三題噺・その3

自己反省用。でも公開するという矛盾。
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今回のお題

残骸 @doppelchair

さんま・秘密・英語で噺。 #3ws_ver1 http://t.co/hw4QKWUG 一つ目が一瞬芸人のことに思えた…でも、その解釈でもOKかな

2012-02-28 16:35:43

本文

残骸 @doppelchair

@null (とあるふ頭にて、怪しい男が二人)「どうだ?取引の方は」「順調です。間もなく相手が来ます」「そうか。相手は外人だったな?」「はい。東南アジア系ですが」「ん。相手をするのは全てお前に任せる。俺は英語が話せない」「了解しました」「しかし…今はこんなんが売れるんだな」

2012-02-28 22:17:27
残骸 @doppelchair

@null 「一応、普通の方法では手に入らないですからね」「でも、ただの缶詰だろ?それも、昔は同じようなのが溢れてたらしいじゃねえか」「その『昔』は一世紀近く前ですよ。今じゃ魚は高級品です。それに、特にさんまは全く手に入りません」「そうなのか?」

2012-02-28 22:21:49
残骸 @doppelchair

@null 「さんまは突然変異と病気の流行によって、数が激減してしまったんです。今でこそ、様々な対策で数は増えましたが、今だに保護生物です」「そうなのか…いや、魚なんて見たことも無いからな」「今じゃ当たり前ですよ、それ」「でも、そんなもんを危険を犯してまで、食べたい奴がいるのか」

2012-02-28 22:27:34
残骸 @doppelchair

@null 「昔食べたことがある人が、歳を取って金持ちになると、食べたがるみたいですね」「みたいだな。わざわざ非合法なルートにまで手を出しやがって…そんなにうまいのかね」「さあ。私も食べたことありません」「俺もねえ。魚についての知識すらほぼねえ。分かってるのは、儲かることだけだ」

2012-02-28 22:31:08
残骸 @doppelchair

@null 「まあ、その金持ちの道楽のお陰で俺らも飯が食えてるわけで、文句もねえけどな。このチェックの厳しさだけは勘弁だが」「流行ってるみたいですからね、さんまの缶詰密造」「ああ。だからわざわざ、海外の会社を経由させるような真似をしなきゃいけねえ。面倒くさいことこの上ねえな」

2012-02-28 22:41:30
残骸 @doppelchair

@null 「でも、それが一番安全ですからね。実際にモノは国外に出ませんし」「そうだな。そんかわり、俺みたいな英語のできない奴が困るわけだ。お前頼みになっちまうが、頼んだぜ」「任せて下さい。ちゃんと指定された連絡先に、指定された文章を伝えましたから」

2012-02-28 22:49:33
残骸 @doppelchair

@null 「ああ、それも面倒臭いやり方ですまねえな。お前みたいな新入りには、まだ製造元を直接教えるわけにはいかんのよ。決まりでな」「いや、用心するに越したことは無いですから、気にしてないですよ」「すまねえな。そろそろ教えても良いかどうか、上にかけあってみるからよ」

2012-02-28 22:53:17
残骸 @doppelchair

@null 「ありがとうございます。では、せっかく信頼して下さったので、私に少しばかりのお礼をさせて下さい」「…お礼?いやいや、礼には及ばんよ」「いえ、させて下さい。私の『秘密』を…話させてください」「…秘密?」「はい、私の『秘密』です。実は、ずっと隠していたことがあります」

2012-02-28 22:57:25
残骸 @doppelchair

@null 「…」「そんなに改まらないで下さい。大した事ではありません…さて、私の『秘密』を話す前に、一つ聞きたい事があります。落語、見たことありますか?」「…いきなりなんだ。落語?随分昔に、一回きりだが…」「『目黒のさんま』という噺はご存知ですか?」「またさんまか。知らねえな」

2012-02-28 23:04:22
残骸 @doppelchair

@null 「では、そこからお話しましょう。ある日殿様は、お供を大勢引き連れて、目黒の方へと鷹狩に出掛けました」「…」「ところがお供が弁当を忘れたため、一行は空腹に悩むこととなります。そこへ漂ってくる旨そうな匂い。どうやら近くで、さんまを焼いている人がいるようです」

2012-02-28 23:13:20
残骸 @doppelchair

@null 「お殿様は興味を示しますが、お供は『あれは殿様が食べるような魚ではありません。下衆のものです』ととどめます。しかし結局、『そんな事を言っている場合か』と殿様に押し切られ、殿はそのさんまを食すこととなるのです。」

2012-02-28 23:16:31
残骸 @doppelchair

@null 「乱雑に焼かれたさんまは、しかしとても美味しく、殿様はその味を大層気に入ってしまうのです」「さんま、旨いのか」「みたいですね。それからずっと、さんまをまた食べてみたいと思い続けていた殿様は、ある日、遂に臣下の者にさんまを準備するよう命じます」

2012-02-28 23:18:55
残骸 @doppelchair

@null 「よっぽど食いたかったんだな…」「大急ぎでさんまを準備する家臣たち。ところが、やれ『脂が多いと体に悪い』と脂を抜き、『刺さると危ない』と骨を取り、『形が崩れた』とお椀に入れるなど、余計なお節介でさんまの良さはすっかり台無し。お殿様も、その不味さに顔をしかめます」

2012-02-28 23:26:25
残骸 @doppelchair

@null 「よく分からんが、そこまですると別モンになりそうだなあ…確かに」「そこでお殿様は、家臣の者にこう尋ねました…(ブロロォォォ)…あ、来たみたいですね。では、話しの続きはまた後ほど」「…なんでえ。いいとこなのに…まあいいか。仕事仕事」「では、少し話してきますね」

2012-02-28 23:30:45
残骸 @doppelchair

@null 「おう、任せたぜ。…さて、これだな…うん、問題は無さそう…だ?おい…おい!これいったいどういうことだ!?」「どうしました?」「お前本当に指示通りやったのか?これ、いつもんとこから来たブツじゃねえぞ!目黒の密造所のヤツじゃなきゃあ、今回の客は満足しねえぞ……………あ」

2012-02-28 23:34:56
残骸 @doppelchair

@null 「…なるほど。やはり、目黒でしたか」「…まさか…テメエ…」「おっと、手荒な真似はよしてください(ジャキッ)」「…!」「手を上げろ!…っと、言われなくとも分かりますよね」「テメエ…ダマしてたな…!」「ええ、そうなりますかね。私は潜入捜査官ですから」

2012-02-28 23:38:04
残骸 @doppelchair

@null 「いやあ、苦労しましたよ。さんまの缶詰密売組織の尻尾を掴んだはいいものの、肝心の密造所がどうしても分からなかったんですから。ですから、こんな真似をさせて頂きました」「クソッ…秘密ってのも、それの事かよ」「ええ。ですから、言いましたよね?『大した事では無い』と」

2012-02-28 23:42:23
残骸 @doppelchair

@null 「…ケッ。ムカつく野郎だな…」「褒め言葉として受け取っておきましょう。にしても感心しましたよ。警戒の厳しい海沿いを避け、あえて内陸に密造所を作ることで、大規模な設備を整えて、高品質の密造品を作れるようにしたのですから」「…え?そうなのか…?」

2012-02-28 23:45:10
残骸 @doppelchair

@null 「そうですよ?多分、魚の知識に乏しいあなたのことですから、さんまを『川に住んでいる』ものと勘違いして、採れる場所が近いから内陸にしたのだとでも思ってたのでしょうけど…違います。さんまは、『海に住む』魚ですからね。まあ、川でもごくたまに、採れるみたいですけどね」「……」

2012-02-28 23:50:09
残骸 @doppelchair

@null 「そして、私の潜入捜査である程度、密造所の場所は絞れていたわけですが、ダメ押しが欲しかったので、このような罠を仕掛けたというのが今までの流れですね」「…チクショウ」「ああそうだ、先ほどの噺の続き、お聞かせするのを忘れていました」「いらねえよ。知りたくないね」

2012-02-28 23:54:04
残骸 @doppelchair

@null 「まあまあ、そう言わずに。あと少しですから。…さて、お殿様は家臣にこう聞きました。『このさんまはどこで仕入れた?』と。家臣はこう答えます『日本橋の魚河岸です』と。それを聞いたお殿様は、こう言ったのでした」「…」

2012-02-28 23:58:44
残骸 @doppelchair

@null 「『ううむ、それはいかん。やっぱりさんまは、目黒に限る』と」「…!」「お後がよろしいようで…」 終

2012-02-28 23:59:56