工房径ついのべ集 2012年３月

工房径（koubou-kei） @pleaseinuplease

#twnovel 家に入れてと迫る俺に「愛情はあるの」なんて君は言うけど。なら君の言う愛情って何さ？　映画見て食事して、家まで送ってさようなら？　元はと言えば、君の唇が林檎飴みたいに真っ赤に光っているのが悪いんだ。「入ってもいいけど、お茶だけね？」なあ、ほんとは君、魔女なんだろ！

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#twnvday 春になったら会社を辞める君を、近くの桜並木に呼び出した。青葉の茂る夏も、紅葉降りしきる秋も、君のことばかり想いながら歩いたこの道。まだ固い蕾しかない樹の下で、僕は目を閉じる。咲け、咲け。瞼の奥には満開の花吹雪。目を開ければ、君が泣きそうになりながら立っていた。

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#twnvday 「これ台湾土産の花開くお茶」ふらり私の部屋に訪ねてきた彼。悪友の位置に甘んじて３年、想いを告げれば二度と会えなくなりそうで。茶葉にお湯を注ぎ、ふたりカップを見つめる。いっそ打ち明けてしまおうか。ゆっくりと綻ぶ赤い花が見えたとき。「好きだよ」先に口を開いたのは彼。

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#twnvday 去年のホワイトデイ。職場から「やっと水が出た」とメールをくれたあなた。２日後、地震でめちゃくちゃになった部屋からプレゼントを発掘してくれた。あなたと息子と、今日も同じ家に眠り、あたたかい食事をとれることに感謝を。今日もらった桜の紅茶を手に、私の心も花開く。

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#twnvday 「ホワイトデイの買い物つきあえ」まさか本命チョコの彼から頼まれるだなんて。幸せそうにペアのカップを手に取り「俺の分も揃いで買うかな」。どうしてそんな残酷なこと言うの。思わず顔を背けると。「何だよ」彼は不思議顔。「お前、お返しいらねえの？」あれ、もしかして桜咲く？

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#twnovel 堆くファイルが積まれた要塞のような資料室。鬼上司とふたり、資料探しに没頭する。薄い窓から差し込む光に彼の髪が薄茶に透けて、あ、意外に鼻も高いんだ。「何？」目があって、どきっ。いつもの鋭い眼光は鳴りを潜め、眼差しは甘い。「そんな顔するな」え、私、今どんな顔してる？

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#twnovel 遊園地デートの約束だったのに、まさかの風邪。「ばーか、寝てろって」一方的に電話を切られ涙目になる。会いたかったのに。ピンポン。「え？」玄関を開ければ、蜂蜜の瓶を持った彼。「特製ドリンク作ったる」彼の気遣いにまた涙が。「泣くなよ」だめ、キスは風邪がうつっちゃう。

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#twnovel 待ち合わせは馴染みのカフェ。窓際に座る君は、まるでショーウインドウに飾られた春色のディスプレイ。いつもより明るい口紅。ベージュのワンピースから伸びるしなやかな足。たまらず窓に駆け寄ると、君は不思議そうに僕を見て。わかんなくていいよ、僕がどれだけ君に夢中かなんて。

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#twnovel 早朝会社に行く前に、夢の抜け殻みたいな遊園地の前に立った。昨日大好きだった彼に誘われ、告白されて観覧車の中でキス。フィルムを巻き戻して、永遠に耽っていたい。「おはよ」振り返れば彼。「よかった、夢じゃない」そう言って彼が微笑めば、回り始める胸のメリーゴーラウンド。

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#twnovel 電話する、しない。ミルフィーユのように重ねた揚げ句に、結局通話ボタンを押した。「何だよ、淋しかった？」「ううん、聞きたいことがあっただけ」あなたと競う言葉のチェスは、いつも甘くてスリリング。「嘘つけ」とあなたは笑う。素直に愛を乞うことができない私で、ごめん。

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#twnovel カフェの窓から、電線に何羽もとまっている小鳥が見えた。「楽譜みたいね」と私が言うと「電線は１本だぞ、音はひとつきりかい」なんて、あなたはロマンの欠片もない現実的な男。そうよ、One Note Samba、大事な音はたったひとつ。野暮でも堅物でもあなたがいいのよ。

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#twnovel 毎日画面を開くのは情報に乗り遅れないためよ？　何度となく＠の頁を見るのは、フォロワーさんに失礼をしないように、なんだから。あ、来た。『おはよう。うちの梅も５分咲きだ』ふん、すぐ会社で会えるのに。ま、いつもありがとね、青い鳥さん。【３月21日はツイッターの誕生日】

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#twnvday 海の向こうのあなたの「おやすみ」で私は目覚める。私がupした梅の写真で日本の春を知るあなた。私はあなたがRTした言葉を糧に、日夜仕事に励むんだ。「４月には帰国する。選んどけ」DMに貼られたリンクはエンゲージリングのwebサイト。青い鳥は今日も健気に羽ばたく。

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#twnvday 思えば君とは長い付き合い。学生時代は、10円玉をたくさん握って公衆電話に通った。就職したころはポケベルで0833（おやすみ）を言い、初めて買った携帯で呼び出してのプロポーズ。そして今、家に帰れば会えるのにツイッターで語りあう。愛してると言う代わりにふぁぼりあう。

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#twnovel 「冬の間どこに潜っていたんだろ」草花の綻ぶ土手を歩きながらあなたは微笑む。春はからくり時計。麗らかな陽が差せば、花々は一斉に萌え出でる。はこべの白、たんぽぽの黄、れんげの赤。「遅くなってごめん」あなたは、つ、と私の薬指に触れて。ああ、ここにもきらめく花、咲いた。

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#twnovel 「カップ麺はもう勘弁」苦笑する同期の彼。忙しかった新人のころ、食事する間も惜しみ、カップ麺を箱買いしてた。残業は当然、仮眠室連泊の悪夢のような日々。いつの間にか頼もしくなったあなたに恋してた。「お前がいたからこらえられたのかもな」ちょっ、殺し文句は３分待って。

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#twnovel 朝の駅の雑踏の中、あなたを探す。あ、いた。目が合うと、微笑みながら近づいてくる。言いたい言葉は、残りわずかのマヨネーズみたいに、瓶を逆さにしても出てこない。「どうした、ん？」あなたが恋人だなんてまだ信じられないの。お願い、手を繋ぐのはふたりきりのときにして。

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#twnovel 休日出勤、立ちずくめで悲鳴を上げる足を引きずって帰宅した。また明日から一週間が始まるなんて眩暈がする。ああ、夕飯何食べよ。「あれ、電気がついてる」ドアを開ければお玉を握りしめた彼。「おかえり。一日かけて煮込んだ、舌もとろけるシチューだぞ」もう身も心もとろとろよ。

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#twnovel いつもぶれないあなた。プラチナみたいな信念をいつもきりりと輝かせて。でも私にはわかる。顔に出さないあなたのいらいらも、落ち込みも。あなたの青いサーカスになりたいよ。深い海のように包んで、笑わせて、驚かせて。「いつもありがとな」ううん、お代はあなたの微笑みで。

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#twnovel 書類の山を抱えながら廊下を歩く残業の夜。出会ったのは帰ったはずの同期の男。「お疲れ」突然彼の手が目の前に伸びる。「プレゼント」書類の上に置いたのは大好きなドーナツ屋の袋。「書類が崩れるってば」憎まれ口を叩けば「お前の為に買ってきたのに？」急に甘い声、出さないで。