おはなしのもと・6

ネタのログ。二月までの分
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酔宵堂 @Swishwood

その未来は、覆らない。——わたしが視てしまったのは、流星のような彼女の最期、その光芒。ほんの少しの諦めと失意を、怒りに鎧って駆け抜ける、眩し過ぎる横貌。守りたかったものを背に、彼女は決して止まらない。その疾走の果てに、たとえ何が待っていても。——彼女らしい、まっすぐな選択だった。

2012-02-08 04:36:03
酔宵堂 @Swishwood

例えば8話みたいに、雨降るバス停で。ほむらのことを、さやかが詰ったとする。多分一度、普段とは段違いの素質を発揮したとかそう云うことがあって、その落差に手抜きかと憤ったとかそんなんだ。云うだけ云って、雨の中駆け出していくんだろう、また。そして多分、泣きながら。

2012-02-05 06:52:13
酔宵堂 @Swishwood

ぐうぜん街に出ていて、そんなさやかを引き止める——杏子、だ。ひとつしか無い傘に、押し込んで。ふたりは、家路を急ぐ。すっかり濡れたのは、杏子とて同じこと。勧められるままに上がる、初めての部屋。

2012-02-05 07:00:56
酔宵堂 @Swishwood

とん、と背中に当たる感触があるまで、気づかなかった。「……ゴメンね、手間ばっかりかけさせちゃって。ちょっと、こうしてていいかな」ああ、とだけ答えて。水栓を捻りながら、あたしは尋ねてやる。「懺悔でもするかい? こう見えてもあたし」それはいいと、無言で両肩を掴む手がそう告げていた。

2012-01-23 06:52:20
酔宵堂 @Swishwood

「フラれたんなら流石のあたしでも諦めぐらいつけてやるわよ。そうじゃなくてさ……云えなかったんだよね、結局」

2012-01-14 04:06:40
酔宵堂 @Swishwood

「こんな風になってさ、あの時最初に嫌ってほど聞かされて、そん時はそれでもいいや、って思ったのにね。うん、アイツにもちゃんと訊いたんだよ? このカラダで子供産めるの、ってさ」「でも、結局云えなかった。出来るって云われても、あたしがきっとその子を怖がってる」

2012-01-14 04:12:33
酔宵堂 @Swishwood

「だから、仕方ないんだよ。もうあたしは最後のさいごまで、魔獣を殺して殺して殺しまくる、それしか残ってない石ころなんだよ」

2012-01-14 04:17:37
酔宵堂 @Swishwood

「わかってる。そう云う、ことじゃない。あたしのほんとうに大事なことは、そんなんじゃないんだ。それに気付けないで、いや気付いてもそうじゃないって思いたくて気付かないフリしてた。そしたらこんなんなって、ワケわかんなく……なっちゃったよう」

2012-02-07 03:56:48
酔宵堂 @Swishwood

「あたしは結局、親もきょうだいも……捨てちまった」「巻き込みたくなかったんだよね。仕方ないよ」「それでも、さ。どんな理由があっても、それは許されちゃいけないのさ」「あたしは。そこまで覚悟出来るあんたを凄いと思うよ。何も出来なかったあたしと違って」

2012-01-31 04:53:49
酔宵堂 @Swishwood

「ねえ、お願いがあるんだけど。明日さ、もし"出た"ら……一人でやらしてくんないかな。きっちり白黒付けたいんだ、自分自身にさ。そんでさっき云ったこと、きちんと自分で仁美に話すよ。そうしないと……収まんないわ」

2012-01-30 05:28:58
酔宵堂 @Swishwood

思えばその数年が、わたしの生涯で最も穏やかな日々ではなかったか。

2012-01-24 04:41:26
酔宵堂 @Swishwood

そうか。この部屋とも、もうお別れか——随分長かった、と思う。あの事故からもう、何年か。その倍は生きてきた。ここで過ごした日々の、そんな色々なことを思い出す。「荷物、これで全部だっけ……ってなにぼーっとしてんだよ。みんな暇じゃないのに手伝ってくれてるんだぞ」ああ、ごめんなさいね。

2012-01-27 03:38:49
酔宵堂 @Swishwood

「そこのチェストで最後だと思うの。何か残ってないかしら」わかった、と戸を開く音。「……おい、こりゃ……うは」「どうしたの」「棚の奥にこんなん残ってやがったよ」手渡される、堅い表紙とずっしりとした重み。「そういやあの時フィルムのよさを力説してたよな?」あの日の、アルバムだった。

2012-01-27 04:25:49
酔宵堂 @Swishwood

「彼女に付き従うのはNo.6、規格外個体だ。ボクらのネットワークでも完全には捕捉できない。痕跡と歪曲値の変動を辿ればある程度の予測は可能だけれど」

2012-01-21 11:16:51
酔宵堂 @Swishwood

「まあ、一応その分類ではボクはNo.9と云うことになるね」

2012-01-21 11:23:58
酔宵堂 @Swishwood

「あなたも……インキュベーターよね?」「そうよ? ん、そうね……アイツは9番目だからあんな名前にしてたんだっけか。じゃ、あたしは6番目なんだよね、たしか……じゃ”ムゥ”でいいわー、よろしくね」純白の軀、真紅の瞳、長い”耳”。明らかにアレと同類の筈なのだが……どうにも、調子が狂う。

2012-01-24 03:26:26
酔宵堂 @Swishwood

そう云えば別れ際にアイツが云っていたか。「ボクは今しばらくここを離れることができない。だが心配はいらないよ、必要になればすぐに代替端末が派遣される」それがコイツ、か。「自己紹介が必要かしらね?」「どうせ、放っておいても勝手に喋るつもりでしょ」「さぁっすがぁ。わーかってるわねぇ」

2012-01-24 03:32:41
酔宵堂 @Swishwood

「んじゃ」そう云った途端。瞳の光が消えた。「Incubator Category No.6。雌性体型擬似情緒処理試験運用モデル、設定済み個体識別コード”ムゥ”」そこまで云うと瞳が光を取り戻す。「……ざーっとそんな感じねー。なんか、質問ある?」「擬似情緒……成程ね。道理でお喋りな」

2012-01-24 03:48:41
酔宵堂 @Swishwood

メンタルフレームが小娘な感じのインキュベーターなど。ジュウが居る以上キュウがキュウである理由は何らかの数字に由来するのではないか。だとすればタイプかカテゴリを表すのでは、と云う発想で。ネコっぽい擬態の9や10の他にも色々な小動物に擬態したモデルがあるのではないかと云う。

2012-01-24 03:52:25
酔宵堂 @Swishwood

「……ヒュウ。また物騒なもん拵えたね」「やっぱり引金がある方が性に合ってるみたいね、わたし」漆黒の魔弓は主の意を承け、更に獰悪な弩弓へと変貌していた。「懐かしむのもいいけどさ。ったく、黙ってりゃ可愛いのに」「ブチ貫くわよ」「へいへい……っと、お出ましだ。んじゃひと暴れすっかァ?」

2012-01-16 05:38:50
酔宵堂 @Swishwood

魔法とは何か。世界を歪ませ、その戻る力を「拾って」条理へと干渉する。いや、原理などはどうでもいいのか。ただそれが、世界の摂理に反すること、それだけは確かなことだろう。但し、世界の摂理が人間の存続を認めるかどうかとは——関係のない話だ。

2012-01-17 02:49:58
酔宵堂 @Swishwood

「あ、そっか。生きてるってことは世界に喧嘩売ってるってことだ」

2012-01-17 02:54:59
酔宵堂 @Swishwood

「……あれ? じゃあ、この力は……世界を……どうしたい、の?」

2012-01-17 03:08:37
酔宵堂 @Swishwood

(だいじょうぶだよ)え なに その なにこれ だいじょうぶ って きえ え な……

2012-01-17 03:18:46
酔宵堂 @Swishwood

あとには小さな指環が残って、それさえも消えた。 ただ、それだけだった。

2012-01-17 03:20:20