故郷、なくなったら、困るじゃないですか。

「夕方かかってきた電話は、口調は丁寧なものの、最初からやや喧嘩腰で、私の正体を問うた。」 「そう言った時の彼の声は、不快そうではなかったから、なにかが届いたのであればよい、と願う。」 「故郷、なくなったら、困る、と。ありがとう。」
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安東量子【告知専用】 @ando_ryoko

夕方かかってきた電話は、口調は丁寧なものの、最初からやや喧嘩腰で、私の正体を問うた。それに対して、私は昨年の勉強会からの経緯を簡単に話した。私の説明が終わるのを待ちきれないように、彼は、もう答えはわかりきっている、東電や国に綺麗にしてもらうしかないのだ、と、繰り返した。

2012-03-21 22:15:55
安東量子【告知専用】 @ando_ryoko

専門家に来て貰ってどうなると言うのだ、やるべき事は決まっている、と、切迫した口調の彼の言葉を、否定するべきではない。私は、ただ頷き、同意した。そして、彼の言葉が途切れた時に伝えたのは、東電や国に不満はたくさんある、けれど、私に何ができるんだろう、と考えた時にこれだったんですよ。

2012-03-21 22:22:07
安東量子【告知専用】 @ando_ryoko

彼の怒りは、正当なものだ。それを闖入者たる私にぶつけるのも、至極当然、正当なものだ。彼らのやり場のない怒りは、どこかにぶつける権利がある。「子供が、もう住めないじゃないですか。年寄りだけ残ったって、そのうち、消えちゃうじゃないですか。どうにもならないですよ。」泣き声に似ている。

2012-03-21 22:31:09
安東量子【告知専用】 @ando_ryoko

彼の言葉を絶対に否定するべきではない。私は、ただ頷き、力になりたいと思っている事、安全・危険と言いたいのではなく、この先、どうすればいいのか話し合えればいいな、と思っている、と伝えた。少しずつ、語調をやわらげた彼が、電話を切る直前に言った。故郷、なくなったら、困るじゃないですか。

2012-03-21 22:36:59
安東量子【告知専用】 @ando_ryoko

この会話の中で、いちばん大切なのは、この言葉。あとは、すべて余事。この言葉が、すべての感情の真ん中にある。いったい、誰が、こんな形で、故郷を失いたいだろうか? 

2012-03-21 22:42:29
安東量子【告知専用】 @ando_ryoko

私たちが、どんな人間なのか、確認をするだけでもいいので、顔を出してください。そう言った時の彼の声は、不快そうではなかったから、なにかが届いたのであればよい、と願う。

2012-03-21 22:48:50
安東量子【告知専用】 @ando_ryoko

相手は、地元の、故郷を失う危機に瀕している人。人間は、必ずしも、自分の気持ちをそのまま言葉に出すわけではない。言葉の裏側にあるものの方が、言語化されたものより、はるかに大切な事は、まま、ある。彼は、最後に、自分で言葉にしてくれた。故郷、なくなったら、困る、と。ありがとう。

2012-03-21 22:55:16