使用済み核燃料プール、ジルコニウム火災について

自分まとめ。使用済み核燃料プールの水が一挙に抜けたり、プールが倒壊したりして燃料棒が空気中に露出する事態になったとき、一番に懸念されるのはジルコニウム被覆管の「火災」(zirconium cladding fire) のようです。 アメリカでは911のテロ攻撃を契機に、使用済み燃料プールの脆弱性が議論の対象となったようで、このジルコニウム火災を扱った論文や委員会報告が2000年代以降いくつか出ています。 こうした論文と報告について、ぽつぽつと拾い読み中。
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畠山元彦 @MuiMuiZ

サンディアでのジルコニウム火災実験:ペレットの代わりに熱特性を似 せたセラミックを詰め、燃料棒を電気的に熱することで、実物大のBWR 燃料集合体の加熱・発火実験が行われている。PWR実験を解説した資料 の中にBWRの実験結果が一部出てくる。http://t.co/JDGboDHn

2012-04-09 22:51:14
畠山元彦 @MuiMuiZ

おそらく発火実験後の集合体から断熱材を除いたところ。ジルコニウム合金の 被覆管が破れて「(燃料)集合体は完全に破壊される」。実際の使用済み燃 料棒ならセシウム137を中心とした放射性物質がエアロゾルとして環境 に放出されるhttp://t.co/Uu21vNYS

2012-04-09 22:54:26
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畠山元彦 @MuiMuiZ

停止後100日目の集合体が密集するとき、空気に晒された燃料集合体は7時間あまりで最大温度900℃程となり発火する。上部 の酸素はほぼ0となり、「燃焼前線」が酸素を求め燃料棒を下向きに伝って燃焼を続ける。底部に達すると反転して上に向かうhttp://t.co/6IhPuq2n

2012-04-09 22:56:58
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畠山元彦 @MuiMuiZ

周辺が冷たい集合体で中心が15日目のものの場合の実験では約5時間で発火、すぐに周辺にも延焼する。また発火の前、680-880℃となると熱により被覆管が風船のように膨張する。これは空気の対流を阻害して発火を1時間以上早める。 http://t.co/S0AT6Wmi

2012-04-09 22:59:31
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NRC 報告書 (2001)

(下で 2000 年としたのは参照したドラフトの日付でした。 正式には 2001 年)

畠山元彦 @MuiMuiZ

メモ:NRC『廃棄原発の使用済み燃料プール事故リスクの技術的研究』(2000) http://t.co/R4EsVPgE ― すうじ並べて「ジルコニウム火災の結果は深刻になりうるものの、ジルコニウム火災はほとんど起こりえないのでリスクは低い」云々

2012-04-09 07:02:49

「リスクは低い」とは、いわゆる確率的安全評価 (PSA) にもとづいて大きな値にもっと小さな数字を掛け算して全体は小さいとする議論です。 実際に起こったときにはジルコニウム火災の影響が多大なものとなることは認識されていたようです。 この報告では相対的にラフなモデルを使った計算で、炉が停止してからの時間と、崩壊熱でジルコニウム火災が起こる温度にいたる時間との関係が見積もられています。

畠山元彦 @MuiMuiZ

NRCの2000年の資料では、900℃まで上昇するのに、1年を経た燃料で7時間、2年で13時間、3年で23時間ほど。時間的猶予は増えていくが(様々な制約で変化するものの5年後でも火災となるよう。いろいろ書いてそう。もう少し読まないと。 http://t.co/R4EsVPgE

2012-04-09 23:02:00
畠山元彦 @MuiMuiZ

冷却水が失われた燃料プールにおいて、燃料棒がジルコニウム火災の発火温度(~900°C)に至るまでの時間的猶予のモデル計算結果 (横軸停止からの時間、赤はBWR用プール、青はPWR用) NRC NUREG-1738 (2001) http://t.co/zrz4czp3

2012-05-19 22:32:14
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他の資料

畠山元彦 @MuiMuiZ

メモ:M. Weber “Ensuring Spent Fuel Pool Safety” ANS Meeting 2011-06-28 http://t.co/c4PAi49V ― 福島を受けた簡単なスライド。pp.8-9 にBWRの燃料集合体の火災実験が写真だけ。出典なし。

2012-04-02 22:41:51
畠山元彦 @MuiMuiZ

メモ:“Air Oxidation Kinetics for Zr-based Alloys” NRC NUREG/CR-6846 (2004) http://t.co/HzmMSQSr ― ジルカロイ被覆の空気での酸化の実験。絵がいっぱい。100ページ。

2012-04-03 07:45:22
畠山元彦 @MuiMuiZ

ジルコニウム火災以下の温度で生じ、冷却を阻害すると思われる燃料被覆管の風船(表面を酸化させたジルコニウム合金、600°C, 27気圧, 22時間後[左]と40時間後[右]) NRC NUREG/CR-6846 (2004) http://t.co/tyrHXYuJ

2012-05-19 13:06:00
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なお、『福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書』(いわゆる民間事故調報告)でも、事故当初の経緯を説明した1章で特に出典を挙げず次のように書かれています (p.41)。

  • 「燃料被覆管に使用されているジルコニウム合金は、900°C 以上まで加熱されると、急激な酸化反応を生じる。燃料被覆管を狭い範囲で大量に保管する場合、酸化反応による熱が他の被覆管に連鎖的に伝播し、被覆管が次々と破損する、いわゆるジルコニウム火災と呼ばれる現象を警戒する必要がある。… また、ジルコニウム火災が発生すると、そのエネルギーによって燃料は破損し、放射性物質が使用済み燃料から放出される。沸騰水型軽水炉の使用済み燃料プールは原子炉格納容器の外側に位置するので、放射性物質の拡散をさえぎるものは少ない。つまり、使用済み燃料を長期間放置し、ジルコニウム火災が発生すれば、きわめて大量の放射性物質が火災のエネルギーを受けて大気中へと拡散し、広範囲にわたって汚染を生じる可能性もあった」

プールのセシウムの量

もし4号機プールが火災を起こすと、放出され大きな影響をあたえることになる核種はやはりセシウム 137 (Cs-137) となります。 震災直後 2011 年 3 月に福島から放出された Cs-137 の総量については様々な見積りがありますが、以下の Stohl 他 (2012) のものは、海外の CTBTO の高精度の観測地点のデータから逆問題を解いて逆算しており、陸側だけでなく太平洋側に流れていったものも評価され、国内の見積りより大きなものとなっています。 それでも、同じ論文にある核分裂生成物の量を計算するシミュレータ (ORIGEN) による各プール内の Cs-137 の量の見積りと比べると、火災がごく一部にとどまったとしても影響は震災直後のレベルを容易に上回るものとなりそうです。

畠山元彦 @MuiMuiZ

(何度も引用した論文だけど)Stohl et al. (2012) によれば、事故でのCs-137総放出量は推定36.6PBq。4号機使用済み核燃料プールのCs-137は1110PBqhttp://t.co/7zVkXVLE

2012-04-10 07:52:42

Stohl 他 (2012) の論文は以下。 2011年10月にディスカッション・ペーパーとして公開された段階で Nature 誌のニュース欄で取り上げられたものです。

2012/11/22 福島原発4号機の核燃料問題を考える 院内集会

畠山元彦 @MuiMuiZ

田中三彦さん出てた。4号機プールのジルコニウム火災の懸念や燃料移送の問題について詳しく(19分~、53分~)(11/22 福島原発4号機の核燃料問題を考える 院内集会)。 http://t.co/DdGTzsnU @iwakamiyasumi さんから

2012-11-23 11:24:52
畠山元彦 @MuiMuiZ

東電回答:4号機プールLOCA、MAAP&MELCORシミュレーション、急速喪失で最高724K、徐々に水位が喪失すれば数十日でジルコニウム火災に進展。流体解析では最高950度(℃?K?)。空冷で大丈夫&時間的に余裕と。(1:06ごろ~) http://t.co/DdGTzsnU

2012-11-23 11:28:55
畠山元彦 @MuiMuiZ

言葉が通じてない…「火災=酸化反応」でしょうに。MELCOR/MAAPの急速な温度上昇という結果は「火災が生じる可能性があるということを示唆している」のではなくてジルコニウム火災そのものでんがな。(1:29) http://t.co/DdGTzsnU

2012-11-23 11:38:02
畠山元彦 @MuiMuiZ

より短い期間での乾式キャスク貯蔵について、東電「認可を受けた乾式キャスクは13年以上の燃料を入れることになっている…」─ 認可のせいに?やる気があれば技術的にできることなのに。(1:13) http://t.co/DdGTzsnU

2012-11-23 11:47:06
畠山元彦 @MuiMuiZ

1:46~質疑で田中三彦氏と東電との技術的議論、聴きごたえあり。 http://t.co/DdGTzsnU

2012-11-23 12:07:34
畠山元彦 @MuiMuiZ

田中三彦氏:DOEのプールの放熱図を示し、どこにキャスクを入れるつもりか?取り出す順序は?クレーンの重さ・耐震性は?耐震性の説明にクレーンは入っていないが?東電:キャスクは北西に入れる。詳細は検討していない。取り出しやすいところから。 http://t.co/DdGTzsnU

2012-11-23 12:08:18
畠山元彦 @MuiMuiZ

田中氏:取り出しに何が時間をとっているのか?技術的な困難があるのではないか?東電:早く作っているつもり。クレーンの柱、厳しいところで大型構造物を作るのに時間がかかる。一番厳しい状態で震度6強で評価。11/14に国に提出している。 http://t.co/DdGTzsnU

2012-11-23 12:09:32