山本七平botまとめ/『「大義」と「武器」が人を狂わす』

山本七平著『一つの教訓・ユダヤの興亡』/「大義」と「武器」が人を狂わす/196頁以降より抜粋引用
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山本七平bot @yamamoto7hei

26】殺害を命令したのではないのだ。PLOはレバノンにおける七年間、悪虐の限りを尽したのであって、この恨みは永遠に消えないといってよい。特にファランヘ党というキリスト教徒はその肉親の多くをPLOによって残酷に殺された体験があるので、この報復を常に考えていたのだ。

2012-04-05 16:55:57
山本七平bot @yamamoto7hei

27】ところがPLOは兵士だけが逃げ出し、その家族をレバノンに捨ててきたのだから、その家族に恨みが集中することは分っていた筈だとこの調査委員会報告は言っている訳である。しかも殺されたサブラ難民キャンプのパレスチナ人は、多くはPLO兵士の家族であった。

2012-04-05 17:26:12
山本七平bot @yamamoto7hei

28】余計にひどい目に遭う可能性があったのである。それを前もって防止すべきだという点で『責任を問われている』のであって、9月に日本の新聞が書いたような『けしかけ』たり『虐殺を直接指示した』のではないのである。このように書いた『大新聞』は、天下にその非をわびるべきであろう。

2012-04-05 17:56:27
山本七平bot @yamamoto7hei

29】『大誤報』ならぬ『大曲報』をしたのである。なお『サブラの虐殺』以後もレバノン国内ではパレスチナ人が既に数千人殺されているが、これはレバノン人のPLOへの恨みが爆発しているからである。

2012-04-05 18:26:07
山本七平bot @yamamoto7hei

30】それにしても、自ら手を下したり、命令したわけでもないのに、レバノン人がPLOとパレスチナ人への長年の恨みを報復しようとすることを、前もって分っていたのにとめなかった事に責任があると主張するイスラエル政府司法委員会の態度は極めて立派だと言ってよかろう》

2012-04-05 18:55:57
山本七平bot @yamamoto7hei

31】以上が高木桂蔵氏の論文だが、「立派」のほかにもう一つつけ加えさせていただけば、彼らは長い迫害の歴史から、これが最も「安全」だということも知っていると見てよかろう。従って国際赤十字の調査も受け入れている。

2012-04-05 19:26:05
山本七平bot @yamamoto7hei

32】私はこの事を思うと、いわゆる「 #南京大虐殺 」の事を思う。当時、日本の新聞はこの事を一行も書かなかった。この点でまずイスラエルと違うが、同時に政府も国会もこの事で特別調査委員会を作ろうともせず、国際赤十字の調査に一任しようともしなかった。いわば全てを隠蔽しようとした

2012-04-05 19:55:58
山本七平bot @yamamoto7hei

33】だが、この事は逆に、事態が一変すれば、その事件の内容は無限に膨れあがるという事なのである。小さな事件、または不可抗力であった事件が無限に膨れあがってそれが自らへの「大迫害」を招くという事は、彼らはその二千年の歴史で何度も経験している

2012-04-05 20:26:13
山本七平bot @yamamoto7hei

34】これが執拗に事実を調査し、正確に記録して後世に残すという伝統を生じた。私は、隠すよりその方がはるかに賢明であると思う。我々にはこの体験がないが故、この点では彼らに学ぶべきであろう。

2012-04-05 20:55:59
山本七平bot @yamamoto7hei

35】というのは、当時はこれを隠蔽した新聞が、戦後は「 #百人斬り 競争」などというあり得ない事件を事実として報道し、それを報道する事が「大義」であるかの如き態度をするからである。そして、それをしている時は必ず、ベトナムかどこかで何かを隠蔽しているのである。

2012-04-05 21:26:05
山本七平bot @yamamoto7hei

36】そうなって当然であろう。これは、いわばコインの裏表にすぎないのだから。これについてぱ、ベイルート事件を詳細に調べた「カハン委員会報告」の次の言葉は印象的である。「選択的良心の持主のため、この調査は意図されたのでなく……事実に到達するため」意図されたと。

2012-04-05 21:56:01
山本七平bot @yamamoto7hei

37】「選択的良心の持主」とは実に皮肉な言葉だが、これがマスコミ的良心だといっても過言ではあるまい

2012-04-05 22:26:10
山本七平bot @yamamoto7hei

38】そういう”良心”の持主は相手とせず、「正確に記録して後世に残す」を、文字通り可能な限り、ティトスの『戦時記録』も自らの体験も、投降者の証言も含め自国民の恥も自らの恥も、渾身の力を振るって命ある限り書きつづけたのがヨセフスである。

2012-04-05 22:56:08