同題ssオリジナルまとめ。
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ケーキの苺を、食べてしまいました。もう二時間口を利いてくれません。取り敢えず黙って正座してるけど、それにしても長すぎる。ベッドに転がる背中。痺れる足を引きずって、まさかと思って覗き込んだら、可愛い寝息が聞こえてきたので。苺の味だけ、こっそり返しておきました。<沈黙>#同題ss
2012-03-24 17:04:14「コンビニの安いのだけど」「見れば分かる」「でもちゃんと苺も乗ってるし」「だから見れば分かる」「お前の苺食っちゃったの、これで許してくれる?」「…」「…だめ?」「…食べさせてくれたら、許しても良いよ」小さな声と、舞い上がる俺。苺の味は、半分こ。<コンビニ>#同題ss
2012-03-25 09:40:11真夜中B級ホラー。「…トイレ行きたい」腕の中の背中が訴える。「んー」「……」しばらく焦らしてみたけれど殴られもしない。これは本気で怖がってるなと思ったから、腕を解いてやる。「トイレだよな?」「うん」「じゃあ一時停止しとこっか?」…殴られた。〈トイレ〉
2012-03-26 13:50:58「何でわざわざ水を飲むの」なんて訊くから、分かってないなと笑ってやる。「飲んでみる?」言葉と同時に後頭部に手。強めのアルコールを流し込めば、案の定噎せ込んだ。俺を睨む涙目。きっと苦しいに違いない。「ね。お水欲しいでしょ?」おねだりできたら、飲ませてあげる。〈チェイサー〉
2012-03-27 18:18:29「何でわざわざ水を飲むの」そう言ったら、分かってないなと笑われた。「飲んでみる?」言葉と同時に後頭部に手。流し込まれたそれは熱くて苦くて、思わず噎せ込んだ。「ね。お水欲しいでしょ?」なんて。違う。絶対、なにかが、ちがう。満面の笑みが憎らしかった。〈チェイサー〉
2012-03-27 18:16:26「冷蔵庫のケーキ食べてて良いから。苺の、コンビニのじゃないやつ。ごめんな」急な呼び出しだった。きっと怒ってると、心ばかりの土産を提げて戻れば、テーブルに食べさしのケーキ。「何で食ってないの。好きでしょ?」「…一人で食べるとか、無理」…そんな事言うと口移しになるよ?<依存>
2012-03-28 12:58:11指を回すようにして穴を少しだけ広げてやる。「その動きヤラシイ」腕の中から抗議の声。「そりゃお前がヤラシイ事思い出してるからだよ」指についた土を払って、今度はそこに種を落とす。「…何植えてるの」「ミニトマト」「苺が良いのに」じゃあ、秋まで隣に居てください。〈穴〉
2012-03-30 18:16:47「…」お、笑った。エビ食ったのかエビ。好きだもんな。「…」あー…パセリ入ってるもんな。パセリを全部除けるのは無理だよな、口に入っちゃうよな。そんな顔するなよ、デザートは苺のケーキだろ分かってるから。そうそう、水で流し込んで…と。「何、笑ってんの…」いやお前が可愛くて。<笑う>
2012-03-31 17:08:24気まぐれに擦り寄っては俺を喜ばせるのに、触れ過ぎればその手をぴしゃりと叩く。ベッドでしがみついてくるもんだから、俺は寝返りができなくて…猫を飼っているようだ、と思った。でも。「…」ぐったりとした背中を見下ろす。猫相手にこんな気持ちになったりしない。がっついてごめんなさい。<動物>
2012-04-01 19:53:23#twnovel 〈悪戯〉 つん。と髪を引く。「…何」つんつん。「だから何!」「その顔が可愛いなと思って」「…」蹴られる、と思って身構えたのに。膝の上で丸くなられた。「やべ、蹴られるより全然クる」「うるさい変態」
2012-04-02 15:47:25壁際に立たせて服の裾を咥えさせる。「手、頭の後ろにやって?」悪態のひとつも吐きたいんだろうに、言いつけを守って裾から口を離さないその姿。腿の間に手を差し入れて、少し脚を開かせて、「…あれ?」いつもより…。「なんだ、こーゆーの好きなの?」どっちが変態?〈悪戯〉
2012-04-02 15:49:18#twnovel 昨夜は蕾だった桜が、今朝になって咲いた。窓に叩きつける風と雨。「何でこんな日に咲いたんだろうな」蕾のままならやりすごせたろうに。「乗り越えられると思ったから、咲いたんだと思う」腕の中から声。少し、震えていた。窓の外を睨み付ける強い目が、吹き荒れる嵐と戦っている。
2012-04-03 17:39:28「10回目」「何が?」「今日されたキスの数」「そんなん数えてんの?」笑いながら、11回目。「で、お前からしてくれたのは?」「…ゼロ?」うん、数えるまでもなかった。「でも」胸倉を掴まれる。唇を押し付けて、噛み付くような。「する時は魂込めるから」11対1でも俺の負け。<数字>
2012-04-04 11:21:12あいつが帰って次に現れるまで。一人の時間。酷く無為に過ごしてしまう事がある。時間を消費する為の無駄な行動。後に何も残らない空白の時間。それじゃ駄目だと分かっているのに、手が何度も携帯を弄っては雨を待つ。「…会いてぇ」〈空白〉
2012-04-05 13:39:44#twnovel <桜>嵐を堪えた桜が、今日は雨に揺れていた。桜餅の葉を捲って一口。甘い菓子。甘い時間。窓越しの花見も悪くない。「葉っぱ、剥がしちゃう派?」「剥がしちゃう派」他愛のない幸せな会話。「ふーん」もぐもぐ、そいつは葉っぱを咥えて言った。「甘いだけとか、つまらなくない?」
2012-04-06 17:36:44俄かに空が暗くなって、遠くで低い音がした。「あ、やべ」慌てて洗濯物を部屋に放り込む。風呂掃除をして、ふかふかのタオルを出して、後はコーヒー…いや、ココアかな。他にできる事は何だ。あいつの為にしてやれる事は。雷の後の雨は酷くなる事を知っている。俺が暖めてやらないとあいつは<遠雷>
2012-04-07 19:52:15風呂上りにシャツしか貸さないのは俺の趣味です。袖や裾から伸びる手足の、その年頃独特の危うさが堪らないのです。「貸してもらってなんだけど…でももうちょっと裾…見えそうなんだけど」時折短いのを貸した時に、そう言って裾を押さえて困る君も好きなのです。だからと言って俺は決してへんた<長>
2012-04-08 17:44:59〈舌〉熱々のグラタンに、これでもかと息を吹きかけた癖に、口に入れては悲鳴を上げた。「火傷したのか?見せてみ?」「やだ。絶対舐めるもん」「しねぇよ、心配なんだよ良いから見せろ」「…」出された舌に、特に変わった様子はない。ないけれど。「ッ!?」「消毒な?」我慢なんてできるはずない。
2012-04-09 12:36:29好きだと言い交わす。キスをする。セックスをする。それができて、「今会いたい」が叶わない。連絡先も分からない。路地の奥で「にゃあ」と猫。俺を見て鳴いた。そう言やあいつも猫みたいだな。「にゃあ」「にゃあ」「にゃあ」「に゛ゃー!」…なんだよ入って来いってか?その狭い道へ?<隘路>
2012-04-10 19:30:17「ん?」差し出されたのは、見知らぬ携帯。ディスプレイにはメールアドレスらしき文字列。「…お前の?」「うん、登録しといて。そしたらいつでも連絡できるでしょ?」 い つ で も 連 絡 で き る で し ょ 。夢のような言葉。ああ神様!どうか夢じゃありませんように。<夢>
2012-04-11 11:47:30〈贈る〉最初はほんの思いつき。「ねえ、誕生日教えてよ」「なんで?なんかくれんの」「うん、だから」「あー、でも、お前がいる事自体プレゼントみたいなもんだしな」思いがけない言葉に固まる。その言葉はそれこそ、自分のとってのプレゼントのようで。なんだか無性に悔しくなった。(ので蹴った)
2012-04-12 11:22:47〈光〉あいつに会ってから、雨の日が待ち遠しくなった。むしろ朝起きて空が明るいとがっかりするぐらいだ。だけどそうなると今度は「デート行きてぇー」空を見上げて目を細めながらぼやく。つくづく人間は欲深いと思った。
2012-04-13 22:26:49〈やむ〉朝から音のしない雨。時間と共に空の明るさが増してきて、15時には西の空が晴れていた。「良かった。雨、止みそうだな。傘さすの面倒くさいよな〜」同僚の声に曖昧な笑みを返して、何度も何度も空を見る。
2012-04-14 11:13:06