いつだったか、「明日の日本のことを本気で考えているのは気象庁だけ」というジョークが流れた。これに対して「霞ヶ関では毎晩遅くまでどの建物も煌々と明かりが付いている。彼らの努力を揶揄するような発言はけしからん」というような内容の反論twがあった。
2011-09-03 12:07:41この反論に僕が違和感を感じた理由はふたつあって、ひとつめは、努力は正しい結果を生むという、暗黙的な了解に対するものだ。
2011-09-03 12:08:54一生懸命さと目的地が適切かどうかはそもそも別問題だし、正しい目的地に向けて努力していたとしてもその頑張り方には好手悪手がある。
2011-09-03 12:10:19極端な例を出すなら、「子供を不幸にするために一生懸命虐待しました」は目的からして非人道的だし、Excelを使えば5分で終わる表計算を「1日かけて一生懸命手作業で集計しました」というかたにはご自身の人件費というものを考えたことはございますかと伺うしかない。
2011-09-03 12:12:27最悪なのは努力そのものが評価されてしまうパターンで、「ゼークトなら射殺対象」タイプの人が頑張りを認められて組織の意思決定者に登りつめてしまうと、仕事は増えるのに結果は出ないという気まずい結末が待ち受ける。関わったことのある多くの「イケてないチーム」は往々にしてこのパターンだった。
2011-09-03 12:18:36相対的価値の低い仕事にも一生懸命取組んでしまう事で、投下時間対効果が高い仕事にかける時間が削られるのだ。逆・選択と集中。
2011-09-03 12:20:14先の「霞ヶ関では~」に対するふたつめの違和感は、行動が目的達成の必要条件なのは自明なのに、それにあえてフォーカスする意味はどこにあるのだという点だ。
2011-09-03 12:25:53何かを成し遂げたいなら(残念ながら)努力は必須であるということに人は年齢を重ねる中で気づいていく。努力という言葉が負の印象を与えるなら、継続的な行動と言い換えよう。好きが上手を生むのは努力が苦痛でなくなるからだ。夢中になれるものを続けるのは社会的にも個人的にも極めて合理的だろう。
2011-09-03 12:30:10だから、もちろん、物事を一生懸命やったことがないという人たちに対して「本気で何かに取組んでみようよ」と励ますなら話は分かる。松岡修造もTom Petersも大好きだ。
2011-09-03 12:34:49しかし、官僚に対して「よく頑張りました」は彼らを馬鹿にしすぎだろう。「一生懸命働いています」はあまりに当然で、それは評価の対象ではない。民間企業のサラリーマンだって自営の人だってみな一生懸命に働いている。
2011-09-03 12:39:11本来評価されるべきは、ゴールと問題点をただしく見極められているか、妥当で合理的なアクションが為されているかであり、要は結果が出る期待値を最大限高めているかどうかという点であるはずだ。
2011-09-03 12:43:29「何かを成し遂げるには努力が必要だよ」「でも闇雲に動けばいいってもんじゃないよ。登るべき山と登り方を十分に確認しようね」という当然すぎる話。
2011-09-03 12:45:19もっと言うなら、「僕/私/彼らは頑張ってるのだから認めて欲しい」という夢見がちな主張に対する結果主義的な批判。頑張るスキルが付く前の段階に対してはそれでよいと思うけれど、それは学校なりの教育現場の役割な気が。
2011-09-03 12:48:02性感染症が蔓延する途上国に医師を派遣し、病気に苦しむ1万人の人々を治療できたとする。しかし、同じ予算で避妊教育とコンドームの配布を行う事で潜在的な罹患者100万人を救えるなら、前者の「企画」は99万人を殺す事に等しい。
2011-12-26 19:19:20阪神大震災とトリアージについて、佐々淳行氏の言葉を引用。去年京大にいらしたときの講演( http://t.co/ak81ubx8 )より抜粋。
2012-12-01 21:57:18佐々淳行「普段は、ひとりの緊急患者に対して多数の医者看護婦が配備される。しかし、危機発生時は、何人もの患者をひとりの医者が見る。数の大小が逆転する。しかし阪神大震災時、若者達が、大した事の無い怪我で病院におしかけ"自分を先に治療しろ"という争いになった。」
2012-12-01 21:58:48佐々淳行「そこで病院側はどうしたか。先着順にした。待たされている間に、重傷者は、失血/エコノミー症候群などで亡くなっていく。トリアージは行われなかった。"10名の命を救うために1人の命を見捨ててはいけない"と」
2012-12-01 22:00:13佐々淳行「ロサンゼルス ノースリッジ大地震ではトリアージドクターが動員され、患者に札が付けられた。既に亡くなった人には黒の札。重傷者には赤の札。彼らは最優先で治療された。"治療した方が良いかな"は黄色の札。そして、病院に行く事を禁じる緑の札」
2012-12-01 22:01:33佐々淳行「結果、アメリカでは3万の重軽傷者のうち死者は61名だった。日本では、3万人の重軽傷者のうち6000人が亡くなった。赤札が付けられてしかるべき重傷者が治療されず死んでいった。日本では、"自分を治療しろ"とヒステリーを起こした若者も含め、先着順で治療がおこなわれた」
2012-12-01 22:04:20佐々淳行「"人間の命の価値はおなじだから平等じゃなければならない"という主張をする人々が、私の言うところの"彼ら"が大量の死者を作った」
2012-12-01 22:05:14