恋火の魔神解体ショー⑤(しかにあ)

ヨツユ🌸 @yotsuyu

@shoko_s アイパと、いう名前を聞いて、どこか不思議な感覚を覚えた。金髪の少女が口にしていた聞き覚えのある名前。ランプを持ち驚く顔をマジマジと見つめ、ぐるりと一周する。ふうん。「もしかして、あなたが『シュカさん』？」彼女が発したままのイントネーションで真似て #シカニア

さかき松子 @shoko_s

@yotsuyu 恋火の魔神、と名乗った精霊のくるくると動く様と、観察されているような雰囲気に、少したじろぐ。「はい。私の名は、シュカですが……」その聞き方と、呼び方に引っかかりを覚える。「あの、私の事を聞いたのですか？　ええと、長い金髪の、女の子から」 #シカニア

ヨツユ🌸 @yotsuyu

@shoko_s 「やっぱり！『シュカさん』なのね」たじろぎながらも、相手も私が想い浮かべた少女を思い浮かべたのだろう。察しがいい人の子だ。ついーっと顔を近くに寄せて、瞳を覗き込む。ふんふん、これがあの子のこのみかー。「その通り、名前をだしてもいいわよ？」 #シカニア

さかき松子 @shoko_s

@yotsuyu 何やら納得した上、こちらを見透かそうとするような魔神の挙動と言い回しに、内心でぎくりとする。「ほぼ間違いはないと思いますが……何か知りたい事がおありですか。アイパさん、から聞いた話以外に」 #シカニア

ヨツユ🌸 @yotsuyu

@shoko_s 「アイパさん！」ふふりと笑って名前を繰り返す。「そんなにかしこまらなくてもいいわよ。あたしとアイパはなかよくおしゃべりをした仲だわ」警戒心でいっぱいだけど、顔に『知りたい』と書いてある。「知りたいことがあるって顔してるのはあたしよりあなただわ」 #シカニア

さかき松子 @shoko_s

@yotsuyu 繰り返され、あ、と思うが、それどころではないようだった。「仲良くお喋り……出来そうですねえ」容易に想像がついてしまって、何となく脱力した。「はい、負けましたお見通しでした。私を見てやけに納得したり楽しそうになさっていたそのわけを伺いたいです」降参。 #シカニア

ヨツユ🌸 @yotsuyu

@shoko_s あらあっさり降参？もう少し粘るかと思った、と笑いがもれた。｢ふふ、それはね、あなたがイメージしたかわいいあの子から、あなたの話を沢山聞いたからよ｣口に指をあてて内緒ねのポーズ #シカニア

さかき松子 @shoko_s

@yotsuyu 姿こそ少女だが、やはり老獪だとこっそり思う。バレたら焼かれそうだが。「答えになっているようでいてなってない気もするんですが……さすがに、秘密なんでしょうねえ」一体どんな話をされたのか。気にならないわけがない、つまり。「……手遅れですかねえ」ぼそ。 #シカニア

ヨツユ🌸 @yotsuyu

@shoko_s 一瞬表情が固まった気がするのがカンにさわったので鼻をつついてやる。｢あらあら、他愛ない女の子同士のお喋りだもの、ヒミツというほどでもないけど……｣わざとらしく腕を組む。｢手遅れ？一体何が何が？知りたいならまずあなたが教えてくれなきゃねえ？シュカさん｣ #シカニア

さかき松子 @shoko_s

@yotsuyu 「ちょ、……女性同士の『他愛ないお喋り』には口を挟まない方が良いと教わったんです」現状がまさにこれだ。「……断ったら、『じゃあ少しだけ教えてあげるから教えて』と来るんじゃないでしょうね？」我ながら今更だと思いながら、はかない抵抗を試みる。 #シカニア

ヨツユ🌸 @yotsuyu

@shoko_s ｢それなら教えてくれるの？｣つんつんしたままの指で、軽く鼻頭をつまむ。｢ないわね、あなたは彼女を追ってきたんでしょう？少しでも彼女の様子がしりたいんじゃないの？｣目を細めて、意地悪ににやりと ｢たとえ、些細な様子でも｣ #シカニア

さかき松子 @shoko_s

@yotsuyu 「そうは言っては……やめてください」軽く鼻声になり、何とも情けない気分になる。「実際に会って話せれば、それでいいと、……本当にそう、思ってたんですよ。さっきまでは」降参のしるしに諸手を挙げる。「まったくもって仰る通りです。……離して貰えませんか？」 #シカニア

ヨツユ🌸 @yotsuyu

@shoko_s ぱっと手を離して笑いかけてやる。どうやらこんなふうにあそばれたことはないようだ。困りきった顔がなんともあいらしい。｢顔に書いてあるわ、心配しすぎて磨り減ってますって｣ケラケラ #シカニア

さかき松子 @shoko_s

@yotsuyu やっていることはそれこそこどもの悪戯並みなのに、この威力は何だろう。「磨り減っ……」思わず口元に手を当てて表情を隠し、顔をしかめる。「人の悪い……いいですよ、お話します。本業ほど巧くは話せないかもしれませんが！」やけになりつつ、壁に背を預ける。 #シカニア

ヨツユ🌸 @yotsuyu

@shoko_s ｢本業？ああ、うた、ね。アイパからきいたわ｣壁にもたれかかった彼の背に回れないのを残念に思いながら続ける｢あのこ、あなたの歌がすごくすきみたいね、幸せそうな顔してた｣あっとわざとらしく口をふさぎ、ちらりと彼を見る。｢あなたの話だったわね？続けて｣ #シカニア

さかき松子 @shoko_s

@yotsuyu 幸せそうな顔という言葉に思わず顔を上げると、してやったりとばかりの顔をする魔神と目が合う。「…………いーえ、どーぞお気になさらず」この手合いを何人か知っている。「手遅れというのは、見たままです。……困ってるというか、どうしていいかわかりませんで」 #シカニア

ヨツユ🌸 @yotsuyu

@shoko_s ｢なにをどうしたいの？｣にっこり｢あたしはあのこの話の中のシュカさんしか知らないわ？あなたのことを教えてくれなきゃあ｣ #シカニア

さかき松子 @shoko_s

@yotsuyu 「それは、」言いかけて言葉に詰まる。「それはまあ、そうでしょうね。……話してない事も、たくさんある」嘘だけはついていない筈だ。自己満足だとしても。「自分の話をするのは苦手なんです。……とりあえず、困っています」溜息を吐き、壁の方をちらりと見る。（続 #シカニア

さかき松子 @shoko_s

@yotsuyu 「最初に会った頃は、自分と重ねて見ていました」だから、いつになく深入りしたのだろうと思う。「少し前までなら、迷わず『妹みたいなものだ』と言えました。……ですが、今は即答出来なくて」苦く笑う。「かといって、同じ気持ちを返せるのかもわからない」 #シカニア

ヨツユ🌸 @yotsuyu

@shoko_s なんだかゆれているような表情がかわいくて、つついてあげたくなるのを堪える。「――ふとみる、表情がびっくりするくらい、おとなっぽいとか」 いや、この表現は適切ではない 「ちがうわね」とんと、彼の胸を示す「驚くくらい 綺麗 とか？」 #シカニア

さかき松子 @shoko_s

@yotsuyu 言われてみて、しみじみ考える。綺麗、という形容詞とは。「どちらかというと、前者の方が近い気がするんですが。……ああ、ただ、そう」しっくりくる言葉を捜す。「魅せられる、という意味なら、そうかもしれません。……同情や憐憫ではなくて、敬意を感じるような」 #シカニア

ヨツユ🌸 @yotsuyu

@shoko_s 「魅せられる」ふんふん。「それで、同じ気持ちを『返せるのかわからない』？」 #シカニア

さかき松子 @shoko_s

@yotsuyu 「……ほんっとーに、いい所を突きますね」強調されて戻ってきた言葉が、いい具合に刺さった。「同じとは言えないでしょう。このまま、定まらないままでは、向き合えないな、と」つい溜息が出る。「年齢の事は一旦置いといても、誠意は投げたくなくて。袋小路です」 #シカニア

ヨツユ🌸 @yotsuyu

@shoko_s 「袋小路なら、なおさら出口はひとつなんじゃなくて？」 にやり「あなたは、どうしたいの？どうしてほしいの、彼女に」 「アイパに」 #シカニア