村井聖夜の記憶　阪神淡路大震災

(〃ゞ)っ[ムライ] @mu_station

阪神大震災の日、あれもたしか月曜だったな。東京に入ってきた第一報は、「大きな地震があった、被害はコンビニの棚が倒れた、転んで怪我をした人がいた。それ以上の詳しいことはまだわからない」だった。驚いたが私は普通に出社した。会社に着いた頃、現状がどんどん入ってきて騒ぎになっていた。

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本社機能がまだ神戸にあり、関西出身者も多かったこともあり、会社はパニック状態、不安を募らせる社員も多く、早退OKになった。祖父母と親戚の多くが芦屋だった私も、ひとまず帰って安否情報を集めることにした。

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幸い親戚縁者の無事は半日過ぎて確認できた。祖父母の家は半壊だった。しかしあとちょっと何かが足りなければ、祖父母も叔父叔母も家の下敷きになっていたかもしれない状況だった。強運で守られたとしか言いようがない状況は、3日後に援護に訪れて把握した。

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震災後3日で新幹線が新大阪まで復旧し、阪急が西宮北口まで行くという情報で、私は10kgの衣食品救急道具などを背負い、現地に向かった。大阪の市内は、まるで地震なんてあったの？という感じに普通の生活が広がっていた。しかし西に向かうにつれ、その状況は一変した。

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終点西宮北口で降りた私は、芦屋までの道のりを歩いた。しかし途中の川では橋が崩落、あるいは封鎖され、まっすぐ向かうことができず、矩形波状に歩かされた。自衛隊が多数出動していたが、上から指示がなかなか出ないのか、群れてで棒立ちしていた。

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道路が寸断されているので、途中から最短で進める阪急の線路上を歩いた。枕木の幅は歩幅に合わず、それまで保っていた体力が一気に疲労した。そして異常に歩きにくい。足にマメが出来始め、何度かよろけた。普通の道を歩けばよかったと後悔した。

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なんとか祖父母の家に着いた。観たところ家の柱や屋根はなんとも無いようだったが、よくみるとゆがみ、室内に入ると天井は堕ち、ぬり壁がガサっと崩れていた。となりのパン屋は跡形もなく潰れてしまっていた。

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叔父叔母の寝室は、前年屋根を補強したところだった。もと合った天井は、新しく新設した天井の上に崩落していて、難を逃れた。祖父母の寝室は土壁が倒れていた。あと数十センチで頭に当たっていたかもしれない。

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祖父の部屋は調度品も家具も、全くいつものままだった。用心深い祖父は、人形や地球儀を家具に固定し、家具はすべて壁に頑丈に固定していた。その部屋だけ、地震などなかったかのようだった。そこが当座の暮らしの場となった。

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さらに、万が一にと空き缶に万単位相当の硬貨を詰め込み、砂を敷き詰めたものを玄関下駄箱下に隠していた。そこにあった10円玉のおかげで、テレホンカードが使えなくなった電話機や自動販売機を使うことができた。しかしそれらもすぐ売り切れ、コインいっぱいになったが…

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私は3日間滞在し、一時的に大阪へ親族が避難する準備を手伝い、崩れかかった瓦屋根（関西は土が載っている）を下へ落とす作業などを手伝った。自分が居れば居るだけ、よけいに食料が必要なので、長居はできなかった。

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時折、石焼き芋屋が巡回した。一個3000円だと言っていた。そういう輩が県外からよくやってきた。また、祖父母の家はわりと大きな屋敷で、正面の門が壊れていたこともあり、不審者が時折覗きにきていた。玄関前でタチションするやつもいた。非常時になると、人間は何をやってもいいと思うようだ。

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会社相談役をしていた祖父を気遣い、取引先、部下の方々からも連絡や訪問がひっきりなし。食べ物も食いきれないほどいろいろなモノが差し入れされた。善い悪いはともかく、こういう時のフットワークが日本企業たる風土なんだろうな。当然周りにおすそ分けをした。

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半壊した家は直すこともできないのと、以前からマンションに立て替えようという話し合いを親族でしていて、思い切りがつかなかった。震災がそのきっかけとなり、マンションへ建て直した。しかし、周囲住民の反対や土壌調査（遺跡など）で3年待たされた。

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…毎年書いてる気もするけど、これが私の記憶。