稲川淳二 つぶやき怪談 #kaidan28

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稲川淳二 @Junji_Inagawa

会社としては、機械の故障が人身事故に繋がったわけですから、中川さんを巻き込んだ古い機械は、工場のスミに片付けられて、新しい機械が入った。それから、しばらくしてこの工場では終業時間以降の居残り仕事を禁止した。  #kaidan28

2012-03-29 22:10:08
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そして、亡くなった中川さんに代わって、牧田君という新人が入ってきた。  #kaidan28

2012-03-29 22:11:21
稲川淳二 @Junji_Inagawa

彼は中川さんのロッカーを使う事になったんですが、先輩達は誰ひとりそのロッカーが、亡くなった中川さんが使っていたものだ、という事や、中川さんが工場で事故死したという事など、一切、話さなかったので、牧田君は、中川さんという人がいた事すら知らなかった。  #kaidan28

2012-03-29 22:12:07
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そうして、日が過ぎて、牧田君も、先輩達と打ち解けてくると、ある日ふっと、誰に言うともなく、こんな話をした。 #kaidan28

2012-03-29 22:12:34
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おかしいんですよね。誰かが、自分のロッカー、使ってるみたいなんですよ。ちゃんと片付けて帰ってるのに、翌朝見ると、黒い機会油の手形が付いてたり、物が動かされてんですよ。 #kaidan28

2012-03-29 22:13:02
稲川淳二 @Junji_Inagawa

どうも皆が帰った後に誰かがきて、自分のロッカーで着替えて、工場で仕事してるみたいなんですよ」 #kaidan28

2012-03-29 22:13:17
稲川淳二 @Junji_Inagawa

これには、なにげなく聞いていた、4人の先輩達もゾーッとした。(・・もしや・・)と、誰もが思ったんですが、誰も言う者はいなかった。第一、そうだと言う確証が無い。 #kaidan28

2012-03-29 22:13:50
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そんなある日、終業時刻になって工場の全ての機械が停止すると、翌日は休日なんで、皆で一杯やろうという事になって、牧田君も先輩達に付き合って居酒屋へ行った。 #kaidan28

2012-03-29 22:14:16
稲川淳二 @Junji_Inagawa

飲んで、他愛もない雑談で盛り上がっているうちに、いい時間になったんで、じゃあ、お開きにするかという段になって、牧田君が携帯電話が無いのに気付いた。 #kaidan28

2012-03-29 22:14:41
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「いけない。作業服のポケットに入れたまま、ロッカーに置いてきちゃった。弱ったなァ、明日は休みだし・・・」と困っていると、一番古株の先輩が、 #kaidan28

2012-03-29 22:15:03
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「俺、工場の鍵を預かってるから貸そうか?明後日返してくれればいいから」と、鍵を貸してくれた。 #kaidan28

2012-03-29 22:15:18
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「すいませんお借りします。明後日必ずお返ししますから」と礼を言うと、ひとりで工場に戻って行った。 #kaidan28

2012-03-29 22:15:39
稲川淳二 @Junji_Inagawa

預かった鍵で入ると、更衣室の明かりをつけて、自分のロッカーのところへ行ってロッカーのキーを差し込もうとして、ドキッとした。 (キーがかかってない・・・) #kaidan28

2012-03-29 22:16:19
稲川淳二 @Junji_Inagawa

自分は確かにかけた記憶がある。(おかしい、誰かが開けたんだ・・・)と思いながら、ロッカーの扉を開くと、案の定、中の物が動かされている。 #kaidan28

2012-03-29 22:16:49
稲川淳二 @Junji_Inagawa

(奴が来てるんだな!)と、思ったと同時に恐くなってきた。 #kaidan28

2012-03-29 22:17:24
稲川淳二 @Junji_Inagawa

相手の正体がわからない。息を殺して、そーっと周囲の気配をうかがっていると、不意に、  グゥゥゥーン・・・・と静寂を破って、モーターが唸りを上げ始めたんで(ドキッ!)とした。 #kaidan28

2012-03-29 22:18:06
稲川淳二 @Junji_Inagawa

連動して、機械も動き始めた。音はまぎれも無く、工場から聞こえてくる。(一体、誰が何の為に、こんな夜遅くに、機械を動かしているんだろう・・・?) #kaidan28

2012-03-29 22:19:20
稲川淳二 @Junji_Inagawa

息を殺して、そーっと工場へ行ってみると、(ン?明かりがついてない。)真っ暗な闇の中で、モーターの回る音と、カタカタと機械の動く音だけがしている。音の出どころを探ると、それが工場のスミから聞こえている事がわかった。 #kaidan28

2012-03-29 22:19:51
稲川淳二 @Junji_Inagawa

心臓が、ドックンドックンと鳴っている。すぐにもこの場から逃げ出したいんですが、この状況を放っておく訳にもいかない。 #kaidan28

2012-03-29 22:20:14
稲川淳二 @Junji_Inagawa

覚悟をきめると、闇に向かって、「どなたかいるんですか?誰ですか?」と、声をかけたんですが、 返事が無い。 #kaidan28

2012-03-29 22:20:42
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そこで壁のスイッチを、カチッ、カチッ、カチッと入れると一瞬で、工場中の照明がついて、全てを照らし出した。ところが誰の姿も無い。 #kaidan28

2012-03-29 22:21:13
稲川淳二 @Junji_Inagawa

ただモーターが回って機械が動いているんで、恐る恐るそっちに行ってみた。それは、工場のスミに片付けられた、使われていない機械だった。電気は通じていないのに、どうしたわけか、モーターが音を立てて回っている。 #kaidan28

2012-03-29 22:21:51
稲川淳二 @Junji_Inagawa

近づくのが気味が悪いんで、腕を伸ばしてスイッチを切ると、機械が停止した。と途端に静けさに包まれた。   すると、 #kaidan28

2012-03-29 22:22:19
稲川淳二 @Junji_Inagawa

ピッチャン・・ ピッチャン・・ ピッチャン #kaidan28

2012-03-29 22:22:33
稲川淳二 @Junji_Inagawa

と、何かが滴り落ちる音がしているんで、ふっと機械に視線を向けてみたのと同時に、「ううっ!」と低い悲鳴を上げた。 #kaidan28

2012-03-29 22:23:18