ついったー小説【蜘蛛と蝶】

大昔に書いたSSをリメイクしてTLに放流したものまとめ。あまりにも某桃蜘蛛の歌詞とかぶるために封印していたものですが、ぱぱぱぱくりじゃねーぞ!
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龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

…あおいあおい空の下、あおいあおいお花の咲く小さな木の枝の隙間に、一匹の蜘蛛がすんでいました。その蜘蛛は、自分が大嫌いでした。蜘蛛はあおい空が好きだったので、黒と黄色の縞々の、自分の体は大嫌いでした。

2012-04-08 01:21:33
龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

蜘蛛は、枝と枝の間に、大きな大きな巣を作りました。蜘蛛は、その巣のむこうに空を見るのが大好きでした。まるで、大好きな空が、自分の巣にかかったみたいに見えるから。蜘蛛は、空が恋しくて、恋しくて、手に入れたくて仕方がなかったのです。

2012-04-08 01:23:59
龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

ある日のことです。蜘蛛の巣に、それはそれは綺麗な蝶がかかりました。その蝶は、まるであのいとおしい空のような、綺麗な空色の翅を持っていました。

2012-04-08 01:25:44
龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

蝶は怯えて言いました。「蜘蛛さん、私を食べないで、お願いです。私はもっと遠くの国を見たいんです」蜘蛛はとてもおなかがすいていたので、命乞いを聞かずに、その蝶を食べてしまいました。だけど、その青い翅を食べることは出来ませんでした。翅はずっと、巣のすみにかかったままになりました。

2012-04-08 01:28:40
龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

ある日、蜘蛛はとても退屈していました。蜘蛛はその翅をそっと巣からはずし、戯れに自分の背中に羽織ってみました。葉に乗った朝露に、そんな自分の姿を、そっと映してみると… 翅で、醜く大嫌いな、自分の体の縞模様は隠れ、まるで、空の一部分になったかのような、そんな自分の姿が見えたのでした。

2012-04-08 01:31:32
龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

蜘蛛はそんな自分の姿がとても気に入りました。そして、いまはもう自分の一部分となったあおい蝶に、とても感謝しました。

2012-04-08 01:33:26
龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

蜘蛛は自分を好きになれそうな気がして、その翅をずっと羽織ることにしました。

2012-04-08 01:35:58
龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

そして、またある日のこと。蜘蛛のもとへ、二匹の蝶がやってきました。 「こんにちは、あおい蝶さん」 あかい色の翅の蝶が、蜘蛛に挨拶をしました。 「こんにちは」 き色の翅の蝶も、挨拶をします。

2012-04-08 01:37:43
龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

「こ…こんにちは」 蜘蛛は挨拶を返しました。が、嫌われ者の蜘蛛にはずっと誰も話しかけてはくれなかったために、声を出すのもとても久しぶりで、うまく声が出せませんでした。 蝶たちは顔を見合わせてくすくすわらって、言いました。 「あなたの翅、とても綺麗ね。お友達になってくれる?」

2012-04-08 01:39:30
龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

蜘蛛はとてもうれしく思いました。嫌われ者の自分に、友達が出来るなんて、思ってもいなかったのです。黒と黄の縞模様の体を、あおいあおい翅でそっと隠し、蜘蛛は蝶たちに笑い返しました。

2012-04-08 01:40:45
龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

それから、蜘蛛はとても楽しい日々を過ごしました。まいにち、蝶たちは自分のもとに遊びに来てくれます。 「あおい蝶さん、一緒に遊びましょう」 「喜んで」 数日経つうちに、蜘蛛は蝶たちと、自然に笑ったり、話したりも出来るようになりました。

2012-04-08 01:43:13
龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

蜘蛛はとても幸せでした。 「むこうの花畑まで、一緒に飛びましょうよ」 そう、ふたりに誘われたときは、ちょっとあわてましたが、蜘蛛は曖昧にごまかしました。蜘蛛はとても幸せでした。

2012-04-08 01:44:03
龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

…だけど、蜘蛛は、花の蜜では生きていけません。蝶たちと幸せそうに笑い、一緒に花を囲んでいても、蜘蛛はずっとお腹を空かせていました。

2012-04-08 01:45:05
龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

蜘蛛のもとには、やがて、さらに蝶たちが集まってきていました。色とりどりの蝶たちに囲まれ、蜘蛛はとても幸せでした。だけど、お腹はどんどんすいてきて、苦しいほどでした。だけど蜘蛛は、蝶を食べることは出来ませんでした。こんなにもやさしい友たちを、どうして食べることが出来るでしょうか。

2012-04-08 01:46:54
龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

…ある日、蝶たちが、大好きなあおい翅の友のもとを訪れると、そこに友の姿はありませんでした。ただそこには、あおい翅と、黒と黄色の縞模様の蜘蛛の死骸が残されているのでした。

2012-04-08 01:50:57
龍のな@動物保護チャリティ作品集主催 @ry_nona

蝶たちは、あおい翅を囲み、蜘蛛に食べられて死んだ、友人の死を悼むのでした。誰も、蜘蛛の亡骸を弔ってはくれませんでした。それでも蜘蛛は、最後まで、友たちをいとおしく思っていました。偽者の、あおい空のような自分の姿も、いとおしく思っていました。 おわり

2012-04-08 01:51:38