「この書き出しいかがですか」応答側、「書き出し」
僕の世界の説明書に君は居ない。だからこれは恋ではなく、気まぐれなのだろうと確信している。だからこそ君に深いキスをするし、頭を撫でる。抱きしめる。締め付ける心の奥隅で、僕は繰り返している声を無視しているんだ。きっとどこを読んでも、僕の世界の説明書に君は居ないのだから。 #書き出し
2012-02-26 03:50:37「そこの少年よ」突如として現れた少女はその外見と不似合いな言葉遣いで僕に話しかけてきた。僕は凄い間抜け面だったのだと思う。「なんだ」僕は正気に帰り辛うじて応対した。「わしと契約すれば、何でも願いを…」と少女が言った所で僕は遮った。「お断りします」QB商法はコリゴリ。 #書き出し
2012-02-26 03:31:09素敵な死体とワルツを。素敵なアナタと地獄の果てで。断末魔でリズムをとり、血の海を踏み鳴らす。ランランル。終わることのない永遠のダンスを。アナタと一緒なら地獄も天国。地獄も楽園。救済なんていらないわ。さあ、ひたすらに狂ったように踊り続けましょう。 #書き出し
2012-02-26 03:15:08目が覚めた。狂うような嫉妬で胸が焦げていた。案の定頬が濡れていた。涙。泪。あんなにあの人を愛したのは夢なのか。ああ、あの人。あの人って誰だろう。もう顔も思い出せないなんて、一瞬は何て酷い。胸の痛みは未だ消え去っていないというのに。 #書き出し
2012-02-26 02:54:27歯が痛い、と思ったらその奥歯から何かの芽が出ていた。どうやら神様が変換をミスして親知らずの歯の代わりに葉を生やしてしまったらしい。芽はどんどん伸びて双葉、本葉と順調に生育していった。冬虫夏草と違って葉緑体で光合成しているので、逆に養分まで供給してくれて格好以外は良い。 #書き出し
2012-02-26 02:43:15屋上でただ一人、黒猫がにゃあと鳴く。それが今宵の集会の合図だった。都会では猫たちの集会の場所だった空き地もだいぶ減ってきた。最近の集会は、もっぱらビルの屋上と相場が決まっていた。今夜の召集役の黒猫もそんな変遷を目の当たりにしてきた。「住みにくい世の中だ」にゃあと呟く。 #書き出し
2012-02-26 02:30:28いつもと変わらない朝だった。その日僕はいつもと同じ時間に目を覚ましいつもと同じ時間に朝食をとりいつもと同じ時間に家から出た。ここまではいつもと変わらなかった変わったのはここからだたまたま通った信号が全て赤でたまたま横から車が飛び出して来なきゃ僕はこうはならなかったんだ。#書き出し
2012-02-26 02:26:15目が覚めた。狂うような嫉妬で胸が焦げていた。それにより僕はあれが夢ではない現実の出来事であったと改めて痛感する。愛する彼女が結婚した。僕以外の男と。許せない許せない許せない。ちくしょう悔しいあんな奴あんな奴!「絶対にお義父さんなんて呼ぶものか」僕は唇を噛み締めた。 #書き出し
2012-02-26 02:25:25眺めていた。クモの巣状に割れた鏡を熟と。眺めていた。引っ越しはもう直ぐというのに片付けが全然捗らない。そんな時に愛用の鏡をうっかり割ってしまったのだ。どうしよう、ますます片付けが手につかない。新しい土地へ移るなら家具も新調するチャンスなのに全然そんな気にならない。#書き出し
2012-02-26 02:23:00私を呼ぶ声が耳障りで私は私の鼓膜を破った。気付けばまだ聞こえるおかしい確かに私は鼓膜を破ったはずだしかし私を呼ぶ声はどんどん大きくなるまるで近づいてるようだ ここには私しかいないのに。そこで私はふと気付いたもしかしたら心が呼んでるのではと私は心を破いた。 #書き出し
2012-02-26 02:16:44投げつけた石が月を揺らして、宵闇は足下で蜷局を巻いている。漆黒の闇の中を蠢く影があった。奴らは人を襲う。有り体に言えば妖かしの類だ。そんな悪しき妖かしを封ずるのが我が血族の命脈であり、土御門本家を裏から支えてきた陰陽師部隊であった。今宵も休ませては貰えぬようだ。 #書き出し
2012-02-26 02:11:56雨の気配が世界を覆い尽くしていた。そう、ちょうどラジオのノイズと似た音が遠くまで響いていた。どこにも繋がらない音。誰とも繋がらない、置き去りの世界。水滴の音に気付いて振り返ると、ずぶ濡れの彼が「ただいま」と困ったように笑った。 #書き出し (@s_shuho)さんのお借りしました
2012-02-26 02:05:56羊水のなかでみるような、なまぬるくてあたたかい夢。起きてからもいつまでも肌にまとわりついてくる。ゆうべ普通に寝たはずなのに。ぶつぶつ文句を言いながらふと顔を上げると、目の前に見知らぬ少女の姿があった。「??」目を瞬かせた瞬間少女は姿を消して。妙に寂しそうな顔をしていた。#書き出し
2012-02-26 01:53:56わたしが寝たふりをすると、彼はきまって美晴ちゃんに電話を掛ける。裸のまま眠るわたしを起こさないよう、低く、溜息を吐くみたいな声で、出来る限り手早く。「うん、もう寝たよ」わたし、ちゃんと聞き耳立ててる。「大丈夫。ちゃんと別れるから」わたし、ちゃんとナイフ握りしめてる。 #書き出し
2012-02-26 01:53:28羊水の中でみるような、なまぬるくてあたたかい夢。寝る直前まで彼女に甘えていたせいか、夢の中でも僕は彼女に抱かれ、甘えてしまっている。先ほどまでの激しい快楽とは異なる、ゆったりとした心地よさの中で、僕はふわふわと浮かんでいる。目が覚めたら・・また、甘いひと時を過ごそう。 #書き出し
2012-02-26 01:47:39その羽ばたきは次への福音。幸運の青い鳥は、僕の前に現れないままだ。小さな雀を捕まえて、強引に青色で染めてみた。 一昔前のカラーひよこのような雀は僕を残して飛び立った。その羽音を聞いて、僕はなんて愚かなことをしたのだろう――と、今更思うのであった。 #書き出し
2012-02-26 01:37:38その羽ばたきは次への福音。そう言い残して彼は僕らの前から姿を消した。幼い頃からずっと面倒を見てくれていた近所の兄さん。僕が好きな人が出来たと打ち明けた時も本当に嬉しそうに応援してくれた。彼女と一緒に3人でよくドライブにも行った。そんな兄さんに僕らの進路を相談した頃から #書き出し
2012-02-26 01:28:02その時も空は全てを見つめていた――。どうしてだろう、空はずっと僕らを見ているはずなのに、その時は空が見つめていることをひどく意識した。「ねぇ……」吐息と共に溢れる君の声。優しい悪魔のような声に惑う。「「好きだよ」」こぼれたのはどちらが先か。空よ、どうか僕らを見ないで。 #書き出し
2012-02-26 01:16:04親指を舐め、味を確かめた。錆びついた味。この身体を巡る、鉄錆の味だ。どれくらいの時を、この身体で過ごしたのだろう。まだ、時間は残っている。「いつか朽ちるなら」まだ錆びているだけと言えるのだろうか。オイルを足したら、すこしは滑らかになるか? ガソリンの匂いが鼻を突いた。 #書き出し
2012-02-26 00:05:46