【深夜電波】竜の定め

電波ユンユン!
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嶺上律菜 @ritsuna_mine

もぞもぞとちょっと電波を垂れ流す

2012-04-07 03:14:40
嶺上律菜 @ritsuna_mine

彼は言った。『我に定めあり』強い意思を込めた双眸と、大地のように揺ぎ無い体躯を持った彼はそう言った。長い長い戦争で人が疲れ果てた頃に現れた彼は、戦場を飛び回り、全てを焼き払っていった。彼は、竜だった。

2012-04-07 03:15:00
嶺上律菜 @ritsuna_mine

『竜に定めあり』その声は国中に響き渡った。たった一頭の竜が、何処からとも無く現れて、戦争をしていた奴らをやっつけた。でも、それでは終わらなかった。戦争でめちゃくちゃになった二つの国は、とても乱れて、何処を見ても悲しい事が起きていた。

2012-04-07 03:15:08
嶺上律菜 @ritsuna_mine

『竜は悲しみを糧とする』声と共に、竜は何処にでも現れた。そして、そこに居た人を殺していった。加害者も、被害者も、傍観者も、全部やっつけていった。残った人達は、被害者をも殺す竜は悪者だといい始めた。

2012-04-07 03:15:15
嶺上律菜 @ritsuna_mine

『竜は悲しみを逃さない』やがて、竜と人の戦いが始まった。最初は小さな抵抗だったけれども、どんどん人の数は増えて、ついこの間まで戦争していた二つの国は、竜を倒す為に一致団結して戦った。

2012-04-07 03:15:21
嶺上律菜 @ritsuna_mine

『竜の力は暴虐の証』それでも一筋縄ではいかなかった。竜の力は強大で、吐く炎は千を焼き、振るう爪は鋼鉄を砕く。見せ付けるように開いた口からは、真っ赤な牙が覗いて、皆が怖がって腰が引ける程。それでも、集まった人達は挑み続けた。

2012-04-07 03:15:29
嶺上律菜 @ritsuna_mine

『竜の咆哮は動乱の銅鑼』一週間はそうしていただろうか。昼も夜も無く戦い続けて、人はもうほんの数人。でも、竜もボロボロだった。大空を舞う両翼は既に無く、槍を跳ね除ける鱗はもうボロボロ。人の青年が叫びながら、力を精一杯こめて剣を振るった。竜の、彼の首が飛んだ。

2012-04-07 03:15:37
嶺上律菜 @ritsuna_mine

『竜の悲鳴は平和の鐘となる』声無き声を私は聞いた。彼は確かにそう言った。ほんの少し残った人は、彼の首を持って国へ帰り、今度こそ戦争は終わりだと喜んだ。私も、それを見ていた。

2012-04-07 03:15:44
嶺上律菜 @ritsuna_mine

『竜の亡骸を持って悲しみを終えよ』彼は最初からそのつもりだったのだ。八つ当たりを受ける役目を背負って、後に引く恨みを自分だけで持って、皆の悲しみを終わらせたかったんだ。私は、そう思う。でも、こうも思う。私は、彼の悲しみも分かち合いたかった。

2012-04-07 03:15:51