f_zebraさんの「米国、NRCスタッフが使用済み燃料の乾式貯蔵を急ぐ必要なしと説明」の解説

・「原子力発電所で使用した使用済燃料を貯蔵している使用済燃料プール(PWRではピット)、SFP(Spent Fuel Pool/Pit)の安全性については未だに多くの人が誤解したまま、しかしながら以前ほどの関心も失われ、誤解が訂正されないままフェードアウトしようとしています」
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Flying Zebra @f_zebra

少し古い話ですが、電事連が紹介している「米国、NRCスタッフが使用済み燃料の乾式貯蔵を急ぐ必要なしと説明」というトピックについて少し補足説明しておきましょう。 http://t.co/9Wt0Ytlp8R

2014-04-10 21:56:18
Flying Zebra @f_zebra

原子力発電所で使用した使用済燃料を貯蔵している使用済燃料プール(PWRではピット)、SFP(Spent Fuel Pool/Pit)の安全性については未だに多くの人が誤解したまま、しかしながら以前ほどの関心も失われ、誤解が訂正されないままフェードアウトしようとしています。

2014-04-10 21:58:41
Flying Zebra @f_zebra

そもそもSFPの何が「危ない」のかをどれだけの人が正しく理解しているのか甚だ疑問ですが、よく目にするフレーズとしては、水が抜けたら原子炉の炉心にある量の数倍の燃料が放出されてチェルノブイリ以上の被害で東日本(あるいは日本全体)が壊滅とか何とか、そんなところでしょうか。

2014-04-10 22:00:30
Flying Zebra @f_zebra

まだ福島第一4号機のSFPを本気で心配する人が多かった2年ほど前のこちらのまとめ http://t.co/ah9X8saRFM でも説明し、それ以外でも折に触れて言及してはいますが、「よく分からないけど危なそう」という感覚のまま忘れかけている人も多いでしょうから、少しおさらい。

2014-04-10 22:04:13
まとめ 4号機の危険性指摘への考察 20320 pv 375 20 users 24
Flying Zebra @f_zebra

使用済燃料は崩壊熱の除熱と放射線の遮蔽を目的として、炉心から取り出した後少なくとも数年間は水中で貯蔵されています。SFPは東日本に多いBWRでは原子炉建屋の高い位置、西日本に多いPWRでは原子炉建屋に隣接する別の建屋の低い位置にあります。

2014-04-10 22:05:39
Flying Zebra @f_zebra

SFPはもちろん放射線管理区域ですが、通常はプールのすぐ脇でも線量は高くはありません。水で放射線(ガンマ線)が遮蔽されているためで、仮に水が無くなれば人が近付くことはできなくなります。とは言え、ガンマ線はコンクリート等でも遮蔽されるため、建屋の外への影響は限定的です。

2014-04-10 22:08:05
Flying Zebra @f_zebra

複数のユニット(号機)がある原子力プラントでどれか一つのユニットのSFPの水が抜けた場合、遮蔽の喪失によってアクセスできなくなるのは当該ユニットの原子炉建屋または補助建屋に限られ、中央制御室や隣接するユニットでの作業が全くできなくなるわけではありません。

2014-04-10 22:09:18
Flying Zebra @f_zebra

では何が問題かと言うと、冷却ができなくなることで使用済燃料そのものの健全性が保てなくなる可能性です。具体的には崩壊熱が除去できないことで温度が上昇し、被覆管、更には燃料ペレットが溶融する、つまりメルトダウンに至る可能性が、原理としては存在します。

2014-04-10 22:10:56
Flying Zebra @f_zebra

被覆管に使われているジルコニウム合金は900℃以上の高温では水や水蒸気と反応して水素を生成します。さらにこの酸化反応は発熱反応なので、始まってしまえばジルコニウムと水がある間は勝手に進んでしまいます。これがジルコニウム火災です。

2014-04-10 22:12:29
Flying Zebra @f_zebra

停止直後の原子炉炉心と違って、使用済燃料には半減期の短い、つまり放射能の強い核種はほとんど残っていません。それでもセシウムのように半減期数十年のそこそこ放射能の強い核種は十分に残っているため、これらが大量に放出されれば周囲の環境に大きな影響があります。

2014-04-10 22:14:00
Flying Zebra @f_zebra

SFPには何年か分の使用済燃料が貯蔵されているので、放射性物質のインベントリ(総量)としては炉心の数倍存在します。これが「全て」放出されれば、当然ながら環境への影響も炉心からの放出の数倍になるでしょう。いわゆる「最悪シナリオ」の多くはこうした前提で考えているようです。

2014-04-10 22:15:53
Flying Zebra @f_zebra

言うまでもなく、炉心にしろSFPにしろ放射性物質が全て放出される、つまり現地には何も残らず空っぽになるなんてことは現実にはあり得ません。放射性物質がいくらあっても、遠くまで輸送するメカニズムがなければ「拡散」はされないからです。

2014-04-10 22:17:21
Flying Zebra @f_zebra

炉心での事故の場合、大きな熱エネルギーがあるためこれが輸送の駆動力となります。軽水炉では加圧された水蒸気が豊富にあるので、高温高圧の蒸気と水滴(湯気)に乗って炉内から放出され、上空に上昇して風で運ばれるというのが典型的な輸送モードです。

2014-04-10 22:18:49
Flying Zebra @f_zebra

一方、SFPの場合は冷却水が存在している間は被覆管表面が酸化反応を起こす温度にはならないため、ジルコニウム火災が起きる時には水はほとんどなくなっています。また、大気開放で加圧されていないため、高圧蒸気による輸送は起こり得ません。

2014-04-10 22:20:16
Flying Zebra @f_zebra

チェルノブイリ4号機の事故では、水蒸気爆発で建屋が開放された後、減速材の黒鉛が長時間火災を起こし、その燃焼ガスの上昇気流で放射性物質が成層圏まで輸送されました。ジルコニウム火災でも同様のメカニズムが考えられますが、熱量が小さいため輸送量は限定的となります。

2014-04-10 22:22:58
Flying Zebra @f_zebra

ただし、米国NRCがSFPのジルコニウム火災によるリスクが小さいと判断しているのは発生した場合の影響(ハザード)が小さいというよりも、ジルコニウム火災まで至る発生頻度が極めて小さいことが主な理由です。ここでの「リスク」とは、ハザードの大きさと発生頻度の積です。

2014-04-10 22:25:26
Flying Zebra @f_zebra

福島第一の1~3号機では、炉内に冷却水を注入するのに圧力が高すぎて消防設備などの低圧注水系では注水できず、減圧のためのベントで手こずるなど注水に多大な苦労を強いられました。SFPは元々加圧されていないため、注水は遙かに容易です。

2014-04-10 22:27:59
Flying Zebra @f_zebra

停止直後の炉心に比べると熱量も小さく、冷却水が沸騰していても水位さえ保っていれば冷却も遮蔽も十分で、水源さえ確保できれば使用済燃料の健全性を保つのは容易です。水源が枯渇してもジルコニウムの反応が始まるまでには数日の猶予があり、外部からの支援も時間的余裕があります。

2014-04-10 22:30:13
Flying Zebra @f_zebra

原子力に限った話ではありませんが、小さなトラブルが起きた際、何もせず放置していれば大事故に繋がる場合もあります。化学工場でのボヤなどを考えると分かりやすいでしょうか。リスク評価では、トラブルが起きた場合の緩和措置の容易さというのが重要な要素となります。

2014-04-10 22:33:11
Flying Zebra @f_zebra

なお、仮にSFPで冷却水が完全に失われたとしても、必ずジルコニウム火災に至るわけではありません。崩壊熱が十分に下がっていれば空気の対流による冷却だけでも被覆管表面の温度が抑えられ、酸化反応が起きる温度に達しない(当然溶融も起きない)のです。

2014-04-10 22:35:33
Flying Zebra @f_zebra

換気条件や配置にもよりますが、未臨界から1年以上経た使用済燃料ではジルコニウム火災の発生確率は非常に小さくなり、5年経てばまず起きません。根拠となるレポート等についてはこちらのまとめを参照下さい。 http://t.co/ah9X8saRFM

2014-04-10 22:38:42
Flying Zebra @f_zebra

SFPについては、ジルコニウム火災という過酷事故のメカニズムがあり、リスクはあるものの緩和措置の制限が少ないため実際に過酷事故に至る可能性は極めて小さく、リスクとしては小さいというのが、対テロリズムなど様々な要素を考慮した上でのNRCの結論です。

2014-04-10 22:41:05
Flying Zebra @f_zebra

福島事故では4号機で水素爆発が起きた当初は水素がどこから来たのか分からず、SFPから発生した可能性が検討されて俄に注目を集めました。程なく水素の流入経路が明らかになって疑いは晴れましたが、当時の強烈なインパクトを未だに引きずっている人も少なくありません。

2014-04-10 22:43:10
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コメント

酋長仮免厨 @kazooooya 2014年4月10日
【更新】@kikumaco さんのツイートをオチに使わせて頂きましたm(_ _)m
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へぼ担当 @hebotanto 2014年6月20日
難しい所ですね。インベントリや遮蔽、物理的防護の問題も含めると、リスク要因排除がケースバイケースに。
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へぼ担当 @hebotanto 2014年6月20日
基本的には下手に動かしても、却ってリスクが大きくなって、費用他からも正当化出来ない。そもそもリスク要因で大きく利きそうなものは減衰未完で入れられない。移動中事故リスク要因も無視出来ないなど、工学おなじみ競合要因多すぎ。
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へぼ担当 @hebotanto 2014年6月20日
もっとも某所事例は示唆に富む。設置不可との判定でも、プールに入れておくのは放置。移す場所も設備もあるが、公的理由で待ち。 リスク要因、優先順位を考えて悩む。
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へぼ担当 @hebotanto 2014年6月20日
上記はこじれた例だが、現実問題は競合要因ばかり。リスク要因を優先順位付けて効果的に除去し続けるのは難しい。その典型と考えます。
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