陸上兵力の各兵科の移動特性の違いによる脆弱性

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錆猫 @Nyar_Horten

こっそり、多分手垢に塗れた陸ネタを投下してみる

2012-01-22 03:25:36
錆猫 @Nyar_Horten

陸上兵力はそれ自体が大雑把に歩兵(制圧力)、機甲(衝撃力)、砲兵(火力支援)の三つの兵科の諸兵科連合によって戦闘力を発揮する存在です。その為、一定の戦闘力を維持しようとすれば部隊の規模は大きくなり、その装備機材も多種多様なものになります

2012-01-22 03:26:22
錆猫 @Nyar_Horten

部隊が大きくなり、装備が多種多様になるという事は、個々の移動力のバラつきもさることながら、それらを策源地まで輸送する、所謂戦略機動に必要な労力と、それらが前進し作戦を行う地域に兵站を維持する為の労力が増大するという事を意味します

2012-01-22 03:28:50
錆猫 @Nyar_Horten

戦略機動に於いて、時間を短縮する為には空中機動が最適ですが、空中機動は重装備の輸送には不向きで、また移動にかかる経費が最も大きく、例えば米露といった大規模な空輸部隊を維持できる国以外では、精々少数の軽部隊を現地に送込むのが関の山となってしまう問題が存在します

2012-01-22 03:31:46
錆猫 @Nyar_Horten

(例えば、砂漠の盾作戦発動一週間後にはのべ106機の輸送機による空輸で将兵4千人以上、AH64x15機、OH58x8機、M551x18両、TOWx56セット、MLRSx2セット、105mm牽引砲x12門がサウジに展開したが、重装備の不在は司令部の不安の種になった)

2012-01-22 03:35:02
錆猫 @Nyar_Horten

重装備且つ大兵力を一括して戦略機動するには海上機動が最適ですが、速度が遅く、一旦損害が出ると一挙に大兵力を喪失する危険性が付き纏います。また、何れの機動であっても策源地の確保と、其処の受入能力如何によっては、其々の特性を大きく減じてしまう可能性が存在します

2012-01-22 03:40:42
錆猫 @Nyar_Horten

よって其々の機動手段の特性を把握し、作戦と策源地に適した段取りの選択が陸上兵力の機動に重大な影響を及ぼす事になるでしょう(それを度外視した場合、例えば軽部隊は迅速に現地に展開しつつも敵に蹴散らされ、重部隊は遅れに因って策源地を得られず引返す、といった結果になるかもしれません)

2012-01-22 03:44:10
錆猫 @Nyar_Horten

(例えば湾岸戦争前夜、砂漠の盾作戦時に、イラクが米軍の第一次展開に呼応してサウジに侵攻、米軍の橋頭堡を奪い主戦力の上陸・展開を阻止する可能性が指摘されています(湾岸戦争「砂漠の嵐作戦」参照)

2012-01-22 03:47:17
錆猫 @Nyar_Horten

兵站の維持は、他軍種、例えば策源地が兵站の終点である航空兵力と違い、策源地から前線に常時繋がったルートを確保する必要性(無論、戦線が拡大すればその分ルートは拡大分岐する)が戦闘部隊の戦力を削り、その機動力を削ぐ事になるでしょう

2012-01-22 03:51:57
錆猫 @Nyar_Horten

何れの場合も、部隊の規模と個々の装備の重量といった要因から陸上兵力は機動に何らかの制限が付く事が窺えます(尤も、装備の重量は事前展開の際には致命的な問題となるでしょうが、例えば逆襲を前提とした機動の場合は準備に時間が取れるので緩和されると見て良いかと)

2012-01-22 03:54:48
錆猫 @Nyar_Horten

ちなみに、陸自は軽部隊化によって機動の鈍重性を緩和し該方面への事前展開を容易とすべきといった感じのネタを稀に見かけますが、自衛隊の環境下での事前展開は敵が奇襲を考慮せず且霧も摩擦も存在しない理想的環境でないと軽部隊であっても成立し難くなる可能性は考慮に入れておくべきかと

2012-01-22 04:00:42
錆猫 @Nyar_Horten

とはいえ、南西諸島周辺には未使用のものを含め51の滑走路(内2千m級23。うろ覚えなので興味のある方は御自身で確認のほど)があるので、何ら問題が生じず、加えて輸送機の質と量に何ら不足が無ければ有人島への事前展開はそれなりに容易なのかも知れません

2012-01-22 04:04:22
錆猫 @Nyar_Horten

(ただ、動的防衛の主旨は恐らく四次中東戦争前夜、エジプトの動員に呼応して兵力を動員し動的にその行動を抑止したとされるイスラエルの其れを再現するに足る警戒能力と、複数回の動員(≒事前展開)を行い得る基礎体力の充実でしょうから、軽部隊化自体は経費削減以外には関係しない気がする)

2012-01-22 04:09:35
錆猫 @Nyar_Horten

以上、何となく陸上兵力の鈍重性ってこんな感じかもしれない的お話でした

2012-01-22 04:10:42
錆猫 @Nyar_Horten

あー…。ついでの小話。忘れてはいけないのは、陸上兵力の戦術乃至作戦的な観点に於ける機動力は部隊毎の移動力(例えば巡航速度)のみを指すのではなく、移動を保障する為の攻守という要素を絡めたものであるという事です

2012-01-22 04:31:20
錆猫 @Nyar_Horten

例えば、巡航時速100kmで移動できても攻守が紙であれば、進路上に小銃を持った敵兵が居るだけで機動は停止させられてしまいます。逆に巡航時速30kmでも攻守が敵火力に優越していれば、その行動は阻害される事無く、燃料が尽きるまで機動を維持する事が出来るでしょう

2012-01-22 04:35:30
錆猫 @Nyar_Horten

そして戦場に於いては防衛ラインを前方に伸す、或は体制を整える時間を稼ぐ、又は警戒・偵察任務といった理由で複数の部隊を本隊より前進配置乃至行動させるのは一般的な対応であり、機動を保障する要素の無い軽部隊ではそれらに捕捉された容易に機動を阻害される事になります

2012-01-22 04:38:44
錆猫 @Nyar_Horten

(ついでに言えば、撃破された部隊はそのまま敵にとっての防御地形、或は味方にとっての機動阻害要因に早変わりします。撃破されてもそれらの機材その他はその場から消え去る訳ではなく、対処するまで其処に残り続けるからです)

2012-01-22 04:41:09
錆猫 @Nyar_Horten

近年に於いては、従来なら軽便であった偵察部隊にすら攻守走捜に優れる戦車が多数配備されるなど、部隊の機動を維持する事は難しくなっていると言えます(そうでなくとも、火力だけなら機械化歩兵であっても単発的な脅威足り得ます)

2012-01-22 04:44:38
錆猫 @Nyar_Horten

無論、効果的な機動を容易とする為に情報化といった手段が用意されつつありますが、それは敵に於いても同じである事を考慮する必要があるでしょう(敵も情報化により味方の行動を比較的適切に掴み、事前に味方の行動を阻害する部隊を配置している可能性が高い、という事です)

2012-01-22 04:46:42
錆猫 @Nyar_Horten

その辺りを忘れると、移動力とその軽便さのみに着目した結果、第三者的には味方を無為に失う事を容認しているかの様に見える事を平気で主張する結果になるかもしれません、と自戒も込めて

2012-01-22 04:47:57
フォースの力に取り込まれただよもん @V2ypPq9SqY

@Nyar_Horten 軽部隊と重部隊の展開能力の差はそんなにないです。むしろ、部隊を輸送する能力こそが重要と言うか。

2012-01-22 07:02:41
フォースの力に取り込まれただよもん @V2ypPq9SqY

そもそも何を減らせばこれ以上軽く出来るのかw

2012-01-22 07:07:20
フォースの力に取り込まれただよもん @V2ypPq9SqY

それに空挺を初めとする戦力は、けして足が早いわけではない。(ロシア人とアメリカ人を除く) むしろ、空挺は足が遅い。それも極端に。早く見えるのはヘリが早いだけ。で、必要な量の空輸能力をつけると必要予算が跳ね上がる。

2012-01-22 07:15:42