君に飽きられないように必死なんだけど」って、まったく、あん畜生!

2011-07-14 11:19:34
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday 日は1日ついてなかった。ケチのつき始めは朝、彼とのつまらない喧嘩。空腹と苛立ちでふらふらしながら帰れば美味しそうな匂い。エプロン姿の貴方がにっこり笑って「お帰り。僕にする?ご飯にする?」その2択、あんまりよ。

2011-07-14 18:41:45
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday 人時代初めて寿司屋に行った時、たくあん巻ばかり頼んでた君。「安上がりな女だと思って結婚を決めたんでしょ」。たくあん巻が好きなことも、俺の懐事情を心配してくれてたのも分かってる。でも俺はあの時、たくあんがちらとはみ出してた君の唇が可愛くて結婚しようと決めたんだ。

2011-07-14 12:26:16
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel #twnvday なたの言葉が私の振り子を激しく揺らし、もう正しい時は刻めない。あなたの視線が私の背中のゼンマイを巻き、くるくると止まらないピルエット。どんな物理の理論も役に立たない。ふたりの恋はちくたく、ちくたくあんどぅとろあ。

2011-07-14 23:04:11

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工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 遠くから見ればただ綺麗な海。けれど近くでその色を見る時その底知れぬ激しさに怯える。貴方もそう。人当たりのいい友達だった貴方は、恋人になった途端その激しさを顕にした。見つめる視線の熱さに身震いする。「君だってそんな目をしてる」そう言って彼は強く私を引き寄せた。

2011-07-17 12:03:10
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 夏の白昼夢。初めて会った君の、ポニーテールの向こうに青い海が見えたんだ。僕の気持ちも知らずに、君はソーダを飲み干し帰ろうとする。こんな時はどんな台詞だって陳腐。でも僕は意を決して彼女を呼び止める。「海に行かない?」戸惑う君の瞳が、波のように揺れた。

2011-07-15 21:39:11
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 夏の庭、彼女は雑草を前に考え込む。「朝顔がね離れたくないって」一本の草に朝顔の蔓がくるくると絡まっていた。「そこの草を刈ったら蟋蟀の子供がたくさん出てきて保育園を荒らしちゃったわ」だからいつも君の庭は草だらけ。僕は腕を朝顔の蔓の様に絡め、君に慰めのキスをした。

2011-07-18 17:21:08
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 突然の大雨。僕は彼女を庇いつつ樹の下まで走る。結局君は濡れ鼠、僕の前髪からは雨だれが。途方にくれてそれでも君を帰したくない、遣らずの雨だ。有無を言わさず君の手をとり、また駆け出した。「僕の部屋に行くよ」拒否したいならすればいい。雨の音で聞こえないふりをするから。

2011-07-19 17:50:47

7月22日 ついのべ記念日(ついのべが生まれた日)

工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel詰めが甘い」怒る時は一対一。配慮に長けた上司、私の好きな人。「書けばいいってもんじゃないだろ」二人きりの会議室に書類を投げる音が響く。「140字って言ったよな?」耳元の囁きにびくり。後ろ手に鍵を閉める音に目を見張れば「だからお前は詰めが甘い」#twnvday

2011-07-22 08:38:12