ツイノベ2012上半期

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 「窓閉めればいいだろ、寒がりなんだから」「うん」僕は寒がりだけど君が暑がりだから、すぐ布団から追い出されてしまう。だからちょっとだけ寒くてぽかぽかの布団が好きなだけ。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 「お前いっつも楽しそうだな。悩みねえだろ」そりゃそうだ。だってお前はそういう俺を望んでいるから。お前が望むなら、泣いて喚いていくらだって弱くて惨めな姿を晒して見せるけど。隣にいる彼女がお前にとって一番な限り、俺はずっとピエロ役。観客を笑わせて見せますとも。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel リボンの掛かった箱を前に、照れて不貞腐れる顔は昔のままであどけない。「もっと普段から親孝行なさいよ」「もちろん」一瞬視線が絡まり、ぞわりと肌が泡立つ。「大事にするよ」身長も腕力も俺を追越した息子が部屋を出ていく。すれ違う背中に共犯者の空気だけを残して。

野原滋 @sigerunohara

離婚の原因は妻の浮気。だけど責任は僕にある。贈り物を前に複雑な顔を作るあなた。「縁は切れてもそう呼べるのはあなただけだから。お義父さん」 肉親の縁の薄い僕をあなたは可愛がる。あなたとの繋がりがどうしても欲しくて、あなたの娘を娶った僕を、あなたは憎みますか？ #twblnovel

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 「もう遠くに行ったみたいだ」「平気だし」「ま、どっちにしろ俺がいるから平気だろ」「何言ってんの？ヒーロー気取り？」「俺のほうが背が高いだろ？落ちるとしても俺だから」「お前…」「感激のあまりゲリラ豪雨みたいな顔になってんぞ」「雷様！ここに命中させてください」

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 俺がいなくても幸せになれよなんて絶対に思わない。遠くに見える笑顔が憎くてたまらない。好きだから大事にしたいだとか、そんな立派な考えも持たない俺の中は、薄汚れた願望に満たされ、ドロドロに腐っている。綺麗なものには遠過ぎて、今日もあいつの側に俺は行けない。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 昨日よりも凄い豪雨だが、今日はちゃんと大きな傘を用意してきた。「な、雨宿りしていかない？」奴の呑気な誘いを無視してタクシーへ手を上げた。呆然と置いていかれるあいつに言ってやる。ラブホなんか冗談じゃない。「休憩」だなんて馬鹿にするな。お前の家に連れて行け。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 背中を流されて頭をガシガシ洗われて、何故か一緒に湯船に浸かっている。「なんか楽しいな。旅行してるみたいだ」無邪気な顔をしてお前は言うが、その腹に付きそうな勢いでそそり立っているそれはなんだ？お湯から顔を出してるんですけど。……って、俺のもだった。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 「気にすることないだろ、男同士なんだし。銭湯かサウナだと思えば」あまり固辞するのも却って意識しているみたいだからと納得させられて、素直に風呂を使う。……しかし自分だけ裸でしかもガラス張りってのも恥ずかしいな、って思ったけどなんでお前まで入ってくんの⁉

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel どうせ電車止まってるしスーツ濡れたしってついてきちゃったけど、どうしたらいいんだ？「ビール飲むか？」お気楽な顔に本当に他意はないのかとホッとして、少し残念だったり。「濡れちゃったな。風呂に入って温まれば？」爽やかに笑って言うけどそこガラス張りなんですけど？

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel ゲリラ豪雨に見舞われた帰り道。入れよと差し出された傘に、無言で折り畳み傘を出したことを後悔している。雨を理由に居酒屋にでも誘おうかと思うのに、上手く誘えない。「ちょっと雨宿りしていくか」そんな俺とは対照的に気軽に誘ってくれるのはいいがここラブホですけど？

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 今日の月を見上げながら、見ているかと教えたくなること。奴のお気に入りの歌手を、いつの間にか自分も一番好きになっていること。ゲームの難易度を必死に上げていること。そんな行動の意味を朧げに分かっていて、だけどその感情には決して名前を付けてはいけないということ。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 野原滋の今日のお題は『好き』『難易度』『月』です。 #twnv_3 http://t.co/BPaYGkE6

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 小さい頃から俺の真似ばかりしていた弟は、今は生意気に俺を負かそうと躍起になる。「今日は俺が絶対に上だからなっ！」鼻息荒く挑んでくるのに苦笑しながら頷いてやる。乗せるのは一向に構わないが、啼かせる役は絶対に譲らないって事を、いつ教えてやろうか。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 研修を終えて地元に戻ってきた若先生は、格好良くて腕が良いと評判だ。ささやかな悪戯は幼い頃のほんの気まぐれで、彼は綺麗に忘れている。僕だけが深い傷を負い、今も心臓が痛いのに。だけどこの傷を癒せるのも、彼しかいないことを、僕は知っている。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel まったく、何で俺があいつの顔立てて合コンなんかに出なきゃなんねんだよ。面倒臭ぇなあ。……って、何でお前がそっちの席にいんの？それ女子の制服じゃねえか。つか化粧までしてるし。そして恥ずかしそうになに微笑んでんの？ ……いちばん可愛いじゃねえか。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 何で俺が参加しなきゃなんないんだよ。「だって連れてこいって言われたんだも…」だからって何で俺が？つかお前は女子の下僕か？じゃあいいんだな？俺が参加して女の子お持ち帰りとかしちゃってもいいんだな！「うぅ…」 全く、俺以外の奴の言う事なんか聞いてんじゃねえよ。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 眼鏡の縁をくい、と長い指で上げてみせ、彼がニヤリと笑う。両眼とも1.5なのに、医者には眼鏡がつきものだと、何でも形から入ろうとする。「さあ始めようか」診察台に見立てたソファに凭れた彼が、ゆっくりと横たわる。「その神の指で俺を昇天させてくれ」え？俺そっち役？

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel いいよって確かに言ったよ。子どもの頃からの夢だったって言うからさ。たまにはそんなプレイも楽しいかもなって言ったよ。だからってお前…それもう「ゴッコ」の域じゃないから。白衣とか聴診器とかわざわざ買うかな。つか、今手に持ってるその器具なに？俺、何されちゃうの？

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 同性も恋愛の対象になり得るのだと朧げに自覚した十代の後半。25を過ぎたら自分が男しか愛せない人種だったと知り愕然とした。そして30を過ぎた今。 「誰と付き合おうがお前は俺の親友だ」 そんな綺麗ごとを言って隣にいる幼馴染みをずっと愛していた自分を今更知った。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 掌で眼を覆われ、首筋に当てられた舌の熱さにゾッとして肌が泡立つ。被さってくる黒い影の重みに乾いた笑いが漏れた。引き摺り込んだのはお前。もっと深くへと招いたのはたぶん俺だ。泥の闇の中、そこでしか息の出来ない二匹の魚が腐りながら今日も一つになって堕ちていく。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel すき焼き、杉、スキップ、好き、隙間、空きっ腹、「なあ、もっかい言って」なにが？「四番目の」スキップ？「違う。その次」なんだっけ。「しらばっくれんな」全然？「じゃあ、次、あいで始まる言葉な」いいよ。あいなめ、アイスクリーム、「待て、俺にも言わせろ」……いい。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 「馬鹿野郎！何で言わないんだよ」黙っていたことを叱られて、あいつが部屋から出ていってしまった。「この時間じゃこんなもんしか買えなかった」怒った顔のまま渡された、コンビニのイチゴのショートケーキ。「来年はちゃんと祝おうな」俺もお前の誕生日を聞いていい？

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 幼い頃の事故で僕は右の光を失った。無理に僕を連れ出した君は、あの日から僕の右眼で家来になった。あれから五年、君は僕の右眼でありながら、僕とは違う華を見つめる。左眼を失えば、君の顔が見られなくなる。それなら今度は足を失おうか。君がよそ見をしている隙に。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 考え事してただけなんだよ。いつも行くコンビニでポイントカードありますかって聞かれてさ、いつも来てんだから顔パスでツケといてよって言うつもりが「俺じゃダメですか？」って、なんだこれ告白？って可笑しくなったんだけど「…あなたがいいです」とかありえねー、つか万歳。