ツイノベ2012上半期

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 「いいか、パンツってのはパン生地に練り込むものでも、被って楽しむものでもない。そういうのは素人だ。まずはだな、貰ってくるだろ。洗い立てが望ましい。それに軽く霧吹きする。それを懐中電灯なんかに被せて温めるんだ。そこから立ち上がる仄かな湯気を楽しむ」「変態」

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 今ちょっと顔見られたくない状況なんだけどって、布団を被っている上から声がした。「結局こういうオチなのかよ」プライドは捨てた。けど今はマジで顔が出せないんだ。布団を被ったまま手だけを出してみる。しっかりと握り返されて、俺はますます布団から顔を出せなくなった。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 卒業式の日に熱出すなんてなんてタイミングが悪い。俺って奴はいつでもそう。些細な口論から決定的に拗れた関係は、結局拗れたまま終わりを迎える。せめて最後くらい意地とかそういうのを捨てようと決心したのにこれだ。あーあ、って声を出して布団を被ったらノックの音がした。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 卒業したからってすぐに18禁が買えるわけじゃなし、大人になったわけでもない。お前なんか三月が終わるまで、まだまだ俺の生徒なんだよ。そう言ってやったら、奴は不敵に笑いやがった。いいよ。今月までは生徒でいてあげる。けどその先は、俺のものになってよ、先生。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 校庭にできた即席の花道。送る笑顔に送られる涙。約束がなくても会えた日々が終わる。泣くなよ。また会えるだろ。笑って肩を叩かれる。だって、そんなの保証できない。泣くなって。手を引かれ、連れていかれる最後の教室。絶対に。そう言って身体に刻まれた、二人だけの約束。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 目で追うだけだった一年目。名前を覚えてもらった二年目。何かが変わる予感がし、結局何も起きなかった三年目。期待だけして、自分が大事過ぎて一歩も動こうとしなかった。あの日、あの時、あの瞬間。様々な光景と共に湧き上がる想いと後悔で、「仰げば尊し」が歌えない。

野原滋 @sigerunohara

＃twblnovel 今日の日を指折り数えて待っていた。散々人を振り回し、弱味につけ込み我が物顔で俺を弄んだあいつにさよならって言ってやるつもりだったのに。当の本人が来やがらねえ。このまま終わるつもりかよ。顔も見せずに消えるつもりかよ。冗談じゃないと走りながら、俺の顔は濡れていた

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 「おめーだろ！」「俺じゃねーよ、料理すんのとかお前の方が多いし」「けどお前、いっつも下じゃん」「ちげーよ、乗っかるときもあるじゃん！」「上下っつうのはそういうことじゃねえだろ」「…それより早くあれ、水に入れないと」シンクに突っ込まれた花束が二つ。愛妻の日。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 「スゲー雪！遭難するかと思った」大袈裟に騒いでみせる俺に、いつものように「ご苦労さん」とつれない返事だ。ほんの仕返しのつもりで冷えた体で抱きしめてやった。「冷たっ！」声を出したのは俺。俺の帰りを心配して、ずっとベランダにいたらしい体は、俺よりも冷えていた。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 酒に酔うと必ず漏らす不用意な言葉。男にしとくの勿体無いよな。一回ぐらいならお前を抱けそう。それを聞く度に俺の心はズタズタになる。俺も聞きたい。じゃあお前は俺に抱かれる事を考えた事はあるのかと。飲み込んだ言葉は吐かれる事はない。だから俺達は一生友達のままだ。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 「なんで勝手に班割りとか決まってるわけ？」「それはお前が学校休んだからだろ」「つかなんで別の奴と組んでんの？お前それでいいの？なに笑ってんのっ？」「ヤキモチ？」「…っ、ちげーよ！」「ふうんそうかヤキモチか。ま、大丈夫だろそこは」「うるさい、バーカバーカ！」

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 好きだと耳元で聴こえた声が泣いているようだった。大分酔っていると言い訳をしながら触れる指は僅かに震えていた。不確かな記憶の断片は夢だったのかそれとも願望なのか。だけど最後に見たあの横顔だけはどうしても忘れられない。携帯を握り締め、今日も俺はあいつを探す。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 翌朝の後悔に満ちた顔より、俺の腕の中で笑っていたお前を思い出そう。言い訳の台詞より、呂律の回らない「俺も好き」の言葉を思い出そう。努力すれば記憶はすり替えられる。だからもう会わないと決めた。後悔も痛みも全て忘れ、あの日のあのひとときだけを大切にすればいい。

野原滋 @sigerunohara

#twblnovel 僅かな痛みと共に目覚め、ベッド上の惨状に蒼くなる。記憶がない。飲み過ぎてどうかしていた、忘れてくれと言うと、分かっているよとあいつは笑った。失敗は一夜の過ちの方ではなく翌朝の俺の態度だったのだと、あれ以来連絡の取れないあいつの、去り際の横顔を思い出す。