工房径ついのべ集 2011年10月

10月のついのべの日は「鉄道」。10月5日はジョブズ氏が亡くなって、追悼タグでついのべた。大学のころmacと出会い、詳しくはないけどずっとmacユーザー。仕事も小説も、皆macからスタートした。全60作。
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工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 君は咲きかけの牡丹の花びら。ほころぶ前に触れたくなってしまうんだ。髪飾りを外し君をシーツに横たえれば、ぬばたまの黒髪は四方にこぼれて、たちまち広がる僕らの宇宙。僕は迷わず君を乗せて旅に出る。愛しい君。今夜もラピスラズリのように鮮やかな青い夢を僕に見せてよ。

2011-10-12 19:33:17
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 高熱でダウン。看病するあなたは手を取って何かを囁くけれど、その声は蓄音機から流れるように切れ切れになる。私は朦朧として眠りの淵に沈んだ。ぽん、と蓮の花が開くように目が覚めると薬指に指輪。どうやら求婚されたらしい。「覚えてないの?」ごめんね。怨むなら風邪を怨んで。

2011-10-13 16:14:15
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「ちょっと遠出しよっか」会社帰りあなたは不敵に笑って、突然車をターンさせた。エメラルド色の青信号に導かれ、ビルの間を縫うように辿り着いたハイウェイ。金平糖をこぼした夜景を次々と越えて、ときめきは加速する。離さないで、今夜。あなたと彗星に乗りたいの。

2011-10-13 19:58:00

10月14日ついのべの日 お題「鉄道」

工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday #twnovel 「まだあきらめないのか」って人は言うけど。すぐに路線を変えられるほど、僕は器用な男じゃない。君が好き、君が好き。あいつに恋して、ふられてもまだあきらめない君が好き。君の恋に転車台がなくても、僕はいつだって君にまっすぐ向かう汽車になろう。

2011-10-14 06:00:51
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday 僕は君にいかれてる。でもYou drive me crazy なんて言わないよ。だって僕らは「乗り鉄」だもの。大宮の鉄博で出会い、青春18きっぷで旅をした。今日僕らは結婚し、特急のB寝台で最初の夜を過ごすんだ。なぜAじゃないかって? 狭さも時にはスパイスなのさ!

2011-10-14 12:14:19
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday 50を過ぎて恋をするとは思ってなかった。旅先であった同い年の彼女。古い映画の話で盛り上がり、たちまち僕の人生は生き生きと色づいた。「小さな恋のメロディ」みたいにトロッコをこいでいこうよ、ふたりで。僕らはもう十分に大きいけれど、冒険をするにはまだ遅くはないんだ。

2011-10-14 12:33:42
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday 廃線の跡をふたりで辿った。学生時代、この列車であなたと恋に落ちたんだ。今はサイクリングロードのこの路を、あなたの背中を追い自転車で走る。4月の桜、5月の藤、紅葉の秋、ぼた雪の冬。列車の窓辺にはいつもあなたがいた。朽ちた駅名の看板をなぞり、また新しい旅に出よう。

2011-10-14 13:10:48
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday 自他共に認める「鉄子」の彼女。好きな作曲家はドヴォルザーク。鉄オタだった彼の「ユーモレスク」。初めの8小節は眠ろうとするときに走り出す列車の音を表してるんだと。「ふうん、君の家はさぞかしドボルザークだらけなんだろうね」「まあね」「行ってもいい? 鉄子の部屋に」

2011-10-14 12:55:39
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnnday どうして落ち込んでるってわかるのかな。星の見えない夜、君はギターを出してきて、僕に弾いてとせがむんだ。僕のギターのトレモロに君の声が重なれば、歌はたちまち線路になって夜空へ高く立ち昇る。今宵君と雲の上、星へ続く汽車に乗ろう。 #twnovel

2011-10-14 17:44:48
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday 通学路の電車で一駅先に降りる君。飛ぶように駆けていっては、踏切で僕に向かって手を振るんだ。そんなことを思い出したら、俄然君に会いたくなった。帰ろうかな、今度の週末、新幹線で。単身赴任はお気楽だなんて、強がりばかり言ってるけど、本当は君のごはんが食べたいんだよ。

2011-10-14 18:57:17
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnvday あなたを追ってこんなところまで来てしまった、夏。パリから列車は一路リヨンへ。林檎を囓りながら本を開けば、風に煽られて頁が捲れる。窓の外は一面のひまわり畑。駆けて行く無邪気だった私にさよならを。今は胸に一輪、情熱の花を抱いて。 #twnovel

2011-10-14 19:41:21

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工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「ボンボンショコラ、好き?」フランス菓子を餌に、君を部屋に連れ帰った。ひとたび扉を閉めれば、もう君は囚われの蝶。その美しい羽根をピンで留め、シーツに縫いつけてしまおうか。それとも金色の琥珀のように身も心も絡め取り、甘い言葉でしっかりと閉じ込めてしまおうか。

2011-10-14 21:14:36
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 沈丁花香る図書館の窓辺で、あなたがいつも座る机に「好きです」と書いた。春休みが終われば学校の違うあなたとはお別れ。「何を書いたの」後ろから覗き込んだのは彼。逃げようとする肩を掴まれ、私の手のひらを開くようにした。彼の指が撫でるように書いたのは「ぼくもすきです」。

2011-10-16 20:08:25
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 彼のあだ名は蜻蛉(かげろう)。やせっぽちで頼りなくて、スーツより包帯が似合いそう、なんて私も陰で笑ってた。でもある日重たいダンボールを運んでいたら、彼がひょい、と取り上げて。手伝うとも言わずに、すたすた先を歩いてく。ねえ、私のハートまで持ってくのはやめてよね。

2011-10-18 18:37:46
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel あなたは私をとことん甘やかす。花瓶には好きな色の薔薇、フルートグラスにはお気に入りのシャンパーニュ、甘い言葉。まるでショコラに砂糖がけしたドラジェになったみたい。「これでも君の王子様になりたくて必死なんだよ?」そう言うあなたの頭上には、もう王冠が輝いているのに。

2011-10-18 22:29:49
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel お茶汲み当番の特権。マグカップを好きなあの人とお揃いに。うきうきと珈琲を啜り机で新着メールをチェックすれば、差出人は彼。『いつも同じマグなのは偶然?』慌てて顔を上げれば、そのマグを持ち上げて彼が微笑む。困惑する昼下がり、あなたに溶かされ私は甘いジャムになる。

2011-10-20 16:32:52
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel お風呂上がり。同じラヴェンダーのソープでも、あなたの香りは私より何処かスパイシー。寄り添って聴く音楽にサティの「あなたが欲しい」を選んだのは偶然なの? 「そろそろ寝る時間ね」あなたはもうきっと知ってる。寝室に行くのを悲しむふりで、私がベッドに誘っているのを。

2011-10-20 22:13:28
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 風呂上がり、同じラヴェンダーのソープでも、君の香りははるかに甘くて。何気なく選んでしまった音楽は、サティの「あなたが欲しい」。僕は欠伸混じりで「そろそろ寝なきゃな」と立ち上がる。君はまだ気付かないのかい。夜が更けるのを悲しむふりで、僕がベッドに誘っているのを。

2011-10-21 08:37:00
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 冬の研究室。凍てつく指で顕微鏡にプレパラートを挟む。膨大な標本の量に辟易としながらミクロの世界に没頭中。「お疲れ」甘い声が耳をくすぐる。白衣姿の俺の彼女が缶珈琲をコトンと置いて微笑んだ。「ここでの飲食は教授には内緒ね?」おいおい、もっと内緒のことしたくなるだろ。

2011-10-21 18:20:53
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 「夕飯食べに行こっか」あなたの車は流れ星のように高速を抜け、着いた先は湖畔のリストランテ。蝋燭の炎を挟んで相対すれば、あなたはまるで水飴みたいにとろりと甘く私を見る。どうしよう、胸が破裂しそう。だってあなたがビロードの小箱をテーブルの上に置いたんだもの。

2011-10-21 22:52:46
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel チョコレートが好きな同僚の彼。残業続きで消耗している姿があまりに不憫で、泣く泣くとっときのゴディバをあげたら、ものすごい喜びよう。あまりの騒ぎに廊下へ連れ出し「大げさだよ」と窘めると、「だって君がくれたんだよ?」耳元で囁くのは、チョコレートより甘い甘い言葉。

2011-10-22 23:39:10
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel 今年もあのラテのシーズンがやってきた。殺人的な忙しさと片恋に潰れそうだったあの頃。会社帰りに一緒になった君とここのラテを飲むことで何とか凌いで来れたんだ。奇跡は起こり想いが叶い、季節は巡る。スパイシーバニララテの季節になると、今でもちょっと胸が切ない僕なんだ。

2011-10-23 09:42:53
工房径(koubou-kei) @pleaseinuplease

#twnovel あなたの声は香炉から立ち昇るたぐいまれなるアロマ。方角を見失った私のキャラバンに、また歩き出す勇気をくれるんだ。砂漠の風紋は変わり闇が辺りを包んでも、あなたこそ私のしるべ。旅の終わり、私の胸の砂漠はオアシスに変わる。その魔法の呪文を知っているのは、あなただけ。

2011-10-23 20:45:06