工房径ついのべ集 2012年３月

工房径（koubou-kei） @pleaseinuplease

#twnovel 「あれ」朝駅で会ったのは隣町に住む同僚の彼。「そこのジムに通ってんの。朝割あるし」建物を指差す彼は、シャワーを浴びたのか石鹸の香りがして艶やかな頬は少年みたい。「のど乾いた。それ頂戴」私の冷めたお茶のボトルを奪い、ごくり。ああ、かかっちゃった。ときめきの魔法。

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#twnovel 朝、ひとつ先の駅まで歩く。健康のためだなんて言いながら、本当は計算ずく。「珍しく続いてるじゃん、朝のウォーキング」声をかけてきたのは、片想い中の彼。あなたが鼻先の人参なんて、とても言えない。「ご褒美にランチおごろっか？」なんて耳元で囁くのは計算外だってば。

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#twnovel いつもくよくよと悔やむ。言いたいように言ってしまった後で、相手を傷つけたと気付くんだ。食べかけのスコーンみたいにぽろぽろと世迷い言をこぼす私に、あなたは黙って手を繋ぐ。あなたの手は温かなロザリオ。祈りを数え、私を導く。「ゆっくり寝ろよ。明日はよくなる」と。

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#twnovel 昼休みの給湯室で、冷蔵庫の中を睨む見慣れたスーツの背中。「課長？」声をかけると「わっ」と真っ赤な顔で振り返る。「うまそうだったから」視線の先には私のとっときのプリン。仏心でつい「どうぞ？」と言ったら彼はぱあっと笑顔になって。かわいい上司の一面に、ハートがふるり。

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#twnovel 社内恋愛禁止じゃないけど、上司との恋愛って何となく気を使う。「ばれたっていいのに」息を切らして坂道を上ってきた私に微笑む彼。密会場所は早朝の公園。と言ってもお弁当を渡すだけだけど。「卵焼き、入れてくれた？」「はい、もちろん！」ご褒美は卵焼きより甘いキス。