政策界隈にいる面々の想像力不足 by 野川忍氏(@theophil21)
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想像力不足(1)社会人の常識として、「他者の置かれた立場に思いをいたす」ことが要請されることは基本的な了解となっている。まして政策に関わる者には、対象となる人々の痛みや呻吟に対する想像力が強く求められる。もちろん、一部の人々に痛みを与える政策決定が避けられない場合もありうる。
2012-02-16 11:52:40想像力不足(2)その場合でも、どれだけその痛みを回避し、あるいは緩和できるかを周到に検討することが求められるのは当然である。実は最高裁も、就業規則による労働条件の不利益変更についてこの基準を用いている。企業が労働者の痛みを緩和する工夫をどれだけしたかをチェックするのである。
2012-02-16 11:52:59想像力不足(3)政策担当者だけでなく、政策に関与する学者・研究者も同じように想像力が要請されるが、最近は深刻な想像力不足がみられる。橋下市長による職員へのアンケートに携わった学者たちもそうであるし、雇用政策に関与する研究者にもそれがみられるのは残念である。
2012-02-16 11:53:12想像力不足(4)たとえば、労働市場の活性化や企業経営の活力強化などを根拠に、非正規労働者の解雇規制を緩和することが主張されることは珍しくない。労働市場が流動化して労働者も一つの企業にしがみつく必要がなくなることは歓迎すべきであり、その主張には一定の論拠がある。
2012-02-16 11:53:27想像力不足(5)しかし、懸念されるのはその想像力不足である。現在、膨大な数の非正規労働者が風の中の木の葉のように振り回され、低劣な労働条件にあえいでいることは言うまでもない。その苦境から非正規労働者が脱するための具体的で効果的な施策の先行なしに解雇規制緩和はありえない。
2012-02-16 11:53:41想像力不足(6)政策に関与する研究者の多くは、自らは安定した地位と収入と雇用保障を享受しており、40歳にして細切れの派遣労働やパートなどで食いつないでいるような労働者の立場に置かれることなど夢想だにしていない。だからこそ、そうした労働者への想像力が特に強く求められるはずである。
2012-02-16 11:53:55想像力不足(7)たとえば「国立大学専任教授」という「盤石の雇用保障」を満喫する者が非正規労働者の解雇規制緩和を主張することは、「自分は決して被ることのない苦痛」を、他人に対してだけ強制する結果につながる。それが正当化できるだけの道義的・論理的根拠があるかを自問すべきである。
2012-02-16 11:54:10