加藤典洋氏「核燃料サイクル」「アトムとゴジラ」

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加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル26:それが、六ヶ所村の再処理工場から高速増殖炉「もんじゅ」建設へと続く現在の核燃料サイクルだというのが、上記藤田論文の指摘。つまり、核燃料サイクル政策には、二段階があり、佐藤政権時に第一から第二へと「離陸」する。核兵器製造の技術上の必要に促されてのことです。

2012-01-23 21:28:22
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル27:2004年の六ヶ所村再処理工場の稼働をめぐる経産省の対立。飯田哲也さんはここが「分岐点」だったと述べ、毎日新聞元旦スクープもこの時の話です。このとき、経産省若手官僚が反旗を翻して出した〝怪文書〟「19兆円の請求書」が名高い。

2012-01-23 21:28:35
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル28:この文書のPDFが、いま、なぜかウェブから手に入らない(何らかの妨害にあっているのか)。で、うろ覚えのまま書いてしまいますが、ここに一点、面白い指摘が出てくる。安全保障の点から言ってもプルトニウムはもう十分にあるじゃないか、という(小声の)指摘です。

2012-01-23 21:28:46
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル29:核兵器製造を視野に入れても、もう再処理は必要ない、従って再処理工場は不要と、若手官僚も、この点を加味し、六カ所反対の論点強化をはかっている。当時の開明的経産省官僚の目にも、再処理、もんじゅのラインが、兵器級プルトニウム生成をめざすものと見えていました。

2012-01-23 21:29:00
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル30:これに関連してトリウム型原発開発の挫折も浮上します。冒頭に戻りますが、80年代初頭、今回の東京新聞に登場のカーター元米大統領が日本側に、プルトニウムをほとんど出さないトリウム型原発を開発すればよいではないかと提言しています。

2012-01-23 21:29:30
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル30(こぼれ):これを受け、自民党に二階堂進を中心に100人以上の議員からなるトリウム利用推進懇談会が結成される。

2012-01-23 21:30:23
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル31:しかし、この企ては頓挫。理由は、トリウム型原発では、軍事転用ができないということだったでしょう。明示はないが。こうして佐藤政権の「核の平和三原則」と「核燃料サイクル」のセットが期せずして(?)核技術抑止の最強の布陣を作る。それで現在に至るという流れです。

2012-01-23 21:30:39
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル32:「もっていないけど、作ろうと思えば作れる」核の技術抑止とは立派な軍事的な核抑止政策です。これが「平和利用」を隠れ蓑にした軍事利用の形に完成され、あたかもそうでないかに浸透し、日本の原子力政策の全体を「秘密」を蔵した官僚主導の「暗い」ものにしてしまいました。

2012-01-23 21:31:05
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル33:ではどうするか。過去の総括の上に立ち、核燃料サイクルを放棄すること。また被爆国ながら、原子力の「平和利用」政策に失敗したことをはっきりと世界に宣言し、その上で、今後、脱原発へと進むこと。これを、将来のアジア隣国からの信頼回復の礎石とすることが大事です。

2012-01-23 21:31:16
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル34:原発事故後の、政府、官僚、業界、メディアの現状は、これ以外の選択肢が、もう日本にはないことを示しています。なぜなら、一般の産業事故からの再生の基本は、事故原因の究明、責任の所在の明確化、損害賠償の徹底、これらを通じての当事者の謝罪ですが、その全てがない。

2012-01-23 21:31:39
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル35:そうである以上、これが失敗後の日本の「更正」の、ありうべき方向ではないか、と思っています。まず、避難した人々、被災者への損害賠償のしくみの確立、原子力委員会、同安全委員会、その他、委員長はもとよりメンバーの罷免が大事です。明るく、行きたいものですが。

2012-01-23 21:31:44
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル36:以上、刊行後の知識を加味したところもありますが、新聞と雑誌に取りあげられなかった拙論の趣旨。さて、今後に向けて。たとえば、脱原発は退歩ではないか、という議論(たとえば尊敬する吉本隆明さん)もあります。これをどう考えるか。

2012-01-23 21:31:58
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル37:理念上はその通りです。同意。しかし、いまのままの原発を推進するわけにはいかないことは、吉本さんも賛成のはず。ではどうするのか。吉本さんの指摘に対し、私は、科学技術的な退歩でない現在の「原発」からの離脱、前方への離脱、ということが構想可能だと思っています。

2012-01-23 21:32:09
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル38:ヒントは、大きく三つ。第一、中沢新一の『日本の大転換』は、論の展開が少しばかり強引ですが、科学的に「太陽光」エネルギーが原発よりも先に位置づけられるとした点が、画期的でした。また、最近、東電の原発から保険会社が降りたことがもう一点に目を向けさせます。

2012-01-23 21:32:21
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル39:第二。責任を取れ、と言いつつ、取りようがないよね、これ、と内心思っていること。このことのもつ落ちつかなさ。ここに口を開けているもの。そこに未知の感触はないでしょうか。

2012-01-23 21:32:33
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル40:これは産業経営体が自己の産出物の社会的影響(第二次産出物=汚染、廃棄物など)を空間的、時間的、算術計算的に回収できないところまで来たということの現れです。たとえばウルリッヒ・ベックのリスク社会論の「第二の近代」の考え方が、ここに浮上してくるでしょう。

2012-01-23 21:32:46
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル41:第三、またこれは、見田宗介の有限性から現在を見ていくという『現代社会の理論』の論点と重なる点でもあるでしょう。見田の世界有限性浮上論に、ベックの内在的な第二近代論(「北」論)を重ねると、ポストモダンとは異なる近代批判論の射程が見えてくるのではないか。

2012-01-23 21:32:59
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル42:原発問題が切り開いた地平とは? ということも、ここから考えられる。以上。書いてみたら、いろいろ考えが押し寄せ、長くなりました。ここまで長いものを読んで下さった方々に、感謝します。

2012-01-23 21:33:11
加藤典洋 @ten_kato

核燃料サイクル43:付録。関連して「アトムとゴジラ――一対性のゆくえ」という論考が、もう少ししたら慶応大の刊行物に載ります。75枚くらい。慶応大学アートセンターBooklet20号です。あと『科学』の次に出る号に短文を寄稿しました。タイトルは「天窓と金魚鉢」。終り。

2012-01-23 21:33:26
加藤典洋 @ten_kato

アトムとゴジラ1:先の「核燃料サイクル」連続ツイートの関連で、「アトムとゴジラ」について数言。先のツィートのもととなった拙論「祈念と国策」には、核燃料サイクル、技術抑止問題ともう一つ、被爆者の原子力平和利用支持をどう考えるべきかという論点を扱っています。

2012-01-23 21:33:57
加藤典洋 @ten_kato

アトムとゴジラ2:いま行われている被爆者たちは米国の「原子力平和利用」政策の宣伝工作に乗せられたのではないか、という見方に、それは〝事後の目〟からの評定にすぎない、と別の観点を対置しています。「アトムとゴジラ」は、こちらの論点を掘り下げたものです。

2012-01-23 21:34:09
加藤典洋 @ten_kato

アトムとゴジラ3:そこでは、戦後の二大代表的文化アイコンであるアトムとゴジラの一対性に(私自身を含め)原発災害が起こるまで誰一人気づかず、これを考えようとしなかったのはなぜか、という問いから、両者の関係が考えられています。

2012-01-23 21:34:20
加藤典洋 @ten_kato

アトムとゴジラ4:問いはこうです。高度成長をへても「ゴジラはなぜ『暗い』のか」(川本三郎)。これに対し、原発災害をへても「アトムはなぜ『明るい』のか」。50~60年代当時、原子力平和利用は、高木仁三郎から大江健三郎まで、ほぼ全員の幅で、未来への願いを託す対象でした。

2012-01-23 21:35:04
加藤典洋 @ten_kato

アトムとゴジラ5:でも、運転をはじめて見てこれではダメだとなった。そこでは何が訂正されるべきで、何が、再度考え直されなければならなかったか。繰り返せば、後出しジャンケンではなく、50年代の出発の場所に「脱原発」の基礎を据えなければ、弱い、というのが私の考えです。

2012-01-23 21:35:31
加藤典洋 @ten_kato

アトムとゴジラ6:補足1。高木仁三郎さんは、「その当時(60年代の半ば)は、私は原子力そのものにはそれほど批判的ではなかったのですが」と述懐しています(「ライト・ライブリフッド賞受賞スピーチ)。そして言いたいのは、そこから脱原発が始まっているから、強い、ということです。

2012-01-23 21:45:14