天才的アジテーター橋下徹に幻惑される民主主義の陥穽

橋下徹大阪市長の人気はただ今絶頂にあるのかもしれない。その明快で過激な発言は、国民が統合階級(政治家、官僚、学者、公務員等々)に抱く不満を見事に捉え溜飲を下げさせる。1月15日の報道番組「報道ステーション」での山口二郎北海道大学教授とのタイマンは苛烈を極め、その後の朝生テレビでの反対派との討論で圧倒するなど“橋下無双”と評されるほどである。2月には橋下氏の率いる大阪維新の会が「維新版・船中八策」を発表し、国政をも大きく変革しそうな勢いだ。 しかし、本当に彼に巨大な権力を持たせることが正しい判断なのか。
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私事になるが、1997年春の衆院選後に初めて国会本会議を傍聴したとき、厳しい選挙戦を勝ち抜いたはずの代議士たちは各党代表質問の最中、罵声を浴びせる者や居眠りする者、遅刻する者、お喋りする者がやたら目につき学級崩壊さながらだった。その時、こんな者達を代議士として当選させた国民の選択眼のなさに強い危機感を覚えたことを今も鮮明に記憶している。
ならば、熱狂的に支持を集める政治家が真に優れた働きをするものか、懐疑の目を向けるのは当然であろう。
以下、橋下徹現象を通じ民主主義の欺瞞をまとめてみた。

お耳拝借 @bullsthank

(1)橋下氏は東京で長男として生まれた。小学校2年生の時に暴力団員の父親が自殺し、小学校5年生の時に大阪市東淀川区の同和地区府営住宅に引越し貧乏な母子家庭の中で育った。転校初日、東京者とからかわれ同級生に殴られるが言葉巧みに取り入り彼らの交友関係に自ら入ることで身を守ったという。

2012-02-26 07:09:13
お耳拝借 @bullsthank

(2)進学した中学校は荒れており、“一番悪そうな部が安全”と判断しラグビー部に入部。頭の回転の速さを武器に不良生徒の代弁者として口達者に振る舞い、クラスや学校との交渉で先頭に立つなど当時から処世術に長けていた。

2012-02-26 07:09:38
お耳拝借 @bullsthank

(3)猛勉強で偏差値トップ(70以上)の北野高校に進学すると、自分に利益のなさそうなこと(掃除、汚れ仕事など)は徹底的にサボり、自分の利害に関ることには理屈を捻り出して平気で嘘をつくため、周囲や教師からの評価は低かったといわれている。

2012-02-26 07:10:08
お耳拝借 @bullsthank

(4)早大卒業時に司法試験に合格した橋下氏は弁護士2年目に独立し、金にはなるがトラブルが多くて人気のない損害賠償保険の交渉業務を中心に消費者金融大手アイフル系列企業の顧問弁護士を務めた。法廷では目的のために手段を選ばず、吹っ掛け、法の隙間を利用する手法が目立つようになる。

2012-02-26 07:10:51
お耳拝借 @bullsthank

(5)弁護士時代の橋下氏はその点で、周囲の弁護士から「行儀が悪い、弁護士の品がない」と疎んじられたという。私自身、大阪弁護士会で橋下氏の2年後輩にあたる弁護士から「大阪府知事や市長になるべき人格かというとかなり微妙」と真顔で話されたこともある。

2012-02-26 07:11:12
お耳拝借 @bullsthank

(6)独立から4年後に毎日放送ディレクター(高校ラグビー部時代の先輩)から声を掛けられ弁護士コメンテーターとしてテレビ出演を果たし、「ニートは拘留の上、労役を課す」「私は改憲派だし核保有を肯定する」などの過激な弁論術が奏功し人気を博し、そこで彼は視聴者へのウケ方を学んだという。

2012-02-26 07:11:35
お耳拝借 @bullsthank

(7)決めつけてはいけないが、察するに橋下氏は子供時代に父親が自殺し母親も仕事で忙しく周囲から十全な親和充足を受けられない中で育ったことから、心の底から他人を信じられず利害が絡めば仲間や同僚を平気で裏切るような人格が形成されている可能性が高いということはいえるだろう。

2012-02-26 07:12:10
お耳拝借 @bullsthank

(8)橋下氏の政策には画期的と思われる点と、疑義を呈したくなる点が混合している。それは大衆の期待する空気を読み、表層的なものだけを取り上げているためと思われる。故に小沢一郎氏のような原理原則という首尾一貫性がない。以下、簡単に触れてみたい。

2012-03-04 02:19:09
お耳拝借 @bullsthank

(9)彼の政策で最も評価できる点は私見では大阪市と堺市を統合し8~9の区に分割して基礎自治体規模を適正なサイズにしようとしている点である。やはり住民が自治に参加していくには共同体としての規模が現在(大阪市・260万人)では大き過ぎるというのは納得するところだろう。

2012-02-26 07:13:48
お耳拝借 @bullsthank

(10)また、都構想により大阪府と大阪市を統合すれば2重投資などの無駄を省けるという主張、更には公務員を(生涯保証された)「身分」から(一般的な)「職業」に変えるという話も至極当然である。君が代斉唱で規律をしない教員をなくしていくという考え方にも同意する人は多いと思われる。

2012-02-26 07:14:27
お耳拝借 @bullsthank

(11)つまり、橋下氏の政策のうち政治の仕組み・枠組みを変えるという方針については、合理性がある限り賛同すべき点が多々あるということ。しかしながら、次のような政策について、彼を持て囃すマスコミや知識人(田原総一郎氏や堺屋太一氏含め)は明確に国民に知らせていないのではないか。

2012-02-26 07:14:48
お耳拝借 @bullsthank

(12)まず、教育政策では府立高校の学区撤廃によりトップの北野・天王寺高校へと集中させ、年収800万円までは私立高校の年間授業料を10万円程度とし、偏差値下位の公立高校を廃校に追い込む。市立小中学校も選択性を導入し改編する方針で、中身としては東京の後追いでしかない。

2012-02-26 07:15:44
お耳拝借 @bullsthank

(13)国政への影響という点では大阪維新の会がTPP参加に賛成し、日米同盟を外交の基軸に据えると表明している。これは一見現実路線のようだが、単にこれまでの既成政党にみられる対米隷属の姿勢と何ら変わるものではなく一部大企業や官僚に媚びた発想であり、自立とは程遠いものである。

2012-02-26 07:16:09
お耳拝借 @bullsthank

(14)核武装も彼は賛成しており、第9条の改憲にも意欲的である。勿論、こうした考え方を持つのは自由であり大いに議論すればよい。但し、そこには彼の少年期からの親和欠損から来る他人不信とお金や権力への強い執着心、つまり市場原理や核武装肯定など力に恃む思考が彼を覆っていると予想される。

2012-02-26 07:16:22
お耳拝借 @bullsthank

(15)いみじくも橋下氏と朝生テレビで同席していた東浩紀氏が「(橋下氏は)仕組みは提示したが、明るい未来を語っていない」「弱者への配慮、言葉が足りない」と指摘しているが、それは結局、他者の気持ちを捨象し力の原理に傾倒しすぎるためと考えられる。

2012-02-28 03:04:35
お耳拝借 @bullsthank

3.人間を傲慢且つ愚民にさせる民主主義

2012-02-26 07:17:13
お耳拝借 @bullsthank

(16)橋下氏の人気の理由は、これまで述べてきたように彼の類まれな弁論術と処世術である。そこにあるのは本当に社会課題に取り組みたいという思いではなくて、彼の私利私欲からくるものである可能性が濃厚ということだ。では、なぜそんな輩に我々はやすやすと騙されてしまうのか。

2012-02-28 03:36:50
お耳拝借 @bullsthank

(17)例えば彼は学者と討論する時、①自らはあまり具体的なことは言わない②相手が否定すれば代案を要求③代案を出せば実現方法を聞く④実現するには制度改革の為に選挙で勝つしかなく机上論の学者では不可能、と徹底的に叩く。それもTVカメラの入ったところであからさまに言い負かす。

2012-02-28 03:37:07
お耳拝借 @bullsthank

(18)勿論、無能な学者や官僚、公務員が少なからず存在することは多くの国民も気付いている。だからこそ橋下氏は徹底的に彼らを糾弾し人々を熱狂させる。だが、このあまりに分り易い構図こそ小泉-竹中が自民党内の反対勢力と対峙し大立ち回りをする中で人気を博した猿芝居と瓜二つなのである。

2012-02-28 03:37:30
お耳拝借 @bullsthank

(19)2005年8月、郵政民営化法案が参院で否決された小泉首相が解散総選挙に打って出た時、思わず気分が高揚し彼を応援しようという政治的熱狂に国民の多くが駆られたはずだ。結果、自民党は大勝し郵政改革も実現したが、7年経った現在、何も社会的課題は解決せずむしろ混迷の度を深めている。

2012-02-28 03:37:48
お耳拝借 @bullsthank

(20)痛快な言説で人々の期待を集め、力の原理(市場主義や軍拡主義)を信奉する点において彼の幻術は小泉や古くはヒトラーをも彷彿とさせる。大阪府民はもとより日本国民が自信を喪失し萎えている中で彼の弁術は当に魅惑的に映る。マスコミを利用し民衆の弱みを逆手に取るあたりはさすがである。

2012-02-28 03:38:09
お耳拝借 @bullsthank

(21)しかし、橋下氏や小泉、ヒトラーだけが悪いのではない。彼らのような巧みな口舌の徒はこれまでも、またこれからも出てくる。従って何かを変えなければならない。その変えるべきものこそが民主主義であり、我々に染み込んだまやかしの近代思想観念群なのだ。

2012-02-28 03:38:31