『シスター&シニック!』(第16集)

いつもお読みいただきありがとうございます。 『シスター&シニック!』の第16集です。 おおよそ「妹が兄に迫る話」です。 「妹」と「兄」のかけあいをお楽しみください。
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Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹が白いガーゼマスクを着けて部屋に入ってきた。そしてそのまま僕のベッドに潜る。礼儀として僕は聞いた。「風邪か」妹は答える。「お兄ちゃん。これはね、唇をあえて隠すことで、お兄ちゃんに私の唇を想像させようという作戦なの」そうして妹は眠った。僕は来客用の布団を敷いた。

2012-02-09 20:35:44
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹は手に持ったライトの光を僕にかざして、テーブルの表面を拳で叩く。「お兄ちゃん。聞かせて。私のことをどう思っているのかな」「妹だと思っている」「くぅ。じゃあ、妹ってなに」「兄を拘束する存在だ」「じゃあ、そうするよ」満足した妹はふたり分のかつ丼をテーブルに置いた。

2012-02-10 22:21:48
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹のからだは氷だった。「お兄ちゃん。太陽のような抱擁で氷の私を解かして」僕は無言で応えた。「なんという冷たい眼差し」そう言いつつ妹は熱い視線を僕に送った。寒気を感じた。からだが震える。「風呂にはいる」「いっしょにはいろう」ひとりで風呂にはいった。からだが解ける。

2012-02-11 21:10:15
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹の気分が谷底に沈んでいた。そのからだを床に投げ出し目を伏せる。どうしたものか。「お兄ちゃん」妹が起き上がった。「いっしょにごはんを食べよう。そのあといっしょに私を食べよう」妹は兄を千尋の谷に突き落とすだろうか。僕は崖の前で踏みとどまり、食事の用意に部屋を出た。

2012-02-12 21:44:26
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹がティシャツに短パンというスタイルで僕の部屋に登場した。「お兄ちゃん。練習しよう」「何の練習だ」「相手の存在を確かめる練習だよ。ほら、お兄ちゃん。私のからだを貸してあげる」僕は動かずに妹を見る。「お兄ちゃん。見ないで」「そういう練習じゃないのか」「見ないで!」

2012-02-13 23:53:48
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹はテーブルの上でチョコレートを切り分けた。「お兄ちゃん。チョコレートをどうぞ」すると妹はチョコレートをひとつ口に含め、それから「んー」と唇をつきだす。僕は構わずテーブルの上のチョコレートを食べた。「美味しい」「ありがとう」部屋にチョコレートの甘い香りが満ちた。

2012-02-14 21:56:17
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹は上目遣いをして言った。「お兄ちゃん。本当はね。お兄ちゃんは私の本当のお兄ちゃんなんだよ。私の言ったこと、信じる?」僕は何も言わなかった。すると妹は「偽物の妹が欲しかった?」と聞いた。そのとき僕は口をすべらした。「お前は僕の妹だ」「お兄ちゃん!」「抱きつくな」

2012-02-15 21:28:48
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel アニメーションを観ているとき、妹が言った。「二次元の妹と三次元の兄は『結婚』してもいいんだよね。もしも私が『境界』を越えたら」「行くのか」「行かないよ。お兄ちゃんがひとりになっちゃう」そのときアニメーションが終わった。電源オフ。部屋が静まった。妹は僕の隣にいる。

2012-02-16 21:22:26
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹は僕のベッドに横になってごろごろした。毛が抜け落ちるからやめて欲しい。「ほら、どいて」僕がそう言うと、妹は横にずれて一人分のスペースを設けた。「はい、どうぞ」僕は毛布を妹の全身に被せた。すると妹は言う。「お兄ちゃんの匂いと温もりに溺れる」僕は毛布を引っ張った。

2012-02-17 20:43:05
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹が僕の髪の毛をブラッシングしたいと言ってきかなかった。僕は首を振った。「やだよ。お前に背中を見せたくない」すると妹は言った。「何を今更」それもそうだった。何を今更、だ。僕は床に座った。妹は後ろで黙々と髪を梳かす。「くしゅ」妹のくしゃみ。眠っていた僕は目覚めた。

2012-02-18 21:23:06
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹は僕の着ているシャツのボタンをひとつひとつ外した。寝起きの僕は状況判断に手間取って、なかなかその作業を止められなかった。ついに妹が最後のボタンに手をかけたそのとき、ようやく声が出た。「こら、やめろ」「あ、お兄ちゃん、おはよう」部屋の暗闇が妹の表情を隠していた。

2012-02-19 20:38:47
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹のメール「件名:助けて 本文:お兄ちゃん。シャンプーが空。浴室に来て。」 僕「件名:RE:助けて 本文:自分で何とかしろ。」 妹「件名:お兄ちゃんは 本文:髪を洗わない女性が好きなのかな。」 僕「件名:RE:お兄ちゃんは 本文:どこで携帯電話を操作している。」

2012-02-20 21:31:56
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹がドライヤーを持って浴室に入ってきた。ドライヤーのコードの先は電源にさしてある。「お兄ちゃん。私に感電するのとドライヤーに感電するのだったらどっちがいい?」「ドライヤーに感電する方かな」「そんなお兄ちゃんには私のキスをあげちゃうぞ」僕は急いで風呂から上がった。

2012-02-21 22:19:40
Shimada Yuichi @chimada

「まったく、お兄ちゃんは妹をなんだと思ってるんだ。おもちゃ扱いして。おもちゃ扱い? なるほど。大人のおもちゃ扱い――」「黙って早くからだを起こして」「お兄ちゃんの手のひらの感触をもっともっともぉっと味わいたい」僕は手を離した。「おっと」妹のからだは床に倒れる前にバランスを保った。

2012-02-22 21:26:17
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹と銭湯に行った。僕は銭湯の前で妹がでてくるのを待った。「おまたせ、お兄ちゃん。湯上りの妹だよ。燃える?」「湯冷めしそう」「大変。私が温めてあげる」「もう一度湯につかってくる」「お兄ちゃんの冷たさに応える」僕たちは銭湯の前の自販機で一緒に冷たいジュースを飲んだ。

2012-02-23 21:50:42
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹が携帯電話を僕に向けた。写真を撮ろうとしているのか。「お兄ちゃん。涙目になって、ダブルピース」僕が首を横に振ると、妹の携帯電話は音を鳴らす。ビデオ録画開始の合図。妹は僕をベッドに押し倒してその上に跨った。「あとで一緒に観よう」僕は両手で妹のからだを押し返した。

2012-02-24 21:45:02
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹が記念日でもないのに「ふたりで一緒に食べよう」とホールケーキを買ってきた。「お代は結構。代わりにひとつお願いを聞いてくれる?」僕は妹の言うとおりに包丁でケーキに触れた。妹は僕の手に手を重ねた。「お兄ちゃんと私の初めての共同作業です!」包丁がケーキを切りわけた。

2012-02-25 22:07:52
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹が髪を切ってきた。「どう、お兄ちゃん、似合う?」僕は妹の新しい髪型を見て何も言わなかった。すると妹が部屋にあるハサミを持ちだして僕に渡した。「お兄ちゃん。お兄ちゃんごのみにカットしてもいいよ」「もしかしたら、その髪型もいいかもしれない」「ありがと、お兄ちゃん」

2012-02-26 21:16:31
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹はソフトクリームを舌で舐めた。それからおもむろに僕にソフトクリームを向ける。僕は「いらない」と断った。すると妹はソフトクリームを口に含め、僕に唇を向けた。僕は妹の唇を避けて、コーンからソフトクリームを歯でかじった。妹は僕の歯形のついたソフトクリームを見つめた。

2012-02-27 21:29:23
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹がケーキを買ってきた。「一緒に食べよう」僕は皿の上の白いケーキを見た。特徴のない普通のショートケーキ。真っ赤ないちごが乗っている。僕はケーキを一口食べた。眠りから目覚めると、目の前に妹の顔。「お兄ちゃん。私が呪いを解こうと思ったのに」「残念でしたね、王子様」

2012-02-28 21:31:40
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 「『シスター&シニック!』について。これは家を克服する男女を描いた作品です」「違う。僕たちは兄妹だ」「あ。登場人物による楽屋落ちの話にしないで。まぁ、楽屋だったら私たち兄妹じゃないから愛し合えるね」「お疲れ様でした」「ごめんなさい。私のお兄ちゃんでいてください」

2012-02-29 22:02:11
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹が僕に「相談がある」という。どうするか迷っていると、妹の様子が目に入った。「言ってみろ」「あのね。お兄ちゃんが性の悩みを私に打ち明けてくれないの」「今、打ち明けよう。実は、妹に悩んでいる」「私のからだが悩ましい?」僕はポーズをとる妹の足をはらって床に転ばせた。

2012-03-01 21:05:37
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹が下着姿で僕の部屋に登場した。下着は僕のワイシャツだった。それ以上確認したくはない。自分の下着を身につける妹に僕はたまらず「脱げ」と言いそうになったが、それを思いとどまる。すると妹は「わかったよ」と言って、ワイシャツに手をかけた。僕は部屋の電気を消した。

2012-03-02 22:30:03
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel 妹は僕のからだにまたがった。「どいてください」と僕が丁重に断ると、妹は「ごめん、お兄ちゃん。よく聞こえなかった。もう一度言ってみて」と微笑んだ。僕は妹の耳を口元に引き寄せ、「どけ」と言った。妹はからだの力を抜いて僕のからだにその身をあずけた。妹の重みを感じる。

2012-03-03 21:55:35
Shimada Yuichi @chimada

#twnovel ベッドのシーツに見慣れない赤い染みが付いていた。「何もなかった」と僕は思わずつぶやいた。そう、何事もなかったのだ。「お兄ちゃん」気づくと妹が後ろに立っていた。「相手の子にはやさしくしてあげた?」妹がシーツを握りしめて僕を見た。僕は暗転する意識の中で記憶を探った。

2012-03-04 21:43:36