花村萬月さんの物語の構成について

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花村萬月 @bubiwohanamura

さ、自分の仕事にもどろう。こういう文章ならば、いくらでも書けるんだけれどね、小説という名の虚構を、つまり嘘をひねりだすのは、なかなかに大変だ。虚構は難しい。けれど、誰もが嘘つきだ。←これ、凄いヒントだからな。心ある人は吟味してください。

2012-03-15 15:36:15
花村萬月 @bubiwohanamura

〈二進法〉と〈犬〉がくっつくと、そこから千五百枚超の物語を捻りだすことができる。ある種、シュルレアリスム的な手法かもしれないね。べつに小説だけにかぎらないんだよ。みんなも題名を、名前を、看板を大切にしないとね。親はおまえになぜ、そういう名前を付けたのか、よく考えてみよう。

2012-03-15 15:35:23
花村萬月 @bubiwohanamura

で、無事連載も終わり〈二進法の犬〉は400字詰めで1564枚という大長編として完成した。ちなみに芥川賞受賞後第一作が、この〈二進法の犬〉だが、受賞後第一作がノベルスというのは俺くらいじゃないかな。俺はノベルスという本の体裁が大好きでね、最近勢いがないのが悲しいね。

2012-03-15 15:35:01
花村萬月 @bubiwohanamura

具体例を挙げれば、いまはなき週刊宝石で連載が決まっていたが、もっとも忙しい時期で、なにを書くか一切決められぬうちに締め切りが迫ってきた。飯田橋の駅に向かって歩いているときに〈二進法の犬〉という題名が唐突に泛んだ。いかにも週刊誌連載向けの題名だね。俺は胸を撫でおろしたよ。

2012-03-15 15:34:45
花村萬月 @bubiwohanamura

表現の方法、技術は無数にある。それぞれの表現者が、それぞれの方法論をもっている。俺の場合は、いかに象徴を掴みとるか、それにかかっている。そのためにも題名。タイトルというカタカナ表記はいやなんだ。(俺にとっては)象徴が宿らないからね。

2012-03-15 15:34:26
花村萬月 @bubiwohanamura

たぶん、プロの大工は、設計図がなくたってちゃんと家を建てるさ。それも独創的な家を、ね。

2012-03-15 15:34:08
花村萬月 @bubiwohanamura

どうも高校、大学と入学試験を受けて、それをクリアしてきた人(小悧巧なバカ)は、正解がひとつしかないと思いこんでいるようだ。哀れにも思考の水路が一方向にしか流れない人だ。ま、記憶力はあるんだけどね。けれど記憶力って、ある種痴呆の能力だってことに早く気づけよ。

2012-03-15 15:33:53
花村萬月 @bubiwohanamura

けれど、そんなメソッドでうまくいくなら、この世の中は成功者だらけだ。

2012-03-15 15:33:38
花村萬月 @bubiwohanamura

題名という象徴は、そのスープをすくいあげる匙(スプーン)なんだ。で、ここで注意してほしいのは、混沌にはすべてが溶けこんでいること。どちらかというと悪に類する(属する)もののほうが、多く溶けこんでいるような気がするが、これは俺の勝手な思い込みかな。

2012-03-15 15:35:55
花村萬月 @bubiwohanamura

字面などが深層に与える影響力だね。これは、ふたたび当初の混沌、カオスの話につながっていく。すべての神話は、カオスから始まる。天地万物が形成される以前の原初の状態。また,物事が混然としてひとつになっているさま──。混沌はすべての要素がゴッタ煮になった滋養あふれるスープなんだよ。

2012-03-15 15:35:38
花村萬月 @bubiwohanamura

まじめに書こう。混沌の中から物語が生まれるということをわかっていない人が多すぎる。カオスが物を騙るんだよ。カオスに人は騙される。俺の勝手な極論だが、プロットとは、商業主義のメソッドに過ぎない。世の中には売れる手順を書いたクソが氾濫しているよ。

2012-03-15 15:33:09
花村萬月 @bubiwohanamura

流行作家という名の詐欺師は、辻褄合わせの名人なのさ。しかも読者もそれほどのものを求めているわけでもないし。

2012-03-15 15:32:49
花村萬月 @bubiwohanamura

でも、断言してしまうけれど、推理作家だって新本格派ともかく、駅売りの推理小説を書くような作家(大量に売れる人)は、多作しなければならないし、連載も多いから、とにかく書きあげて、本にするときに体裁を整えているよ。

2012-03-15 15:32:39
花村萬月 @bubiwohanamura

で、結論だが。こんな情況でプロットもへったくれもない。もちろんプロットをつくって時間をかけて執筆するスタイルの人もいる。けれど多作をこなせるのは、俺のようないい加減な人間。てきとーな奴。

2012-03-15 15:32:04
花村萬月 @bubiwohanamura

なんせ、連載が十以上あるところに、さらに新連載が入ってきたりするわけだ。貴方様はどうということもないでしょうが、俺の脳味噌はとっくに限界がきている。仕事場に原稿を取りにきた編集者が、俺がひたすらゴミ箱に唾を吐きまくっているってびびってたもんな。追いつめれてたなあ……。

2012-03-15 15:31:47
花村萬月 @bubiwohanamura

俺、いちばん稼いでいたころ、月に締め切りが28あった。俺の作風では新聞連載はないから、週刊誌その他だったが、さすがに修羅場だったな。並行して書いている物語が十以上ある状態、想像できるかな。そういう状態でプロットなんていってられないよ。

2012-03-15 15:31:26
花村萬月 @bubiwohanamura

俺はいい加減なんだ。ぜんぜん悩まない。死んじゃった奴は仕方がない。残っている者で話をまわしましょう。そういう感じで、仕事を、執筆を続けていったよ。ところが読者も主人公級の人物が唐突に死んでしまうと驚くみたいだね。逆に受けたりもした。

2012-03-15 15:31:10
花村萬月 @bubiwohanamura

職業小説家になって5年くらいは、いい加減なものだけどプロットをつくっていたよ。けれど、その設計図どおりにならない! 重要な登場人物が勝手に死んじゃったりするんだよ。すると物語が根底から狂ってきてしまう。頭を抱えたね。……というのは、嘘。

2012-03-15 15:30:54
花村萬月 @bubiwohanamura

でも、結末の決まっている小説を書くのは、とてもつらかった。おっと、これは俺のことだからね。誰もがそうであるはずもない。もしそうだったら推理作家がいなくなっちゃうよ。ただ、新人賞に応募していたアマチュアのころから設計図をつくるのが苦痛だった。

2012-03-15 15:30:37
花村萬月 @bubiwohanamura

せっかくだから、プロット──設定、あるいは構成について考えてみようか。俺、新人賞に応募しまくっていたころは、起承転結がなければいけないものと思い込んでいて、とりわけ結をきっちり付けなければと思い込んでいて、せっせと推理小説の新人賞を選んで応募していたよ。

2012-03-15 15:30:21