子安先生②

2012/02/06~02/08 麦と兵隊 沖縄問題
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子安宣邦 @Nobukuni_Koyasu

3.己れの運命とは、日本という歴史であり、伝統であり、民族であり、国語である。小林はいう。「『麦と兵隊』には別に新しい見方とか意見があるわけではない。ここにあるのは寧ろ古い、僕等日本人に大へん親しい昔ながらの或る精神だ。(続)

2012-02-22 22:34:50
子安宣邦 @Nobukuni_Koyasu

4.(続)この精神は何々主義という様な名目によって概念化され宣伝されている様なイデオロギイではない。それは誰の心にも共感を起こさせる或る生きた民族の気質である。」(「事変と文学」)私は『麦と兵隊』を小林とともに読んだ。そしてこれが昭和戦中期の国民的文学である理由を理解した。

2012-02-22 22:44:09
子安宣邦 @Nobukuni_Koyasu

5.私の『麦と兵隊』論は今週末25日(土)、早稲田大学14号館10階1060教室にて、午後1時から。また3時から、『古事記』成立の問題に関わって、『古事記』の「序」の購読をします。参加は自由、ぜひご参会ください。

2012-02-22 22:51:08
子安宣邦 @Nobukuni_Koyasu

1.火野葦平の年譜を見ると、昭和12年11月5日に火野の属する第18師団は杭州湾北沙に敵前上陸。南京入城後、年末杭州に入城して駐留したとある。この杭州敵前上陸とその後の戦闘が『土と兵隊』に、杭州駐留記が『花と兵隊』に、翌年の徐州会戦が『麦と兵隊』に書かれた。

2012-02-25 00:08:44
子安宣邦 @Nobukuni_Koyasu

2.年譜からすれば火野はいわゆる〈南京事件〉時の南京に兵隊として入城したことになる。だが火野は〈南京事件〉について触れることはない。彼の「兵隊三部作」は〈南京〉前後の会戦などを扱うものである。では彼にとって〈南京事件〉はなかったのか。

2012-02-25 00:15:06
子安宣邦 @Nobukuni_Koyasu

3.火野が彼の作品からどのように省き、削り、隠そうとも、〈南京事件〉ははっきりとこれらの作品の背後に存在する。『土と兵隊』の11月13日の一節に、火野が杭州戦でトーチか攻略に活躍し、多くの中国兵を捕虜にしたことが書かれている。だがこの捕虜がどう処理されたかは書かれていない。

2012-02-25 00:22:54
子安宣邦 @Nobukuni_Koyasu

4.この箇所は発表前に削除されたのであろう。戦後版では火野の手で補われている。だがこの場面の貴重な証言を小林秀雄がしている。彼は杭州で火野の口からこの事件を聞いているのである。

2012-02-25 00:26:46
子安宣邦 @Nobukuni_Koyasu

5.「火野君は七人の兵を連れ、一番大きな奴(トーチカ)に、機銃の死角を利用して近づき、通風筒から手榴弾を投げ込み、裏に廻って扉をたたき壊して跳り込み、四人を斬って、三十二人の正規兵を×××で縛り上げたと言う。(続)」

2012-02-25 00:34:55
子安宣邦 @Nobukuni_Koyasu

6「(続)一たん縛った奴は中々殺せんものだ、無論場合が場合なので、わしは知らなんだが、夕方出てみると壕のなかに××××××××××おった。中に胸を指して××くれという奴があっての気の毒で××てやったがな。」(小林「杭州」、戦後版からは削除)

2012-02-25 00:42:54
子安宣邦 @Nobukuni_Koyasu

7.これは火野の戦後版の書き込みとは全く違う武勇談という語り方である。これは南京入城の一ヶ月前の日付をもった虐殺事件についての語りである。これは戦争に伴う当たり前の事件として語られている。〈南京事件〉は起こるべくして起こった事件である。

2012-02-25 00:50:05
子安宣邦 @Nobukuni_Koyasu

8.小林の記すこの証言は、戦後の彼の著作集・全集からは削除されている。削除することで、彼らは〈事件〉を内側に塞ぎ、抑え込んだのだ。だが〈事件〉が抑え込まれたことを知らない、バカなお調子ものが〈事件〉が無かったといったりする。これは隣国を二度犯す、犯罪的な物言いである。

2012-02-25 00:58:41
孫崎 享 @magosaki_ukeru

メディア6:自ら判断するなという指示書。高田氏の指摘「“自由に書けと言われても困る”と戦前の記者権力に従順な姿勢は何十年も変わっていない」、我々は日本のメディア報道は8割が操作情報だということを念頭において対応すべし。

2012-02-26 09:23:56
子安宣邦 @Nobukuni_Koyasu

私に〈沖縄問題〉についての考え方を教えた『琉球の「自治」』(藤原書店)の著者松島泰勝さんから新著『琉球独立への道』(法律文化社)を頂いた。「琉球は国家なきネイションである。」その「琉球の愛国者」である松島さんは「日本の愛国者」にこの書をぜひ読んで欲しいという。

2012-02-28 10:45:40
子安宣邦 @Nobukuni_Koyasu

「日本の愛国者は、琉球と日本やアメリカとの関係性、琉球という別の国(ネイション)の存在、独立の意味を考えながら、また日本は本当に独立しているのかを自問しながら読んでほしい」と松島さんはいっている。

2012-02-28 10:50:38
子安宣邦 @Nobukuni_Koyasu

これは日本人に対する大事な問いかけだ。〈沖縄問題〉とは、アメリカとの同盟(従属)関係における日本の国家的問題として沖縄があることを意味している。〈日本の自立〉を問うことは、沖縄の〈琉球としての自立〉を求めることと相関的である。〈沖縄問題〉の終局的解決とはそういうことである。

2012-02-28 10:59:59